福田の雑記帖

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ハンセン病(62) 差別化の背景に司法が果たした役割(2) 違法であったが違憲ではない??

2016年05月11日 06時53分54秒 | 時事問題 社会問題
 最高裁が内部に調査委を設置し、「特別法廷」に関する検証を始めたのは2014年5月。菊池事件の再審を求める弁護団らが2013年に検証を求めたのがきっかけだった。

 最高裁は、検証に当たっては個々の判決には踏み込まず、「特別法廷」を開いたことが手続き上で違法ではなかったかに限って調査することにした。だが、元患者らから内部調査のみでは不十分、と異議が出され、有識者による外部委員会が昨年7月に立ち上げられた。

 有識者委員会は「裁判がどの程度公開されていたか」に関心を寄せて調査した。最高裁は、「特別法廷」が聞かれた当時、開廷を知らせる「告示」が療養所の正門に張り出され、それが「裁判の公開」を示す、とし憲法違反はないと結論づけている。だが、行動制限されていた患者は正門の張り紙などを見ることなど不可能で、告示の有無を知るよしもなかった、という現実があった。

 有識者委員会は、ハンセン病患者というだけで「社会から隔絶された療養所で法廷を開くこと自体が違憲」と「特別法廷」を開くことを許可した手続きについて、「法の下の平等を定めた憲法に違反する」とした。

 その実態を示す資料がある。1948-90年までの間に地裁などから最高裁に「特別法廷」設置を求める上申が180件あり、そのうち96件がハンセン病を理由にしたものだった。
 他の病気などを理由にした上申61件のうち、最高裁が「特別法廷」を許可したのはわずか9件で認可率は15%なのに対し、ハンセン病の場合は96件中95件が許可された。明らかに不合理な差別的な扱いだった。

 最高裁は、4月25日報告書を公表し、患者の人格と尊厳を傷つけ、 一般社会での偏見・差別を助長した、と認め謝罪した。

 最高裁は、記者会見ではハンセン病患者の「特別法廷」について「憲法違反が強く疑われる」とで述べたが、報告書の文面では違憲判断を明記しなかった。しかし、「特別法廷」そのものは「差別的で、裁判所法違反」と認めた。
 だが、その結論は「法的違反はあったが違憲ではない」と、元患者らの期待に背き、「違憲性を認めない姿勢は到底受け入れられない」と批判している。

 有識者委員会は、誤った法の運用が二度とされないよう、裁判官などへの人権研修の実施などを提言した、と言うがこの点は朗報であった。

 患者の隔離政策をめぐっては、2001年に熊本地裁が違憲判決を出し、判決が確定した際に「政府」と「国会」は速やかに謝罪した。三権のうち「司法」が謝罪するまでに、らい予防法の廃止から20年かかったことになる。
 ハンセン病関連の人権回復闘争は今回の最高裁の謝罪によっても解決にならなかった。
コメント (2)
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