すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

プロが「ブログのためだけ」に取材して一次情報を流すってありえるのか?

2005-04-23 12:38:34 | メディア論
 こないだひさしぶりに渋谷へ行ったら、無料喫煙スペース「渋谷カフェ」っていうヘンなお店を見つけた。「たばこを吸う人はここでねっ♪」てな半・公共スペースらしい。

 で、それを見た私はあれこれ思索したあげくに、「ジャーナリズムとしてのブログの限界」を悟るに至ったのでありましたとさ。

 いったいどういう関係があるのかって? まあ話は最後まで聞きなさいよ。

 まず店の女の子(たぶんバイト)に軽くインタビューしてみた。するとココんちはもう1年半も前にオープンしたらしい。なら、さんざんマスコミに取り上げられてるんだろうな、と思い「渋谷カフェ」で検索してみると……なんと一件も出てこない。

 で、たばこを1日3箱吸う時代遅れな私としては、おそるおそるブログに書いてみることにした次第だ。

 さて「渋谷カフェ」である。店内にはなんとCDの新譜がヘッドホンで聴けるコーナーが、壁面一面を使って設置されている。なかなか気が利いてるじゃないか。さらにはいかにも渋谷にいそうなおねえさんが、気だるくたばこを吸ってたりして目の保養にもなっていい(謎)。

 ただし店じゅうがとんでもなくたばこ臭いのが玉にキズだ。1日3箱吸う人間のクズな私が「臭い」って感じるんだから、吸わない人はホント迷惑だろうな。でも吸っちゃうけど。

 店の人によると、なんでもココはJTが運営してるらしい。JTサンも大変ですな。ここまで嫌煙ムーブメントが一般的になると。

 だってこれって、たとえるならば……。

 自分の会社じゃ「越前ガニ」売ってる。弊社は越前ガニの専門店である。

 なのに世間では「越前ガニを食うとガンになる」って話になり、レストランや喫茶店には「禁・越前ガニ」スペースはできるわ、「道を歩きながら越前ガニ食べちゃいけません」って規則ができるわ、って状態なわけでしょ(問題ちがうよ)。よくつぶれないよなあ、JT。いやまじめな話。

 さらに調べてみると、JTがやってるこの喫煙スペース、秋葉原とか六本木とかあちこちにあるらしい。こりゃ現代の世相としてネタ的に非常におもしろい。JTのこの企業戦略を前フリにし、たばこをめぐる日本文化論が展開できそうだ。

「日本の禁煙ブームなんて、しょせんアメリカ様のマネゴトじゃないか? 日本人は『アメリカ=世界』と思ってるから嫌煙は世界的な現象だとカンちがいしてるけど、フランス人なんてガンガンたばこ吸ってるじゃん」みたいなことが言えれば、いい原稿になりそうである。

 つまりたばこをとば口にし、日本という国の成り立ちにまで問題を敷衍して考察するわけだ。

 そこでますは喫煙スペースを企画した意図とか、いまの嫌煙ムーブメントをあんたらはどう思うか? あたりをJTに正式に取材しようかと思ったが、なんかめんどくさくなってやめた。ブログで取材の結果をレポートし、分析しても儲からないしなあ。

 商業主義にどっぷりつかり、堕落しきった分泌屋、もとい、文筆屋としては、これはどうもやる気になりまへん。たとえて言えば、医者が無料で患者を治療するようなモンかも。んー、そんなリッパなもんじゃないな。八百屋のオヤジが、「なんか今日はやけに気分がいいやっ。ええい、大根はタダだっ。もってけぇドロボー!」って3日おきに継続してやらかすのに近いか。

 や、そこでもし仮に取材したら、それこそ「真のパブリック・ジャーナリスト」たらいうモンになるのかもしれないけど。

 というかよく考えたら実際のところは、実入りの問題よりも単に「なんとなくめんどくさくなった」っていう気まぐれな理由のほうがデカい気がしてきた。で、その「めんどうくささ」を乗り越えるモチベーションになるものが、「収入になること」だったり「世の中に重要な問題提起をする充実感」だったりするわけだ。つまりそれがあれば最初から、「めんどうくさい」なんて感じないのである。

 たとえば仕事で取材したネタのうち、ヤバくて媒体に書けなかった部分、またはスペースの関係で書き漏らしたことをブログに書く。あるいはそれらの取材をもとに、仕事としての原稿には書かなかった「もっと深い分析」や「評論」、「二次報道」をブログでやる。これならイケるだろう。

 だが「ブログのためだけ」にプロがハナから手弁当で取材して書く、ってありえるんだろうか? ブログを有料にするなら話は別だが、そんなビジネスモデルが成立しないのはもうとっくに証明されてるし。

 まあライブドアPJみたいなアマチュアの人たちが「趣味」で取材して書く、あるいはその無料取材を足がかりにし、モノカキ業界でこれからのし上がっていこうって人なら別かもしれないが。

 てなわけで渋谷の無料喫煙スペースを見て、独自取材をガンガンかましながら一次情報をブログにアップしていく新しいジャーナリズムのあり方、たらいうもんのはかない限界を見た私でありました。

 まあそのうちやる人も出てくるんだろうから、その人に期待しよっと。

(追記)文意が正確に伝わらないんじゃないか? と考え、一部を加筆修正した(4/25)。

(追記)第1稿の文中で「私が連想した」と書いたSF作品は、眉村卓氏のものではなく筒井康隆氏の「にぎやかな未来」であることが判明した。また内容についても前後の辻褄が合わなくなるため、該当する部分を段落ごと削除した。眉村卓氏、筒井康隆氏に謹んでお詫び致します(5/3)。

●この記事がおもしろかった人はクリックしてちょ♪

人気blogランキングに投票!
コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 偏った視点でブログを目利き... | トップ | プロが取材してブログに書く... »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Blogとジャーナリズムは違う気もする (JEFF)
2005-04-24 18:29:01
面白い考察ですね。

「眉村卓がかなり昔に書いてたショート・ショート」が気になります。なんと言う作品か分かりますか?

