銅版画制作の日々

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戦場でワルツを(2008)

2009-12-26 | 映画:ミニシアター

 過去が、語り始める
VALS IM BASHIR
WALTZ WITH BASHIR

レバノ~ン♪レバノ~ン♪ この歌が印象的


これは監督自身の経験を元に製作した自伝的ドキュメンタリー。

ドキュメンタリーのアニメ化というのは珍しいですね。
アリ・フォルマン監督が何故アニメにこだわったのか等。。。。以下その理由に触れています。

あくまでも本作は自分の個人的な話で、自伝である。と同時に普遍的な物語である。様々な戦争に関わったどの兵士が語ってもいい話なのだ。自分にとって戦争という事態は遠いものなのに、何故かその戦争に送られて来ていることに対してどうしてなのかと思う兵士で、その人たちは決して視野の広くない人たちなのだ。
戦争をすることの意義などには関心もないだろう。つまり戦争に駆り出され、仕方なくというのは語弊があるかもしれないが。とにかく与えられた職務を全うし、その一日だけを生き延びることを、また新しい日を迎えても無事国に帰ることだけを願うだけの人たちの物語なんだね。
だから政治や場所などのディテール(詳細)は必要ない。

アニメ化したのは、アニメこそが完璧な方法だからであり。テクニックとしても最高のものだった。戦場での思いは、野心もなければ、政治的な考えもない。ただあるのは個人的な良心だけ。ただ戦争によって失われた青春は結構痛そう。。。。主人公アリが恋人にふられたというのはショックそうだったよね。
そして最大のポイントは戦場での経験は、もっともシュールで超現実的なものだということ。(シュールとは非現実という意味)だからこそアニメでの映像表現が一番だと監督は思ったのだろう。

アニメ化にするにあたっての苦労。

イスラエルには、アニメの伝統はないので、確かに大変な仕事だったらしい。監督の作品はイスラエルで2番目のアニメ作品だそうだ。
最初の作品は、1961年に製作された聖書をアニメにしたもの。自国に参考例がなくて、白紙から作った。人間を二次元のアニメにして共感していただける人物にしていくのは難しいものだった。また、製作費を集めるのも大変。アニメーターは最初6人で始め、その後人数を増やし、4年間費やしてゆっくりしたペースで完成させた。製作にあたっては、さまざまな劇映画から影響を受けた。パレスチナやサラエボのドキュメンタリーなども参考にした。さらに、日本のアニメも、宮崎駿のものはすべて観た。今敏監督の『パプリカ』『東京ゴッドファーザーズ』などからも影響を受けた。デザインの仕方は、従来の手法では無理でしたので、カットアート型でアニメにした。

冒頭、旧友から26頭の凶暴な野犬に襲撃される悪夢に悩まされていることを告げられ、アリは自分にはレバノン戦争の記憶が一切、欠落していることに気づく。さらに、ベイルートの海に全裸で漂うイメージだけがふいに甦る。アリはこの断片的なイメージだけを手がかりに、当時の戦友たちを訪れ、この幻想的な光景の確証を得ようと試みるが、誰も覚えていない。その代わりに彼らは各々が抱える戦時下の苦痛に満ちた体験とそのトラウマを切々と語り出す。

26匹の犬たちが猛スピードで走る場面は怖かったですね。特に犬たちの狂気じみた表情に観ている私はぞっとしました。

実写なら、やはり撃ち殺される場面などは見るに忍びないものもあるのでしょうが、アニメという映像だとリアルさはあまり感じられないので良かったのかなとは思いました。ただ全体に抑揚がなく暗い雰囲気が続くのでちょっと観ているのが辛かったというのが正直な感想です。不覚にもまた睡魔に襲われてしまいました(汗)

それとこの作品の主題となってるレバノン戦争についてはまったくといっていいほど知識がないため、理解できず。。。。事前に勉強しておく必要があるなあと思いました。


カット型アニメはなかなか味があって良かったのではないでしょうか?

解説(allcinemeより抜粋)

イスラエル人のアリ・フォルマン監督が、自らも青年時代にイスラエル軍兵士の一人として最前線に身を置いた80年代のレバノン戦争を題材に、戦争の本質を鋭くえぐり出す衝撃のドキュメンタリー・アニメーション。旧友との再会をきっかけに、なぜか自分が戦争当時のことを思い出せないことに気づいたフォルマン監督。彼は、かつての戦友を訪ね歩き、失われた記憶を取り戻そうと試みる。やがてそれは、戦慄の真実としてフォルマン自身の心に重くのしかかってくることになるが…。自らが体験した過酷な現実を、アニメーションならではの幻想的な映像を織り交ぜ、真摯に語っていく。アカデミー賞でアニメーションながら外国語映画賞にノミネートされるなど、世界各地で数々の映画賞に輝いた。

アニメーション監
督:
ヨニ・グッドマン  
製作: アリ・フォルマン  
脚本: アリ・フォルマン  
美術監督: デヴィッド・ポロンスキー  
音楽: マックス・リヒター
声の出演: アリ・フォルマン
メディア 映画 Anime
上映時間 90分
製作国 イスラエル/フランス/ドイツ/アメリカ
公開情報 劇場公開(ツイン=博報堂DYメディアパートナーズ)
初公開年月 2009/11/28
ジャンル 戦争/ドラマ/ドキュメンタリー
映倫 PG12
オフィシャル・サイト
http://www.waltz-wo.jp/

※ラストの実写映像は衝撃的でした。戦争の悲劇を何とか食い止めないと。


 

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4 Comments

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こんばんは^^ (KLY)
2009-12-26 02:33:27
戦争の表現をアニメーションで行うチャレンジは評価に値すると思うのですが、実際にはむしろ逆にリアル感がうせていると感じました。
最後に実写を出すぐらいなら全て実写で構成すればよいとすら思います。
いずれにしろ『プラトゥーン』をみて戦争賛美と捉える監督の考え方はどうにも好きになれなかったです…。
こんにちは~。 (ひきばっち)
2009-12-29 12:49:22
私もようやく観てまいりました!

>レバノン戦争についてはまったくといっていいほど知識がないため

私もそうでした!
ブログにも書いたのですが、全く知識が無いので、主人公たちが話している“戦争”がいったい“いつ”の“どんな”戦争なのか、中盤過ぎまで判らずに苦労しました・・。

>イスラエルで2番目のアニメ作品だそうだ

mezzotintさんのこの文章を読んで、何故フォルマン監督が“アニメ”にしようと思ったかが、
なんとなく理解できました。

イスラエルの人々(特に子供たち)にとって、アニメーションは新鮮でしょうから、それだけ
心に“戦争の惨たらしさ”“戦争はいやだという気持ち”が強く残るのではないか・・と、
監督は考えたような気がします・・。

私にとってもこの作品は、イスラエル、パレスチナ問題を
考える強いきっかけになりました・・。


残念。 (de-nory)
2010-01-14 08:20:13
mezzotintさん。こんにちは。

私には、あまり響いて来なかった作品でした。
「観るべき作品」とは思いますが、もう少し見せ方があるのではと感じてしまってます。
戦争とは? ()
2010-01-24 11:00:21
>だから政治や場所などのディテール(詳細)
>は必要ない。

このブログの冒頭の段落には強く同感です。
この物語には普遍性がありますね。

それにしてもラストの実写は私にはショックで
した。

長崎市ではこの映画と「リミッツ・オブ・コントロール」と「母なる証明」の3作品が並行して、入れ替えで上映中というまさに映画鉄人レース的状況です。

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