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宮崎信行の国会傍聴記 ニュースサイト

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が3党協議を現地で取材したり国会中継を見たりして雑報を書いています。

青春民主党「行革実行法案」を提出、内閣「共済年金3階廃止」法案決定 まさに一体改革へ

2012年04月14日 10時59分35秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 民主党行政改革調査会(中野寛成会長)の衆院側主要メンバーは2012年4月13日(金)、「行革実行法案(行政改革の総合的かつ集中的な実行に関する法案)(180衆法おそらく7号)」を提出しました。政府も同日、「被用者年金(厚生年金・共済年金)一元化のための厚生年金保険法などの改正法案(180閣法たぶん78号)」を決定しました。行革実行法案は衆院内閣委員会(荒井聰委員長)、被用者年金一元化法案は新設の「一体改革特別委員会」に付託される見通し。

 行革実行法案の提出に立ち会ったのは中野寛成さん国民新党の中島正純国対委員長に加えて、階猛さん(しなたけし、盛岡市など岩手1区)小川淳也さん(高松市など香川1区)緒方林太郎さん(北九州市八幡など福岡9区)後藤祐一さん(厚木市など神奈川16区)空本誠喜さん(府中町など広島4区)玉木雄一郎さん(さぬき市など香川2区)藤田憲彦さん(大田区の多摩川寄り部分の東京4区)花咲宏基さん(総社市など岡山5区)。うち、緒方さん以下6人は1期生。11期生で元幹事長の中野会長によると「玉石混淆だよ」だけど「玉は間違いなく、いる。」そうです。

 
[写真]野田佳彦代表(総理)も出席した民主党行政改革調査会の初会合。2010年12月14日(水)国会内で。筆者撮影。

 党行革調は昨年12月に発足後、岡田克也会長、中川正春会長、中野寛成会長と乾坤一擲のショートリリーフを重ねて会期末まで9週間の段階で法案提出にたどり着きました。同じく衆院内閣委員会に付託されている「公務員制度改革関連4法案」(177閣法74号~77号)の審議も含めて公務員制度改革担当大臣は岡田さんから中川さんに交代する予定。これについては国会審議の都合から、岡田さんが野田佳彦総理に申し入れたもの。岡田さん(7期58歳)と正春さん(5期61歳)は双子のようなもので、三重2区出身で三重3区選出の岡田副総理は2月10日の会見で「選挙ではずっと中川正春というふうに書き続けているわけでございます」と有権者として「中川正春」に投票していることを明らかにしています。同時刻に別々に、内閣委員会で中川大臣、一体改革特別委員会で岡田副総理が答弁しても、息はぴったり、「双子」と言っていいでしょう。


[写真]岡田副総理と「双子」の中川正春・内閣府特命担当大臣(公務員制度改革担当の補職辞令が来週に発令の見通し)

●「被用者(厚生・共済)年金一元化法案」で共済年金の3階廃止が決定、見えてきた「社会保障の全体像」

 「被用者年金一元化法案」は会社員が毎月3万~4万円ぐらいの保険料(労使折半なので実際には6万~8万円ぐらい)を給与天引きされている「厚生年金」と公務員が給与から天引き(もちろん財源は税金)されている共済(共済年金)を一元化し、「官民格差」である共済年金の3階部分(職域部分)の廃止することを附則第2条に盛り込んだ法案。公務員共済、私学共済加入者も今後は厚生年金に入ることになります。

 
[画像]厚生年金と共済年金の1階、2階、3階のイメージ。厚労省ホームページの提出法案の概要(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/180-54.pdf)から部分的に引用。

 上の画像を見てください。厚生年金は本人分が老齢基礎年金が月6・5万円、老齢厚生年金が9・9万円となっています。これが1階、2階。それと配偶者分の老齢基礎年金が月6・5万円となります。基礎年金は国民年金と同額です。共済年金も老齢基礎年金は月6・5万円、退職共済年金が9・9万円なので、1階2階とも厚生年金と共済年金は同額ということになります。配偶者分も含めて保険料を480ヶ月(40年間)納めた人なら、すべての年金加入者の基礎年金受給額は同額です。ただし原資である積立金のうち、基礎年金は保険料積立金と毎年の国庫負担(税投入)が半額ずつです。国庫負担分が確保しきれないので、今年度は「年金交付国債」(予算書は成立、法案は審議中)に頼ることになっています。それはさておき、共済年金には3階として「職域部分」があり、これが月1・9万円になります。この3階の存在自体が「官民格差」です。よく勘違いする人がいますが、日本航空やTBSなどで減額が話題になった「企業年金」は3階といえます。これは会社が日本生命などと組んで、ほぼ強制的に社員を加入させ、保険料を天引きしている制度です。これにより、企業は内部留保を増やし設備投資などにお金を回せます。ちなみに私が勤めていた株式会社日本経済新聞社には企業年金はありませんでした。ですから日航が倒産前に企業年金の減額を求めて、受給者に必死に電話攻勢をかけるシーンが流れましたが、老後の生活の最低保障とはまったく関係ない話です。ですから、この3階の廃止こそが官民格差の是正ということになります。その廃止がすでに法案に盛り込まれたことで、これは遅ればせながら、日本政治としては画期的なことです。
 被用者年金一元化法案の附則第2条は次の通りです。

