マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

冬ソナと文法(その4)

2012年02月25日 | ハ行
 冬ソナを第12話を除いて皆、見ました。ドラマについての感想は特にありません。「純愛ドラマ」とはこういうものか、と思ったくらいです。済みません。

 一番印象に残ったのは、北のスパイだとか、若者の兵役とか、受験戦争とか、就職難とか、あるいはまた日本の植民地支配時代の後遺症とかいった要素が全然出てこなかったということです。それだけ韓国社会が成熟し、そういう要素を省いたドラマを作れるようになったし、それを味わう余裕も出て来たという事なのでしょう。

 2002年に放映されたはずですから、1997-8年の経済危機を乗り切って再び成長軌道に乗った頃だったのでしょう。日本より進んでいるなと思う事もありました。

 さて文法を中心にしてその後気づいた補足ないし修正を書きます。

 1、「その2」の最後で文法とは無関係ですが、「ドアのノックの仕方」を問題にしました。どうも、正解は②ではなくて①(韓国では元々西洋流)のようです。

 冬ソナの第18話にユジンがノックする場面が出てきましたが、やはり西洋流でした。又、「チャングムの誓い」の第5話で、薬草園みたいな所に左遷されたチャングムが、毒草(?)を食べた同僚女性を介抱する医師の指示でその女性の背中をたたく(吐くのを助けるため)場面がありますが、この時も西洋流でした(こういう場合、日本人はどういう敲き方をするでしょうか。平手でたたくのではないでしょうか)。以上の事からは①の解釈が正しいらしいという結論になります。

 しかし、サンヒョクがたしかチュンサンの部屋を訪ねて、ノックしようとして、思いとどまる場面では、日本流に近い動作だったと思います。男性と女性で違うのかな。

 皆さん、もっと積極的に自分の考えを出して下さい。

 2、冬ソナの第18話で、2人が兄弟だと分かって(最後に又否定されますが)、結婚式の途中でサンヒョクがユジンを連れ出した後、チュンサンとサンヒョクが話す場面。チュンサンがサンヒョクに聞く。「まさか、ユジンにはその事言ってないよね」。首を軽く横に振るように見える動作。「言ってない。いや、言えなかった」。

 これは大切です。否定疑問文を肯定するのに、場合によっては西洋流に首を横に振ることもあるという説(私が文法研究の中で確認した第3点)の証拠になるからです。

 もうひとつ第18話で。別れるために海に行こうと誘う場面。チュンサンがユジンに「これから海を見に行かない?」と否定疑問文で聞く。これには返事の場面がなく、次は海の場面になっている。

 さて、この否定疑問文に「ええ、行きましょう」という答えを言葉でなく、身振りでするとしたら、首を縦に振っただろうか、横に振っただろうか。私は縦に振ったと思います。そうだとすると、これも西洋流です。

 3、「その3」で指摘した「二重否定の疑問文」もそれに近いものが出てきました。第15話で、ユジンとチュンサンが元担任のゴリラを囲む集まりに向かう車の中での会話。

 自分の事を覚えていないのではないかと気にするチュンサンに対して、ユジン。「覚えてない訳ないでしょ」。チュンサン「まあね。死んだ生徒なんていないか」。

 この「まあね」は「まあ、そうだろうね」の略と考えられます。すると、二重否定は肯定だから、それを肯定して答えるには「そうです」と答える、と言えそうです。

 4、サンヒョクの言葉についてもう1つ疑問のある事が出てきました。

 第18話で、サンヒョクがお父さんと書斎で話を終えて出て行く(自分の部屋に上がって行く)場面。お父さんが「お休み」と言うと、サンヒョクも「お休み」と言う。後者は「お休みなさい」と言わせるべきではなかったでしょうか。

 韓国では親子の上下関係がいまだに儒教の影響でとても強いらしいですし、ましてサンヒョクは優等生です。たとえ韓国語にこの区別がなかったとしても、吹き替えは「お休みなさい」とするべきでした。

        関連項目

冬ソナと文法(否定疑問文への答え方)

冬ソナと文法(その2、「行ってきます」)

冬ソナと文法(その3)




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