みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

大戸川ダム 事実上の中止「時代は変わった」

2009-04-09 07:50:04 | ほん/新聞/ニュース
前に長島温泉に行ったときに、長良川河口堰にも立ち寄った。

わたしたちは、若いころから岐阜で、
「長良川河口堰建設に反対する市民の会」(略称・市民の会)に加わっていた。
「市民の会」の長い運動の歴史のなかでは、比較的若い世代。
天野礼子さんが反対運動で活躍するずっと前のことだ。

知事が長良川河口堰にゴーサインを出してから「市民の会」活動は下火になったが、
その後も、岐阜市で「長良川河口堰建設の賛否を問う直接請求」をしたり、
長島町で天野さんと大森恵さんと3人で、の72時間ハンストに加わった。

  

北川石松環境庁長官がやってきたとき、現地に動員された3000人もの
推進派住民に対して、たった3人で歌を歌って対峙したこともある。
こう書くと「武闘派」みたいだけど、そのくらい河口堰反対運動は苛烈だった。


『川辺川ダムはいらないー「宝」を守る公共事業へ』
(高橋ユリカ著/岩波書店)

ジャーナリスト高橋ユリカの公式サイトです

高橋ユリカさんの『川辺川ダムはいらないー「宝」を守る公共事業へ』の
著書の紹介をしたとき、「河口堰はできてしまったが、
その思いは、全国のダム建設の反対運動にひきつがれている、と書いた。

先日、サンデープロジェクトで、大戸川ダムをメーンに
「ダム建設を問う」特集をやっていて、
長良川河口堰反対の住民運動の様子が流れていたが、
なんと!赤い服を着て横断幕をもっていたのは、若いころのわたし(笑)。

そのなかで、大戸川ダムに反対する中心メンバーの専門家として登場したのは、
河口堰建設にかかわった旧建設省の人。

大戸川ダムは、流域自治体の府県知事もこぞって反対で事実上中止になった。
国が推進するダム建設など大型公共事業の流れは、
なりふり構わず国の手先となって自治体とも闘わざるを得なかった時代から、
確実に変わってきている。

朝日の社説で、大戸川ダムについて「国交省は中止の明言を」と書いているが、
そろそろ、国は負けを認めたらどうか、と思う。

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社説 大戸川ダム 国交省は中止の明言を 
朝日新聞 2009.4.5

 国土交通省が発表した淀川水系の河川整備計画に、大戸川(だいどがわ)ダムについては「本体工事は当面実施しない」とする方針が盛り込まれた。ダム建設は凍結するというのが国交省の説明だ。
 淀川上流の大津市につくるこのダムについて流域の大阪、京都、滋賀の3府県知事は、建設反対の意見書を国交省に提出した。97年に河川法が改正されて、河川整備計画をつくる際は、流域の知事から意見を聴くことが義務づけられた。3知事の意見書はその手続きに沿ったものだ。
 大型公共工事の実施をめぐって国と地方とが真っ向から対立するという、地方分権の時代を象徴するできごとだった。国交省も「地域のことは地域で決める」と主張する知事たちの声を無視できなかったということだろう。
 大津市など流域の市町は建設促進を要望した。幅広い判断が求められる知事たちの意見をくんだのは常識にかなっている。財源が限られる時代、地元が合意できない事業よりは、ほかの事業に、という考えが国交省にあったのかもしれない。
 ただし、今回の国交省のやり方には理解しにくい点がある。整備計画に「凍結」という言葉がないうえ、「本体工事は、中上流の河川改修の進み具合とその影響を検証しながら実施時期を検討する」と書かれていることだ。
 これでは、建設か凍結かはっきりしないだけでなく、依然として建設を前提にしているということではないか。
 大戸川ダムの必要性や緊急性については、国交省自らが専門家や住民を集めてつくった流域委員会からも同意を得られなかった。国交省は凍結ではなく、建設の中止を明言すべきである。
 やはり熊本県知事が反対を表明した川辺川ダムでは現在、国交省と県、流域市町村が「ダムによらない治水」の検討を進めている。大戸川ダムでも同じ検討に入るべきだ。
 3知事はそれぞれ財政、地方分権、環境といった観点からダム建設に反対した。上下流の利害を超えて結束した背景には中央集権への反発もあった。
 大戸川のような国直轄ダム事業は、地域の優先順位とは関係なく進められ、自治体は多額の負担金まで求められる。そうした公共事業のあり方に「ノー」を突きつけたわけだ。
 各地のダム計画にも影響を与えるに違いない。
 国交省や自治体が計画しながらまだ完成していないダムは、全国に約150基もある。多くは高度成長期につくられた計画で、水需要や発電など前提にしていた社会状況はすっかり変わった。ダムがもたらす生態系への影響も懸念されている。
 国交省は、一つひとつの地域の声ときちんと向き合い、立ち止まって考え直してはどうか。
(朝日新聞 2009.4.5)


