天間荘の三姉妹 6

のんにやられた。
昏睡状態の人が最後に生きるか死ぬか選択するために立ち寄る場所という設定の天間荘。その世界観に最初は違和感しかなかったけど、それを溶け込ませたのはのんの捉えどころがないキャラクター。整合性がないところも、仕方ないと思わせる真っ直ぐさ。それを悪く見せないピュアな感じ。彼女でなかったらこの物語は成立しなかったと思う。後半のタルさとか、無駄なCGとかもあったけど、死について考えさせてくれるいい作品だった。

線は、僕を描く 5

薄くて淡い。
同じ監督だということもあるが、「ちほやふる」からチームワークを抜いた感じの作品。和の文化の深さに若者が気づき、何故かそこに才能があって、成長していく。静かな水墨画の世界に躍動感を乗せている映像や音楽はよかったけれど、キャラも行動も悪い意味のマンガレベルで深みがない。1本の筆で3つの濃淡を表現できるそうなのに、薄墨ばかりでチョコチョコ書いた感じ。

千夜、一夜 7

染みてくる。
蒸発した夫の帰りを30年待ち続ける田中裕子。彼女の周りにいる家族、慕ってくれる幼なじみ、おなじようにダンナが消えて2年になる女。いろんな人の思いが交錯する中、自分で「狂っているから」と変わらない彼女の気持ち。先も状況もわからない中で待ち続ける辛さと、今さらどうすれば？という不安。彼女はどうなったら一番幸せなのか？自分なら…あまり想像したくないが、そんなことを考え、静かにだけど心をかき乱された。

RRR 7

ニンニクみたいやな。
バーフバリシリーズの監督の最新作は、舞台をイギリスに統治されていた1920年代にしたやっぱり明快勧善懲悪もの。大悪党の大英帝国に立ち向かうという構図は香港映画でよくあるパターンだけど、さすがインド映画。スターたちの無双ぶりがすごすぎて爽快。インファナル・アフェアみたいな潜入系の葛藤もよかったけど、最後30分の無敵さったらないわ。脱獄の時のトーテムポールアタックは映画史に残るのでは？

耳をすませば 5

俺の耳が遠くなっただけか？
あの名作アニメの10年後を松坂桃李と清野菜名で実写化。20年以上前だけどアニメは感動したので期待していたが、なんとも気持ち悪い作品だった。主役の二人、そして周りの人たちが優等生すぎて…。15歳から25歳の10年間、純愛を貫くのはまあいいとして、他にもいろいろあるはず。そのあたりの汚れが全くなく、ひたすら明るく前向きで現実感がない。ジブリのピュアな登場人物たちは空を飛べたり、虫と話せなくても、やっぱり非現実の世界の生き物なのかな？

MONDAYS／このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 6

時は巡り〜
小さな広告代理店を舞台に「また月曜日がやってきてしまう」タイムループもの。同じ日を主人公だけが何度も繰り返すパターンはよくあるけど、これは周期が1週間、そして少しずつ気づいている人が増える団体戦なところが新しい。面白い設定なのにイマイチ乗れなかったのは繰り返しのテンポの悪さと、代理店という仕事に自分がいま持ってる嫌悪感からなのか。とはいえ、低予算でほぼワンシチュエーションで、これだけ見れる作品が作れる監督に注目していきたい。

その声のあなたへ 5

料理がなぁ…
則巻千兵衛、ラオウなどの声優、内海賢二さん。彼ゆかりのレジェンド声優たちの元に行って、声優の歴史や気持ちなどについて聞いて回ったインタビュー集としての素材は素晴らしい。レジェンドたちの奥深さや生き残ってきたたくましさや、理由を感じることができた。ただそれを見せるための構成とか小芝居がひどすぎる。運転講習とか博物館の紹介ビデオみたいなクオリティ。あ〜もったいない。

もっと超越したところへ。7

すごい感動、いや反動！
ダメ男とそんなヤツとわかってても惚れてしまう女のカップル4組のオムニバスコミック恋愛劇。見る側がそれぞれのキャラに少しずつ思い当たる節があるパターンだが、2時間中9割は男のダメさ加減と物理的にも精神的にも貧相な若者の生活に寂しささえ感じる展開だった。ここの点数は4くらいにしようと思っていた。ところが素晴らしかった最後の逆転劇。弓を引いて引いてドーン！演劇的で緻密な伏線を超越して破壊していく気持ちよさ。まさかこの短時間でこんな爽快な気分になるとは！オリックスなみに見事なサヨナラ劇だった。

劇場版 荒野に希望の灯をともす 7

魚を与えるより…
アフガニスタンでの活動中に襲われて亡くなった医師 中村哲さんのドキュメント。正直、あまり存じ上げなかったから、驚くことばかり。医師として現地で診療していたのは知っていたが、途中からは素人なのに用水路を作る工事を指揮し、砂漠を農地化。60万人の生活を支えるという偉業を成し遂げたそう。飢えている人に「魚を分けてあげるのではなく、魚の捕り方をと教えてあげる」その場の楽しさだけでなく、その先に繋がる何かを残す。人のために動く時に大事なことを見せていただいた。

マイ・ブロークン・マリコ 5

う〜ん…
つまらなかったワケでもない。親友というか、依存しあっていた友を亡くした喪失感。ブロークンしたのはマリコの体だけでなく、シイちゃんの心も。やるせなさは理解できるけど、永野芽郁のやさぐれ演技は力が入りすぎてて、ちょっと。あと展開が断片的だし、いろいろご都合主義すぎてイマイチ。物語というか詩を聞かされているようなしっくりこなさが見終わったあとも続いている

バッドガイズ 5

期待しすぎたかなぁ？
ドリームワークス制作のクライムアニマルコメディ？狼や蛇、クモ、サメ、ピラニアといった悪者動物たちがバッドガイズというギャング集団を作って暴れていたけれど…という話。もちろんフルCGだからアクションだってやりたい放題、アニメならではの表現の幅もすごい。なのに何だこの物足りなさは？
ほろ苦で一捻りあり、オトナも考えさせられるところがあるのがドリームワークス作品の良さだった。なのになんだコレ？人は見た目で判断したらダメ？いいことしたら気分がよくなる？仲間はやっぱり大切？ネズミの国でやっとくれ。

アイ・アムまきもと 5

死刑に至る病と真逆のキャラを阿部サダヲが演じた１本。白黒の違いはあれど、ふわふわしてて捉えどころがないキャラを演じられるのが彼の凄さだけど、どう足掻いても感情移入はできないし、させてくれない。不可解な行動の動機が理解できないし、暗示すらないからだ。聞いたら原作はイタリア映画だそう。不思議な雰囲気はいいけど、だからってそのままじゃあかんのでは？