福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

医師と患者関係(18)某クレーマー(3)ネットの威力と怖さ

2013年06月11日 04時59分47秒 | 医療、医学
 岩手県立中央病院を舞台としたクレーマー問題は、医療費をすっぽかした点をのぞけば全体的には茶番に近い内容である。

 この件に対する私の感想は、
 第一に、現職の県議の行動だった事。これにはいささか驚いた。当初、当人は当該記事を削除したうえでネット上で謝罪したが、順序がまずい。病院には医療費スッポカシを含めて担当職員にも不快な思いをさせているのだから、直接病院を訪れて医療費を支払い、しかるべき方々に謝罪すべきであった。ネット上での謝罪はその後にすればよかった。ネット上での謝罪は誰に対してしたつもりなのだろうか。


 第二にはネット上の情報の伝播は著しく早く、それに短時間に多数の人たちが反応してくる、という事、これは考えようによっては怖い現実でもある。事の次第が一人歩きしてしまう。

 第三に、特に反論とかの場合、ネット上での記述内容は当該の件の記述にとどまらず、個人的な資質、それほど関連していない人にまで影響が及び、人格を傷つけられるような内容ということである。人格の否定、誹謗、中傷は人としてやってはならないことである。 

 このクレーマー問題は数日前からYahoo上でも話題になっており、岩手県のレベルから全国区レベルに広がってしまった。その記事に寄せられたコメントは優に5.000件を超えたという。当初、反響の大きさにご当人は当該記事を削除したうえでネット上で謝罪したが、むしろ批判は高まる一方で、ついにブログも閉鎖した模様である。真に謝罪の気持ちがあるのであれば、やはり直接病院を訪れるべきであった。

 私も現役にあった時、メールによる病院へのクレーム、スタッフへのクレームが多数よせられ、その記述内容の激しさに閉口したものであった。時には院長であった私まで誹謗の対象となった。それでも実名でのクレームに関しては丁寧に対応した。ときには直接お会いして説明したこともある。

 私はパソコンやワープロは「憎悪増幅器」になる、と感じている。今は殆ど見られなくなったが、自筆で書かれたクレーム文などは一般的に表現がソフトである。自筆で「書く」ことによって自分の考えが整理され、誇張や無駄な部分が削ぎ落とされるからだと思う。一方、パソコンやワープロは「書く」のではなく「打ち込む」作業であり、感情の赴くままに次々と言葉が打ち込まれ、追加されていく。行き着く先は誹謗と中傷である。また、クレームは本人からのよりも、本人の話を聞いてエキサイトした家族や友人からのが遥かに辛辣である。

 私はブログ、ツイッター、フェイスブック、掲示板・・などが何たるものか全く知らない。ネット上で大々的に意見が飛び交い、盛り上がる事を「炎上」と言うことも初めて知った。今回のクレーマー事件は「炎上」に相当するだろうが、交わされる意見や感想は多くは刺激的な言葉だけから成る短文である。これらを見るのは辛い。私の様にくどくどと説明をしているのはまず無い。私にはそのような、刃のような文は書けない。

 私がつらつら綴っているブログにも時に反論やコメントが寄せられるが、多くは親切な助言が多い。しかし、時に一行程度の短文がぶつけられることがある。その意図も分からないだけに私は困惑する。

 私はつくづく良い時代に生きている、と思う。自分の生活の中にいろいろなことを取り込み享受している。ただ、これはちょっと、と思うことも少なくない。
コメント (1)
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