どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

あたしは 本を 読まない

2024年05月08日 | 絵本(日本)

   あたしは 本を 読まない/作・コウタリ リン 絵・ちば みなこ/BL出版/2023年

 

 大阪国際児童文学振興財団が主催し、日産自動車が協賛しているという「日産童話と絵本のグランプリ童話部門」の大賞に選ばれたという作品。日産がこんな活動をしているとは知りませんでした。

 小学校三年二組、学校図書館でかりた本の感想文発表の五時間目。先生にあてられて感想文をよみはじめたのは木田くん。木田くんは転校生で、いつもしずかにしている。

 木田くん、「哲学の本を借りようとしたら、すごいねといわれ、下校のとき、本をもっているだけなのに、知らないおじさんから、えらいねといわれた」ことを発表しました。

 「あたしは 本を読むのが好きじゃない」というユイちゃんは、それそれと 木田さんの借りた本をお母さんの目の前においてほめられようとしましたが、「どうせ読まんと返すだけやろ」と、お母さんはおみとおし。

 掃除の班で木田くんと同じになったユイちゃんは、木田くんのことをよく知ろうと話しかけました。木田くんは引っ越しでこの学校にきたばかりで、友だちができていないと思っていたら、クラスで一番うるさい草野くんが、「ほかの人にするのとおなじように ぼくにもふざけてくる。むししない」といわれ、草野くんを見直しました。

 ユイちゃんと木田くん、草野くんが図書館にあつまるようになって、草野くんのサーッカーの話を聞いたり、木田くんに折り紙を教えてもらったりしていたある日、先生から呼び出されて帰ってきた草野くんが「オレの感想文、賞とったぞ」と喜んでいました。地図記号の本でした。

 草野くんから「山本もこれ読めよ。ええぞぉ、地図記号」といわれ、どうしようとユイちゃん。口から出たのは「あたしは、本をよまへん・・けど」「本を書く!」。いまのはじょうだんと言おうとしたら、木田くんは「それいいね。ぼくがいちばん先に読むね」草野くんは「オレ、感想文書いたるわ」。そういわれてひくにひけなくなったユイちゃん。

 あたしの本は「木田くんと草野くんのことをかく」「それから、あたしのむねのおくのことをかく」「わからないことを、いっぱい考えて書く」。ユイちゃんが、なんだか 書けそうな気がしたところでおわり、続編がまたれます。

 

 ユイちゃん、読書感想文のために、「本を読む」というのが 受け入れられなかっただけなのかも。