[被用者年金一元化法案の附則第2条 引用はじめ]

この法律による公務員共済の職域加算額(第二条の規定による改正前の国家公務員共済組合法(次項及び次条において「改正前国共済法」という。)第七十四条第二項に規定する退職共済年金の職域加算額、障害共済年金の職域加算額及び遺族共済年金の職域加算額並びに第三条の規定による改正前の地方公務員等共済組合法(以下この項及び次条において「改正前地共済法」という。)による年金である給付のうち改正前地共済法第七十六条第二項の規定により支給の停止を行わないこととされているものをいう。次条において同じ。)の廃止と同時に新たな公務員制度としての年金の給付の制度を設けることとし、その在り方について、平成二十四年中に検討を行い、その結果に基づいて、別に法律で定めるところにより、必要な措置を講ずるものとする

[色づけは筆者。引用おわり] 

●石橋湛山の東洋経済新報社編集局長が有識者会議、中間とりまとめは6月中下旬か。

 この「平成二十四年中に検討を行」うため、政府は2012年4月13日(金)、「共済年金職域部分と退職給付に関する有識者会議」を設け、4月26日(木)総理官邸4階大会議室で初会合を開くことを決めました。メンバーは東洋経済新報社取締役・編集局長の田北浩章さん、読売新聞東京本社論説委員の保高芳昭さん、学習院大学法学部教授の森田朗さんら10人。岡田副総理は4月13日の記者会見で、「2ヶ月ぐらいで中間とりまとめをして欲しい」「職域部分の法案は臨時国会になるんでしょうが」とのスケジュール感を示しました。

 岡田さんは霞が関の購読新聞・雑誌の3割以上削減で財政立て直しの意識改革をしています。その辺で、マスコミに冷たくされていますが、日銀と関係が深い東洋経済と、社会保障財源安定化(消費税率改善)を社論とする読売新聞の論説委員を取り込んだ格好。

 東洋経済はこの週の号で、「日本人が十年後に食える仕事」という巻頭特集をしており、震災後1年を過ぎた日本人の経済心理を見事についています。巻頭特集デスクや週刊東洋経済副編集長だった人材では、公明党広報局長で参議院法務委員長の西田実仁さん(埼玉選挙区、2016年改選)もいます。


[写真]元週刊東洋経済副編集長の西田実仁・公明党広報局長、クリックすると大きな画像になります。

 東洋経済は「会社四季報」でもおなじみです。年4回(季刊)、会社四季報と同じ日に発売される「日経会社情報」を日経横浜支局記者時代に私も書いていたことがあります。現在、私は個人では、会社四季報を2年に1冊程度のペースで揃えています。

 石橋湛山(いしばし・たんざん)首相は東洋経済記者・社長出身で、ライバルの日経新聞上海支局長だった石田博英(いしだ・ひろひで、いしだ・バクエイ)さんを内閣官房長官にすえました。石橋さんがジャーナリスト時代、東洋経済新報1945年8月25日号に書いた社論は、有名です。これは震災後日本にも当てはまるのではないでしょうか。

 [石橋湛山が書いた東洋経済新報1945年8月25日号「社論」から抜粋引用はじめ]

 更生日本の針路

  更生日本の門出
      前途は実に洋々たり

 (略)

 ソ連までも新たに敵に加わり、あまつさえ恐るべき原子爆弾の出現をさえ見るに至った。もしこのままに戦争を継続するにおいては、我が国はおそらくナチドイツが蒙った以上の損害を受け、国土は徹底的に破壊され、一国としての政治的統一を喪うに至るであろう。もしそういう事になれば、光輝ある三千年の歴史を誇る国体護持も不可能に陥るや必然だ。故に指導者にして国家悠遠の大局に専念するならば、この際はたとい一時いかなる屈辱を忍ぶも停戦の勇断にいでねばならぬ。(略)

 世の中には、けだしこの事態を予想せざりし者多数なるべく、その余りに突如として到来せる急変に茫然自失せる者もあろう。悲憤の泪に狂う者もあろう。また中には前途をはなはだ悲観する者もあろう。しかし今はもちろん茫然自失し、手をこまねいておるべき折でなく、またいたずらに悲憤慷慨時を費やす場合でない。もしそれ我が日本の前途を悲観する如きは、従来国民に与えられた教養の不足のいたす所で、一面無理もない次第ながら、その無知ははなはだ憐れむべしといわなければならぬ。(略)

