どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

「ふるやのもり」と類似する外国の昔話

2021年12月22日 | 昔話(日本・外国)

 「ふるやのもり」は、日本の各地に同じような話があり、地域によってすこしずつ内容が異なっていますが、雨漏りを恐ろしい化け物と思ったオオカミと泥棒の話。
 これと類似する外国の昔話。


ふるやのもり(鳥取県の昔話)

 一番こわいものは、ふるやのもりというおじいさんの話を、ウマを食べようとウマ小屋にひそんでいたオオカミとウマ小屋のウマを盗もうと屋根裏にかくれていたどろぼうが聞いていて、どんな化け物だとビクビクしているところに、雨漏りが泥棒の首にポタリとおちます。

 それにびっくりした泥棒は足をふみはずして、オオカミの上に落ちてしまいます。オオカミはウマ小屋から飛び出し、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうと走り続けます。

 夜明けごろ、うまいぐあいに突き出ている木の枝を見つけたどろぼうは、その枝に飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいます。 オオカミは背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといきし、ふるやのもりを友だちの強いトラに退治してもらおうと、トラのところへ出かけていきおます。

 話を聞いてトラも恐ろしくなりますが、いつもいばっている手前オオカミの前でそんな事は言えず、退治してやるとトラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけます。
 そして、高い木のてっペんに、なにやらしがみついてるのを発見したオオカミがそれを見て、ガタガタとふるえだします。

 トラは、こわいのをガマンして、ほえながら木をゆさぶりると、泥棒が二匹の上に落ちてきます。どろぼうは地面に腰を打ちつけて大けがをし、オオカミは遠い山奥に逃げ、トラは海を渡って遠い国まで逃げて行って二度と帰ってこなかったというお話。

 「ふるやのもり」を聞く機会も多いが、いつも思うのは子どもたちの受け止め方。
 今の子どもは雨漏りと無縁の生活をしているだでしょうから、雨漏りの鬱陶しさがうまく伝わらないのではないかということ。 このお話は雨漏りの情景が浮かばないと面白さが伝わらないと思う。

・もうどの(鳥取のむかし話/鳥取県小学校国語教育研究会編/日本標準/1977年)

 おなじ鳥取県の昔話ですが、”もうどの”というのは雨漏りのこと。タイトルからは想像できません。

・もるどの話(富山のむかし話/富山児童文学研究会編/日本標準/1978年)

 ”もるど”というのは雨漏りのこと。

 ひとりぐらしのおばあさんのところに、トラとオオカミがやってきて、おばあさんが便所で話しているのを聞いて、そのまま逃げ帰ってしまいます。



トラと干し柿(韓国)(アジアのわらいばなし/松岡享子・監訳 田中美保子・訳/東京書籍/1987年初版)
 干し柿を化け物と思ったトラと泥棒の話。

 おなかをすかしたトラが山をおりて、ある家にやってくると赤ん坊が泣きだします。

 赤ん坊を泣きやませようと、クマやトラにつれていかれるよと家の女の人が声をかけるのを聞いていたトラ。トラという名前を聞いても赤ん坊は泣きやみません。しかし、女の人が干し柿をあたえると赤ん坊はすぐに泣きやみます。

 これまで自分をこわがらない生き物にあったことがないトラは、ホシガキは何者だろうとすっかり怖くなってしまいます。

 ちょうどそのとき、牛泥棒が屋根からトラを牛とまちがってトラの背中に落ちてきます。泥棒もトラと気がついて死ぬほどおどろく。トラは泥棒を振り落とそうと走り出し、泥棒も振り落とされまいとトラの背にしがみつく。夜明け頃、泥棒はちょうど手の届くところに木の枝がたれさがっているのに気がついてその枝に飛びつく。背中がかるくなったトラのほうも、ほっとして、安全な山のすみかへと走り帰ります。

 「トラと干し柿」では、干し柿を赤ん坊に与えると泣き止みますが、赤ん坊が食べるというので離乳食のようにあたえたのでしょうか?。

・とらよりこわいほしがき(小沢清子・文 太田大八・絵/太平出版社/2003年)

 韓国・朝鮮の民話第一集とあって、上記の「トラと干し柿」とほぼ同様です。

馬のたまご(バングラデッシュの民話/アブル・ハシム・カーン・え ビプラダス・バルア・再話 たじま しんじ・訳/ほるぷ出版/1985年初版)