僕も読んでみたいです。

ところで、最近、ジャーナリストとブログと言う組み合わせは有りだと思うのですが、ブログとジャーナリズムという組み合わせは違うような気がしています。

というか、日本では無い組み合わせじゃないでしょうか。

先日、フジテレビでブログを意識したテレビ番組をやっていましたが、「ああ、これがブログの一般認識か」と思わされ、ガッカリしました。

独自取材をしても、「じゃあ、その記事をこちらで書いたらお金出します」と言われたら、多くはブログではなくてそっちに記事書くでしょうね。

はかない限界はもっと地べたに近いところに原因があるような気がします。

と、言いますか、最近思うのです。

「ブログって、道楽じゃない?」って。プロがそれをやったら、その瞬間からそれは道楽になるのではないかって。
返信する
ああ、言葉はなんでもいいんです (松岡美樹@管理人)
2005-04-24 19:23:02
JEFFさん、こんにちわ。



>「眉村卓がかなり昔に書いてたショート・ショート」が気になります。

>なんと言う作品か分かりますか?



ごめんなさい。私も思い出せなくて、エントリー中でもタイトルを書けませんでした。

私も気になってます(笑)。

ウチの押入れの奥深くにあるはずなんですが、探し出す気力がなくて…(^^;



>ブログとジャーナリズムという組み合わせは違うような気がしています。



ええ。ふさわしい言葉がほかに思いつかなかったんで、

たまたま「ジャーナリズム」と書いただけです。

言葉はなんでもよくて、

要は、「取材して一次情報を掘り起こす行為」ということですね。



>独自取材をしても、「じゃあ、その記事をこちらで書いたらお金出します」と言われたら、



>多くはブログではなくてそっちに記事書くでしょうね。



うむ。ただ、ひとつ可能性はあることはあると思うんです。

それは、商業媒体だと「これは書いちゃいけない」みたいな制約があるので、

「オレは本当に書きたいことはブログに書くよ」ってパターンです。

こういうブログがふえると、すごくおもしろいことになりそうだな、とは思います。



エッセイストやコラムニストなど、いわゆる「プロ」のブログは、

少なくとも私が知ってる範囲ではおもしろいものが少ないようです。

それは彼らのブログが、以下のどちらかの使われ方だからです。



1)本業を宣伝するために作った(販促用ブログ)

2)はやり物だからとりあえず作ったが、ロクに更新もしてない



で、上記のようなパターンじゃなくて、

「本当に書きたいことだからブログに書く」

って形態がふえるとおもしろいなあ、と。

ただしブログのためだけにわざわさ取材までするのか? というと、

どうなのかな、とは思いますが。



あと、「ブログは道楽」というのは、

おっしゃる通りかもしれません。

けっこうウケました(笑)



それではまた。
返信する
Unknown (kan)
2005-04-26 00:26:30
はじめてコメントします。

実はブログの為に取材してる人います。

参考までにと思いコメントしました。



GripBlog

http://www.surusuru.com/news/
返信する
興味深いブログですね。 (松岡美樹@管理人)
2005-04-27 00:38:40
kanさん、初めまして。



貴重な情報ありがとうございます。

興味深いブログですね。



今週は仕事が立て込んでいますので、

時間ができたら自分の考えをまとめて

コメントをお返しするか、

新しくそれ関連のエントリーを立てます。



取り急ぎ。多謝です。

返信する
Unknown (marcms)
2005-04-27 10:53:52
おもしろいですね。参考になりました。
返信する
取材している人、いるんですね (JEFF)
2005-04-27 12:23:51
実際に取材している人はいるんですね。

そういえば、僕の身近にもいた様な気も、と考えてしまいました。

プロがパーソナルな立場でBlogを書くことの難しさを痛感させられる様な事件が、今週ラグビー界で起こりました。

ラグビーの著名人が書いたBlogに対し、中傷コメントがいくつかついたという、よくある話なのですが、その中に「ラグビージャーナリストというものが、その程度の取材でものを書くな」という内容が含まれていたのです。

こう言うことが続くのであれば、なるほど、トラックバックしか受け付けない、もしくは、更新しなくなるということも頷けるような気がします。
返信する
ネット校閲部 (師の愛)
2005-05-01 04:27:40
なんでこんなハンドルにしたんだ?<自分

ともあれ、引用されている作品は眉村卓でなくて筒井康隆の「にぎやかな未来」ではないかと。

手弁当で修正(w
返信する
ご指摘、ありがとうございます。 (松岡美樹@管理人)
2005-05-03 00:47:13
>師の愛さん



調べたところ、確かに筒井康隆氏の「にぎやかな未来」でした。ご指摘、ありがとうございます。
返信する

メディア論」カテゴリの最新記事