マキペディア(発行人・牧野紀之)

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都市同盟、内向きな国に挑む

2017年07月16日 | タ行

        森 千香子

一国単位では解決できないグローパル化に伴う課題に、国より小さな都市が連携して解決しようという新たな試みが始まっている。今月9~11日、バルセロナで開催された国際会議「恐怖なき都市」はその一例だ。プレグジツト(英国の欧州連合離脱)からトランプ現象、欧州の排外主義に共通するのは国家が「恐怖」を前にして内向きになる傾向だ。極右の台頭や背景にある格差拡大を乗り越えるために、民主主義を生んだ都市から「希望」を生み出そう。それが会の趣旨だった。

 「国政が遠のき、主権を行使できると感じられない人々が増えている。都市を起点に主権を取り戻そう」。チリ・バルパライソ市のシャープ市長(32)は呼びかけた。「グローバル化の状況下でも手の届く範囲で変化を起こすことは可能だ。重要なのは、水平レベルで継続・連動させながら、ボトムアップ型でより広範囲の変化につなげることだ」

 このような「国際的な都市同盟」のあり方が、会議で議論された。新たな国際組織を設立するのではなく、排外主義、難民受け入れ、環境、住宅問題、地域経済などテーマごとに協力する形をとる。一つの自治体では国の圧力に屈しても、国内外と連携すれば力関係を有利にできるという発想だ。

 世界の150を超える都市から参加者が集まったが、米国からの参加も目立った。背景にはトランプ米大統領就任後、国の決定に都市が異議を唱え、ボトムアップでナシヨナルな枠組みを揺さぶる動きが同国で増加していることがある。パリ協定離脱後の展開はその典型だ。

 今月1日、トランプ氏が温暖化対策の国際ルールである同協定は「雇用喪失や賃金低下など米国の労働者に負担を強いている」と述べて離脱を宣言すると、同日、ブルームバーグ前ニューヨーク市長は「ボトムアップからのリーダーシップでパリ協定を履行する」と連邦政府と反対の立場を表明した。提出された声明には州知事や市長、企業、大学あわせて千以上が署名した。リベラルな大都市だけでなく、サンディエゴなど共和党の市長も名を連ねる。

 国に対する都市の「反乱」は移民政策にも見られる。非正規移民の強制送還を目指す連邦政府に対し、協力を制限することで非正規移民を事実上保護する都市・自治体は「聖域都市」と呼ばれ、全米で650を超えた(2017年1月時点)。トランプ氏は1月、「聖域都市」に対して補助金を停止する大統領令に署名した。それを受けてカリフォルニア州サンフランシスコ市とサンタクララ郡が提訴し、サンフランシスコ連邦地裁は4月、大統領令の執行停止を命じた。だが、その後も連邦政府と都市の攻防は続いている。

 米国だけではない。昨年9月、カーン・ロンドン市長とイダルゴ・パリ市長はデブラシオ・ニューヨーク市長とともにNYタイムズ紙上で中央政府の方針とは異なる「親移民」の見解を表明した。スペインでも2月、難民受け入れを中央政府に求めるデモが各地で行われ、バルセロナでは16万人が参加した。「恐怖なき都市」会議は世界各地の都市の「異議」が接続を模索する場だった。

 日本は、国際的な都市同盟の流れから取り残されている印象がある。だが浜松市のように「都市・自治体連合」に参加するなど積極的な都市もある。同市は12年に日韓欧多文化共生都市サミットを開くなど、都市の国際連携に注力してきた。

 「外国人受け入れ政策」は、日本で都市がボトムアップ型で国をリードする数少ない領域だ。01年の外国人集住都市会議を契機に、南米日系人を受け入れてきた自治体が連携して国に政策提言を行い、06年の総務省多文化共生推進プランにつながった。国の腰が重くても、都市が動かせることは他にもあるはずだ。国境を越えた都市連携が進む現在、そうした環境はかつてより整っている。
 (もり・ちかこ 1972年生まれ。一橋大准教授・社会学。著書に「排除と抵抗の郊外」)(朝日、72017年06月29日)

感想

 私の住む浜松市がこのような名誉を受けているとは知りませんでした。「多文化共生」という「言葉」は聞いたことがありますが、実際には何をして、どういう成果をあげているのでしょうか。ホームページを見ても直虎の事ばかりです。小天皇気取りの市長は月に1度、広報誌に「市長コラム」とかいう文章を発表するだけです。せめて「外国語の授業」(多分、これが正式な名称)でポルトガル語をとかエスペラント語を選択できるようにしたらどうでしょうか。あるいは又、土曜日に「日本語を母語としていない市民」に「日本語読み書き講座」を無料またはそれに近い授業料で開くという案はどうでしょうか。あるいはまた、「日本語を母語としていない人(特に子供)」に「母語と日本語の基礎学級」を無料で開くことも大切だと思います。
コメント (2)
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