大戸川ダム:国交省が凍結 4府県知事反対で事実上中止
毎日新聞 2009年3月31日
 
 関西の4府県知事が建設に反対している大戸(だいど)川ダム(大津市)について、国土交通省は31日、事業を凍結することを決めた。近畿地方整備局が同日午後公表した淀川水系河川整備計画の中で明記した。凍結を解除する場合は知事の意見を聞くとしており、事実上中止されることになった。知事側が求めていたダム周辺のつけ替え道路の建設については実施する。
 同ダムは建設費1080億円。昨年11月、滋賀、大阪、京都、三重の4府県知事が、施策の優先順位が低いとして建設を凍結するよう表明。近畿地方整備局が4府県と協議しながら、事業の妥当性を再検討していた。
 国交省は09年度予算でも、本体工事の経費は盛り込んでいなかった。国交省幹部によると、同ダムの建設が遅れることで、淀川水系の整備計画全体に影響が出ることを避けるため、知事側の主張を受け入れたという。
 金子一義国交相は「知事の意見を深く受け止めた。地元市町村長や住民はダム建設を求めている。知事たちには、このギャップを埋める努力をしてもらいたい」と記者団に述べた。
 ダム建設をめぐっては、熊本県の川辺川ダムについても同県の蒲島郁夫知事が反対を表明。国交省は省内に有識者による検討会を設け、ダム事業全体の進め方について見直し作業をしている。【位川一郎、高橋昌紀】
毎日新聞 2009年3月31日



クローズアップ2009:大戸川ダム中止 高度成長期に計画、「時代は変わった」
毎日新聞 2009年4月1日

 ◇必要性に疑問
 国土交通省が31日、事業凍結を決めた大戸(だいど)川ダム(大津市)。公共事業の見直しを迫られる中、滋賀、大阪など4府県が共同で建設反対を表明しており、財政難と地方の声に凍結を余儀なくされた格好の今回の国の決定。全国のダム行政への影響も大きそうだ。【野田武、高橋昌紀、稲生陽、大西康裕】
 「(滋賀、京都、大阪の)3知事は『治水効果は認める』とし、ダムには一定の評価を与えている。優先順位の問題。建設自体に反対をしているわけではない」。東京・霞が関の国交省で、河川局治水課の担当者はダムの必要性を強調。「現在の経済状況を考えると、直ちに着工できるわけでもないということだ」と述べた。
 「建設凍結」決断の背景には、大戸川ダム問題が長引けば、淀川水系の整備計画自体に遅れが出るとの懸念があった。地元知事が同様に反対を表明した川辺川ダム(熊本県相良村)に影響。ひいては脱ダムの機運をも盛り上げかねなかった。
 昨年12月に内示された09年度一般会計予算の財務省原案で、国交省の概算要求は10億円。しかし、知事側の了解を得ていないとの理由から、財務省の内示は半分の5億円にとどまった。
 31日発表の整備計画について、ある国交省幹部は「付け替え道路の建設を保証することで、知事側が受け入れられる内容になった。整備を進めることを優先した結果だ」と解説する。
 一方で、本体工事に関する「建設中止」の文言は見あたらない。明記されたのは「中・上流部の河川改修の進ちょく状況とその影響を検証しながら実施時期を検討する」との文言だった。
 ある河川局幹部は「宇治川や桂川が改修され、淀川への負荷が大きくなれば『大戸川ダムはやはり必要』との声も出てくる」と言い切る。別の幹部は「時代は変わった。ダムによらない施策について、河川局自体が考えなければならない時期にきているのだが」と吐露した。
 国が建設を計画しているダムは群馬県の八ッ場(やんば)ダムなど、全国で47カ所、総事業費は約6兆2000億円。多くが大戸川ダムや川辺川ダムと同様、高度成長期に計画され、必要性に疑問が生じているものも少なくない。今回の凍結は、計画時から社会状況が大きく変わる中、事業を進める難しさを示した。

 ◇治水行政、転換点に--前宮城県知事の浅野史郎・慶応大総合政策学部教授(地方自治)の話
 発言力のある知事が一致して国にノーをつきつけたことが、見直しの機運を高めたのだろう。完成まで時間がかかる国の事業は、目的が変わってしまうことがあるのに、始まると止まらなかった。今回の凍結は大きな転換点。他の事業の見直しにもつながる可能性がある。

 ◇流域知事意見を初反映--昨年11月、反対で結束
 97年、長良川河口堰(三重県、95年完成)に大きな反対が起きたことから、国のダム建設に際して河川法改正で知事の意見聴取が義務づけられた。今回は、その仕組みが初めて機能した。
 大戸川ダム建設が計画されたのが68年。地質調査などを経て89年、建設が正式に決定。98年までに水没地の住民の移転が終わり、水没地を通る県道の付け替え道路建設工事が始まった。
 一方で、国交省近畿地方整備局は河川法改正を受けて01年、学識経験者でつくる諮問機関「淀川水系流域委員会」を設立。03年、流域委は「ダムは原則建設すべきでない」と提言した。
 委員だった嘉田由紀子・滋賀県知事がダム凍結を公約に06年7月、初当選。地元で、凍結への動きが本格化する。淀川流域委は大戸川ダムによる治水効果が淀川下流で19センチの水位低下でしかないことを審議過程で明らかにし、「建設は不適切」と結論づけた。
 08年1月に誕生した橋下徹・大阪府知事がダム建設に伴う地方負担金に異を唱え、地方分権を重視する山田啓二・京都府知事も参加。三重県も加わり、昨年11月に4知事で反対意見をまとめた。
 県議会の抵抗を受けながらも反対の立場を貫いてきた嘉田知事は国交省の決定を受け、「知事意見を尊重してくれたことを一定程度評価したい」とし、「ともすれば対立しがちな(大戸川の)上下流(の府県)が一致した意見が出せたということは歴史的にも画期的」と話した。
 橋下知事は「僕としてはありがたいと思っています。地方の声はしっかり反映されたんじゃないでしょうか」と話し、山田知事は「あれもやります、これもやります、30年たったら何とかなりますというものだ」と計画を改めて批判した。
 一方で、京都府内の流域自治体にはダム凍結についてさまざまな意見があり、「これからも誠実に話し合いたい」と話した。
毎日新聞 2009年4月1日



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