栃木市出身のプロ野球選手、巨人軍の沢村投手の不調の理由が長胸神経麻痺と診断され、その原因が「外的要因によるもの」で、トレーナーから受けた鍼治療による可能性が考えられるとの発表がありました。
巨人軍は1996年にも球団トレーナーが主力選手に肺気胸を発症させる刺鍼事故を起こしており、今回が医療事故と断定されれば同一球団による二度目の出来事となります。
『【巨人】球団が沢村に謝罪…施術ミスで神経麻痺』(スポーツ報知)
長胸神経は第5~第7頸神経から胸部の側面まで伸びています。肩甲骨を前外方に引き、肩甲骨が固定されていると肋骨を引き上げる作用がある前鋸筋を支配する神経です。
図の「LONG THORACIC」という表記が長胸神経です。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E8%83%B8%E7%A5%9E%E7%B5%8C)
肩や頸部の治療で深く鍼を刺入したことが事故の原因と思われますが、仮に鍼先が神経に近付いただけでもかなり強烈な痛みや響き感が起こるはずです。今回のケースは神経損傷ですから神経に直接鍼先が当たった、もしくは刺さったと考えるのが妥当です。普通に考えればそうなる前に耐えがたい苦痛を訴えるはずですけど…スポーツ選手の強靭な精神力でそれを我慢してしまったのかも知れませんが、通常ではちょっと考えられない事態です。
そんな理由もあり、そもそも鍼治療による神経損傷という見解が正しいのか?という疑問も残ります。しかし外的要因による様々な可能性を消去した結果、鍼による医療事故である可能性が残るという判断になったのでしょうから、実際に日常的にそういう施術を行っていて、ある日突発的な事故により神経を損傷してしまったのだと思います。
長胸神経に麻痺が起こると肩甲骨を上手く動かせなくなります。圧迫による麻痺なら数ヶ月程度で回復することが考えられますが、神経損傷の場合は回復が非常に遅いため、今シーズンはもちろん来シーズン中に復帰できるかどうかも微妙なところです。場合によっては沢村投手の選手生命に係わる重篤な状態であると推測されます。
では、なぜこのような事故が起こるのでしょうか?
一番の原因はもちろん、鍼を深く刺したことです。鍼を深く刺すと独特の強い響き感が得られ、これを「気持ちがいい」「効いている」とする患者や術者が非常に多く存在します。
サービス精神が高い術者は刺鍼がどんどん深くなる傾向にあるという話を聞いたことがあります。「もっと気持ちよくして欲しい」「もっとサービスして欲しい」という患者の意識、「もっと気持ちよくしてあげたい」「もっと治してあげたい」という術者の意識が重なると、特に経験が浅い術者の場合は鍼の深さとなって現れてしまうことがあります。
要するに、鍼灸の医療事故は経験が浅い「いい人」が起こすのだそうです。
「良くしてあげたい」「治してあげたい」という意識で刺激を増やしたり鍼を深く刺すことが、必ずしも患者にとって有益であるとは言えません。
患者の身体を預かり、苦痛や不安を取り除いたり軽減させるのが我々の役割りです。深い鍼がよく効くかというとそうとは限りませんし、逆に浅い鍼でもきちんと治せる学と術を身に付けることが、一番の医療事故防止につながります。
鍼の深刺しによる事故が起こるのは、近年爆発的に増えた鍼灸学校が抱える教育の質の低下にも問題があると思っています。我々が通っていた二十数年前とは時代が変わり、今は多くの鍼灸学校が国家試験予備校と化しており、鍼灸治療の本質である古典鍼灸をしっかり教育している鍼灸学校の割り合いは減っているような気がします。
科学全盛の現代において、古典鍼灸は若い術者から敬遠されつつあるのが実情。でも今一度、鍼灸教育は原点に返らなければならない時期が来ているように思います。
若い術者のみなさん、ぜひ古典を読んでください。古典鍼灸に親しんでください。
巨人軍は1996年にも球団トレーナーが主力選手に肺気胸を発症させる刺鍼事故を起こしており、今回が医療事故と断定されれば同一球団による二度目の出来事となります。
『【巨人】球団が沢村に謝罪…施術ミスで神経麻痺』(スポーツ報知)
長胸神経は第5~第7頸神経から胸部の側面まで伸びています。肩甲骨を前外方に引き、肩甲骨が固定されていると肋骨を引き上げる作用がある前鋸筋を支配する神経です。