 しからばすなわちいかなる悪条件の下にも、更生日本の前途は洋々たるものあること必然だ。記してもって更生日本の門出を祝す辞となす次第である。

[引用終わり、引用元『石橋湛山評論集』257ページ~261ページ]

 大変なオプティミスト(楽観主義者)に感じます。

 野田総理は「政局より大局」と呼びかけています。自民党や公明党にはおごりがあります。それは民主党より自分たちの方が政治のプロだと考えていることです。民主党を見下していることです。「政治のプロ」発言で政権を失った首相もいました。こうやって民主党にも「玉石混交で玉の方が少ないけど、玉はいる」ことはハッキリとしています。

●きっちり!

 今週の国会。一部には予算成立で中だるみしていた議員もいたようですが、一般法案を仕上げるためにはきっちりやらなければいけない週でした。その点で、「野田・岡田民主党」はきっちり。

 参院農水委員会(小川勝也委員長)で参院先議の「国有林野の管理経営法改正案(180閣法50号)」が附帯決議付きで全会一致で可決しました。同委員会は「鳥獣被害防止法改正案」を参法として提出し、可決、衆院でも可決、成立しました。議案番号は180参法11号、法律番号は平成24年10号。今国会での参法成立はこの1本。で、メンバーは誰かと思うと、民主党側理事は郡司彰・元農水副大臣金子恵美さん(福島選挙区、来夏改選)。自民党側も山田俊男・シャドウ農林大臣野村哲郎シャドウ水産大臣と実力者がずらり。そして委員長として小川勝也さん(1995年新進党公認で北海道選挙区初当選3期17年)がそろっている。野田・岡田民主党と自民党のシャドウキャビネットメンバーでしっかりやっています。

 参議院内閣委員会では衆院送付の「新型インフルエンザ特別措置法改正案(180閣法58号)」を火曜日に趣旨説明を受け、木曜日に参考人質疑もやり、専門家の知見を吸収しました。委員長は岡田側近の元首相補佐官、芝博一さん(三重選挙区2016年改選)です。芝さんは神様にお仕えする仕事から議員になっていますからしっかりしています。この法案について、新型インフルに対して厚労大臣として陣頭指揮にあたった舛添要一・新党改革代表が参院で修正協議をしたいと表明しましたが、同党は内閣委員会に議席がないようですが、どうなるのか。

 参議院決算委員会(委員長は自民党の山本順三さん)は金曜日に平成22年度決算の省別審査(財務省、内閣府金融庁)をやりました。定例日は月曜日ですが、遅れ気味なので、金曜日でもドンドン開くようです。参議院決算委員会の与党理事は「予算・決算システムの透明化の抜本改革」の党の若手チームを切り盛りしている大島九州男さん(全国比例・来夏改選)らです。

 郵政見直し法案(郵政民営化法改正案)が衆院本会議で、民主党・国民新党、新党大地・真民主、自民党、公明党、社民党、新党きづな、たちあがれ日本の賛成で可決し、参院に送られました。これも主導したのは民主党筆頭理事の武正公一さん(浦和市など埼玉1区)です。来週にも参院総務委員会で審議され、武正さんらが参院で答弁に立ちます。第177通常国会(震災国会)以来、衆参の垣根が低くなっています。政権交代により、両院の委員会で答弁した政務三役経験者が与野党に増えたこともあるでしょう。衆議院であろうと、参議院であろうと、要は国会です。

 民主党の城島光力国対委員長(川崎市役所など神奈川10区)は木曜日の代議士会で、「国会の会期は折り返した。連休を除くと、あと8週間しかない。ぜひ連休前にしっかりと法案審議をしてほしい」と強調しました。この代議士会は、これに先立ち衆議院議員会館で会合を開いていた小沢グループが集団で遅刻するという見苦しい場面がありました。ただし、細川律夫・代議士会長(越谷・草加の埼玉3区)は「まだ集まりが悪いですけど、定刻なので始めます」と宣言し、小沢グループの到着を待たずにスタートを宣言しました。

 一体改革特別委員会が設けられることになりそうです。2005年の第162通常国会の「郵政民営化特別委員会」(二階俊博委員長)以来の大型委員会になりそうです。私は99%の確率で一体改革関連法案は今国会で成立すると考えております。今は申し上げませんが、根拠もあります。向こう20年、30年にわたって語り継がれる歴史に残る第180常会(第180回国会)になりそうな気配です。野田さん、岡田さん、中川さんは走りながら考えるしかありません。もちろん、ランニング・メイトも少数精鋭でそろえなければいけません。

 国家悠遠の大局に専念すれば、前途は実に洋々たり。

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