マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

事業仕分けに携わって

2009年11月28日 | サ行
国の「事業仕分け」に携わった大学生の手記が構想日本のメルマガに載っていました。

        記(手記)
  東京大学教養学部分科II類2年・松本卓也 
  学生のための政策立案コンテスト「GEIL(ガイル)」2009実行委員長

 2009年6月、初めて「事業仕分け」のお手伝いに参加した。学生のための政策立案コンテスト「GEIL(ガイル)」の委員長として、国の政策について何も知らずやみくもに活動中だった。ガイル立ち上げ時(1999年)より支え続けてくださっている構想日本の西田さんよりお声をかけていただき、現実の政策を垣間見る機会に無邪気に喜んだ。

 中でも印象的だったのが、今年6月の文部科学省所管 独立行政法人/公益法人 政策棚卸し(事業仕分け)の際の、「財団法人民間放送教育協会」の仕分け作業でのやりとりだ。

 仕分け人:「必要か否かきちんと検証していないのだから、ひとまず来年度は凍結するべきではないか?」
 説明者:「いえ、ですからもし一度凍結してしまいますと、再来年度以降この事業がなくなってしまうかもしれませんし…」
 仕分け人:「それは、この事業が無駄だと判断されるようなものだったということではないか」

 国家公務員を志望していた僕はすごく衝撃的だった。「中央省庁の人がそんなことを言うのか」と驚いた。本当に必要性があるのかと疑うようなことを試みているし、効果測定をほとんどせずに毎年成果を明らかにせず多くの事業を継続している。「こんな事業のために、インフルエンザでも必死に働いた親父の納めた税金が少しでも使われている」と思うと腹立たしい。自分たちの生活を規律する政策の立案主体の認識のあいまいさに愕然とした。

 公開の場で行う「事業仕分け」。初めて傍聴したときに感じたのが、国会審議よりも非常に分かりやすいということだ。単に無駄を省くだけでなく、議員・官僚のアカウンタビリティ[説明責任]や日本全体としての政策に対する意識を高めるのだと思う。つい先日、政治の話など一切したことのなかった両親と、「スパコン」の予算の話になった。両親は政策の詳細は分からないし僕もそんなことまで話さない。しかし、以前より明らかに政治について親子で話すようになった。事業仕分けが浸透したことで、政治・政策に対して「自分たちのもの」という意識が高まっている気がする。国全体でそんな気運が高まっているのではないか。

 「無駄を省く」効果ばかりが注目されるが、それを見る国民一人ひとりの行政に対する意識を高めることこそ、事業仕分けの重要な意義だと思う。こんなことを机上で妄想するのではなく、実際の経験から考えることができた。一介の学生に、日常生活ではまず考えられない、見過ごされてきた「事実」を再考する契機であった。我々未来を築く一人ひとりにとって重要な「場」であることを再認識し、これからも参加していきたいと思う。
(引用終わり)