マキペディア(発行人・牧野紀之)

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大学の統治に学生をもっと参加させよ

2012年06月02日 | タ行
    北原 和夫(東京理科大学教授。科学教育)

 昨年末にべルギーのブリュッセルで開催された「大学教育の質保証」という欧州連合(EU)の会議に出席して驚いた。各国の高等教育担当の官僚やEUの行政官、さまざまな大学の副学長や教職員などに交じって若い学生たちがたくさん来ていたからだ。

 聞いてみると大学の学生会の会長たちだった。大学院生が多く、それぞれの大学の運営にも学生代表としてかかわっているとのことだった。会議で最も重要なテーマである「学習成果に基づく質保証の枠組みの目指すところ」のセッションでは、欧州学生連合副会長の若い女子学生が議長を務め、1時間半の議論をきちんと取り仕切り、結論を見事にまとめた。

 欧州の主要大学の評議会には学生代表がメンバーとして入っている。学生副学長を置いている大学もあるという。英国の大学評価機構は学生を評価委員にくわえており、委員は公募で選ばれる。選ばれた学生は、将来の学長もしくは大学界のリーダーとなっていくのであろう。また、学生会の会長の経験は、将来政治家への道にもつながるという。

 このように若いときに大きな責任をもたせることによって、高等教育を担う人材、さらに社会を動かす人材を育成していくことは大切だとあらためて感じ入った。

 学生は大学の重要なステークホルダー(利害関係者)である。日本でも近年、学生による授業評価が定着しっつあるが、これはあくまで受けた授業の効果を評価するもので、商品の「顧客調査」にとどまる。学生にはそのレベルを超え、大学の在り方、特に大学教育の質保証については、企画段階からもっと関与させた方がよいと思う。学生時代に大学という組織のガバナンス(統治)を経験することは、学生たちが将来、社会の現実と向き合う際にも有効だろう。

 私が国際基督教大学の学生部長のとき、学生寮のある規定が長期間にわたり、事実上守られていないことが分かった。そこで、寮生の代表と何度か会い、寮会での議決手続きを踏んでもらって、一緒に規定の改訂作業をおこなった。

 このように、学生の日々の生活に直接かかわる個々の課題について、学生たちと協働することは可能であるし、大いに効果がある。彼ら、破女らにはそのような経験を蓄積させながら、さらに大学全体の運営に参加させていくことが望ましい。

 「学生参加」は、単に学生の声に耳を傾けるという意味だけではなく、学生が組織のガバナンスを学ぶ機会を持つという意味において、将来の日本のため、とても大切だと考える。

(朝日、2012年06月01日)

   感想

 趣旨には賛成です。但し、北原氏にはこういう事を言う資格があるか、疑問です。

 第1に、国際基督教大学の学生部長のとき、学生寮の問題で何か学生と一緒に取り組んで解決したようですが、それ以上の大学運営の根本問題まで進まなかった事についての反省がありません。

 第2に、現在在籍している東京理科大学でこの事をしかるべき会議で提案したのでしょうか。それが述べられていません。

 第3に、そもそも東京理科大学のホームページで北原氏についてどれだけの情報公開がなされているかとそれを開いて見たのですが、教員の情報がどこにあるのかさえ分かりませんでした。

 仕方ないから「北原和夫」と入れてヤフーで検索してみたら、ご自分のホームページはないらしいですが、業績はかなりあるらしいと分かりました。一時は静岡大学にもいらしたようで、驚きました。

 ともかく、現在は自分の公生活をきちんと報告し説明していない人は、それだけで既に半人前でしかないと思います。「修身斉家治国平天下」です。

 大分前の事になりますが、東大の秋入学が話題になった時、国際教養大学の学長である中嶋峰雄さんがやはり朝日の「私の視点」だったかに書いていましたが、きちんと自分は何をしてどういう結果を得ているかを書いていました。

 書き忘れた事を1つ。金沢工業大学ではたしか大分前から、経営の中心的な会議に2人の学生代表を入れているはずです。

        関連項目

自分の思想と行動を語ること