マキペディア(発行人・牧野紀之)

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卒業税

2018年01月18日 | サ行

 大学の授業料を国が肩代わりし、卒業後に「出世払い」してもらう。政府は教育の負担軽減策として、そんな仕組みを検討している。モデルはオーストラリアの制度だ。どんなものなのか。設計した豪国立大のブルース・チャップマン教授に聞いた。

 豪州ではかつて大学の授業料は無償だったが、財源が少なく定員を抑えざるを得なかった。そこで受け入れる学生数を増やす代わりに、学費を所得に応じて後払いする仕組みを設計した。1989年に始めた「高等教育拠出金制度(HECS)」だ。

 卒業後、年収が約5万5千豪ドル(約480万円)を超えると、額に応じて収入の4~8%を返していく。下回ると返済の必要はない。無利子で、すべての学生が利用でき、回収率は約8割にのぼる。

 利点は多くある。進学前や在学時にお金がかからず、卒業後も返すのに苦しんだり返しきれなくなったりすることがない。保証人も要らない。徴税のシステムで納めるため、回収コストも極めて低い。豪州では、この方式で進学機会が広がり、学生数が倍以上伸びた。

 日本も「所得連動返還型奨学金」を始めたが、対象は無利子奨学金を受けている学生だけだ。返す額は前年の年収で決まり、急に失業すると返済が困難になる。収入がなくても月2千円を払わせられる。制度も複雑でわかりにくい。

 日本が豪州のような方式を新たに導入する場合、政府はまず、授業料を負担する財源を用意しなければならない。私学が高い授業料を設定しないよう、上限を決める必要もある。

 公金を投入するのだから、大学教育の質をきちんと管理することも欠かせない。

 国の財政負担を抑えながら、大学教育の裾野を広げることは各国共通の課題だ。豪州の方式はニュージーランドや英国、ハンガリー、オランダ、韓国など採用する国が急増。日本でも検討に値すると思う。
 (朝日。2017年11月4日。聞き手・氏岡真弓)

感想

 ・私も「日本でも検討に値すると思」います。
 ・アメリカには大学で事業をしていて、学生をそこで働かせるようにしている所もあると聞いています。これも面白いと思います。
 ・卒業生や支持者からの寄付を元にして「運用」することも大切だと思います。
 ・「公金を投入するのだから、大学教育の質をきちんと管理することも欠かせない」という点にも特に賛成です。大学教員を評価する方法を考えるべきですが、これが難しい。外国のやり方を調べてみるべきでしょう。秋田にある国際教養大学では教員の任期制を取っているのではないでしょうか。