マキペディア(発行人・牧野紀之)

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笑み

2007年06月18日 | ア行
     笑み

 1、「満面の笑みを浮かべる」という言い回しに出会うことが多
くなりました。いつ頃からかは知りません。2007年06月18日、朝日
紙連載中の夢枕漠の「宿神」にもついに「実能(さねよし)は、満
面の笑みを浮かべている」という句が出てきました。これほど古典
に詳しい人でも使うようになったのです。私見では「満面に笑みを
浮かべる」だと思うのですが、少しまとめてみました。

 2、小学館の「類語例解辞典」にはこう書いてあります。

 「笑い」は、声を立てる大笑いから、口元だけの小さな微笑みま
で幅広く使われるが、「笑み」は、声を立てないでにっこりするだ
けである。

 用法としては、「笑いを浮かべる」「笑みを浮かべる」と「浮か
べる」とならどちらも使える。

 「止まらない」のと「人から受ける」のは「笑い」だけで、「絶
やさない」のと「満面に浮かべる」のは「笑み」だけとなっていま
す。

 3、大野晋・浜野正人著「類語国語辞典」(角川書店)は、「笑
い」の使い方としては、「口元に笑いを含む」「笑いが止まらない
」「人の笑いを買う」を挙げています。「笑み」の方は、「口元に
笑みを浮かべる」「顔に笑みが広がる」の2つです。

 4、小学館の「現代国語例解辞典」と三省堂の「新明解国語辞典
」には「満面に笑みをたたえる」が載っています。

 5、学研の「国語大辞典」には「蒼い顔に笑みを作って挨拶した
」という田村俊の文例が載っています。

 6、たくさんの用例を載せているのは教育社の「現代国語用例辞
典」です。

 「満面に笑みを浮かべて」「静かに笑みをたたえた母の顔」「会
心の笑みをもらした」「顔には笑みがあふれ」「笑みがこぼれてい
た」「笑みを含んだ表情」「少女たちは笑みを交わして」「顔から
見る間に笑みが消えていった」。

 7、暫定的な結論。

 「満面の笑みを浮かべる」という言い方はこれまではなかった。
 (2007年06月18日)