図の「LONG THORACIC」という表記が長胸神経です。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E8%83%B8%E7%A5%9E%E7%B5%8C)
肩や頸部の治療で深く鍼を刺入したことが事故の原因と思われますが、仮に鍼先が神経に近付いただけでもかなり強烈な痛みや響き感が起こるはずです。今回のケースは神経損傷ですから神経に直接鍼先が当たった、もしくは刺さったと考えるのが妥当です。普通に考えればそうなる前に耐えがたい苦痛を訴えるはずですけど…スポーツ選手の強靭な精神力でそれを我慢してしまったのかも知れませんが、通常ではちょっと考えられない事態です。
そんな理由もあり、そもそも鍼治療による神経損傷という見解が正しいのか?という疑問も残ります。しかし外的要因による様々な可能性を消去した結果、鍼による医療事故である可能性が残るという判断になったのでしょうから、実際に日常的にそういう施術を行っていて、ある日突発的な事故により神経を損傷してしまったのだと思います。
長胸神経に麻痺が起こると肩甲骨を上手く動かせなくなります。圧迫による麻痺なら数ヶ月程度で回復することが考えられますが、神経損傷の場合は回復が非常に遅いため、今シーズンはもちろん来シーズン中に復帰できるかどうかも微妙なところです。場合によっては沢村投手の選手生命に係わる重篤な状態であると推測されます。
では、なぜこのような事故が起こるのでしょうか?
一番の原因はもちろん、鍼を深く刺したことです。鍼を深く刺すと独特の強い響き感が得られ、これを「気持ちがいい」「効いている」とする患者や術者が非常に多く存在します。
サービス精神が高い術者は刺鍼がどんどん深くなる傾向にあるという話を聞いたことがあります。「もっと気持ちよくして欲しい」「もっとサービスして欲しい」という患者の意識、「もっと気持ちよくしてあげたい」「もっと治してあげたい」という術者の意識が重なると、特に経験が浅い術者の場合は鍼の深さとなって現れてしまうことがあります。
要するに、鍼灸の医療事故は経験が浅い「いい人」が起こすのだそうです。
「良くしてあげたい」「治してあげたい」という意識で刺激を増やしたり鍼を深く刺すことが、必ずしも患者にとって有益であるとは言えません。
患者の身体を預かり、苦痛や不安を取り除いたり軽減させるのが我々の役割りです。深い鍼がよく効くかというとそうとは限りませんし、逆に浅い鍼でもきちんと治せる学と術を身に付けることが、一番の医療事故防止につながります。
鍼の深刺しによる事故が起こるのは、近年爆発的に増えた鍼灸学校が抱える教育の質の低下にも問題があると思っています。我々が通っていた二十数年前とは時代が変わり、今は多くの鍼灸学校が国家試験予備校と化しており、鍼灸治療の本質である古典鍼灸をしっかり教育している鍼灸学校の割り合いは減っているような気がします。
科学全盛の現代において、古典鍼灸は若い術者から敬遠されつつあるのが実情。でも今一度、鍼灸教育は原点に返らなければならない時期が来ているように思います。
若い術者のみなさん、ぜひ古典を読んでください。古典鍼灸に親しんでください。
貼る針はシールから垂直にまっすぐ下向きに付いているタイプだと思われます(円皮鍼といいます)。通常、痛みや違和感がある際はすぐに使用を中止する(剥がしてしまう)よう説明があるはずです。もしまだ刺さったままでしたら、ゆっくりテープを剥がし、鍼を取り除いた方がいいと思います。剥がしたあとは消毒をお忘れなく。
どのような理由で痛みが出ているのかはわかりませんが、①毛穴に刺入されていた、②たまたま痛点に刺さっていた、③血管の外膜に接触or刺さっていた、あたりが原因として考えられます。0.9mmというごく浅い部分へのアプローチですから、神経系への接触は考えにくいと思います。
痛みや違和感は長くは続かないとは思いますが、ご心配の際はお早めに施術者へご相談ください。
お大事になさってくださいね。
刺入時に強い痺れや痛みを感じていなければ、神経に刺さったというより神経の近くに鍼が刺入されたのかも知れません。筋収縮によって神経への刺激となったか、もしくは出血があったのなら血管壁が損傷したことによる痛みなのかも知れませんね。
すべて推測の域を出ませんが、とにかくお大事になさってくださいね。
なお、古典鍼灸の場合はそこまでの刺鍼はまず行いません。本来の鍼灸治療の原型である古典鍼灸は、ある意味で施術の安全性が担保されているとも言えると思います。