「馬のたまご」ってなんなのと思いながらみたら、「ふるやのもり」に似た話。

 むすこから馬がほしいといわれた父親(ハンダという名前)は貧乏暮らしで、馬を買えるお金がないため、たまごだったらずっと安いだろうとおもって、馬のたまごをさがしにいきます。人々から笑われながらも探し続け、ずるがしこい男から買ったたまごは、白い色をぬったうり。

 家に帰る途中、田んぼの中の小魚をつかまえようと、馬のたまごなるものを、道端において田んぼにはいっていきます。するとキツネが走ってきて、たまごをつぶしてしまいます。逃げていくキツネをみたハンダは、キツネがたまごから生まれたものと思ってそのあとを追っていくが、見失ってしまう。
 ハンダは大きな家の納屋で一晩とまらせてもらう。真夜中その家のむすこがおしっこにいきたいから父親についてきてくれと頼むが、ねむりかけだった父親は面倒になって、「そとにはトラの何十倍もこわいおそろしいきりさめがいる」といいます。

 トラはハンダを食べようと思ってあとをつけてきていたが、この話をきいて怖くなり逃げだします。このトラを馬の赤ん坊に違いないと思ったハンダは、トラとはおもわず、飛び乗ります。トラは一晩中走り続けますが、あたりがあかるくなって、ハンダがしがみついるのはトラと知ってびっくりし、バニヤンという木の下を通り過ぎる時に、枝にとびつきます。

 サルにあったトラはゆうべのできごとをはなし、きりさめが一晩中とりついていたがどうやら助かったらしいと話す。サルはきりさめがみたくなり、バニヤンの木にのぼるが、ハンダからしっぽをギリギリとねじられ、「きりさめなんかじゃない、ギリギリマキだ」といってそこから逃げ出します。
 今度は熊がでかけていきますが、ハンダがつくった穴に落ちてしまい、すっかりこわくなった熊も逃げ出します。

 次にジャッカルがでかけていきますが、そこにいたのが人間だと知って、ハンダを食べようとします。しかしハンダは頭をつかってジャックルを追い払い無事に家に帰りつきます。

 冒頭部でだまされて馬のたまごを買ったハンダが、今度は動物をうまくだます?(本人はだますつもりはありません)という二重構造になっていて、すれ違いが楽しめます。

 ところで、バングラデシュは日本でどの程度知られているのでしょうか。世界で7番目に人口が多い国であり、2011年にアジア開発銀行が公表した資料によると、1日2ドル未満で暮らす貧困層が国民の75%を超える約1億1800万人と推定されているとある。日本の装丁のしっかりした絵本とおなじといえないまでも、バングラデシュの子どもたちが絵本に親しむことができるか気になるところです。


 「馬のたまご」は絵本ですが、木や花の描き方に特徴があります。特にバニヤンの木にびっくりです。
 画家のアブル・ハシム・カーンは、陶芸を学び、これまでにデザインした本が多数あり、バングラデッシュ政府の憲法読本、教科書のデザインをされています。

トーントイとトーンモーン(大人と子どものための世界のむかし話14 ビルマのむかし話/大野徹・編訳/偕成社/1991年初版)

 子どもが夜泣きして、母親が「そんなに泣いたら、トラがきますよ」「なきやまないとクマがきますよ」といってなだめますが、いっこうに泣き止みません。

 母親が「いうことをきかないならトーントイとトーンモーンをよびますよ。ほらもうあそこにきているわ」というと、子どもはぴたりと泣き止みます。
 トーントイとトーンモーンは二人組の泥棒で、腕は名人級です。

 牛小屋にいたトラが、その話を聞いて様子をうかがっていると、牛を盗みにやってきたのはトーントイとトーンモーン。暗闇の中でトラを牛と思い込んで縄をかけ、外に連れ出します。
 月の明かりで、自分たちがつれてきたのは牛ではなくトラだったのにきづいたトーンモーンは逃げ出し、トーントイは、縄をミミイチジクの木の結びつけて、木の上によじのぼります。そこにはクマが。


恐ろしいデポー(ビルマのむかしばなし/中村祐子他・訳/新読書社/1999年初版)

 怖いものが「雨漏り」ではなく、デポー(にわか雨)です。  泥棒とトラが羊を盗もうとして、羊の番人が、デポーが怖いといっているのを聞いて、デポーがすごい怪物と思いこむ話。ほかにも猿や野兎が登場します。

 「ふるやのもる」に類似する昔話は、アジアには多いのですが、ヨーロッパのものは読んだことがありません。この違いなども面白いところです。          


この記事についてブログを書く
« すてきなテーブル | トップ | うみへいった ちいさなカニカニ »
最新の画像もっと見る

昔話(日本・外国)」カテゴリの最新記事