【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

橋下徹・大阪市長が国会に乗り込むも、維新の修正案は否決 地方自治法改正案と4次一括法案が衆委可決

2014年04月24日 16時21分30秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

[画像]参考人として意見を陳述する橋下徹・大阪市長、2014年4月24日、衆議院総務委員会、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

【2014年4月24日(木)衆議院総務委員会】

 橋下徹・大阪市長が国会に乗り込みましたが、維新提出の修正案は否決されました。

 地方自治法改正案(186閣法75号)と、「政令指定都市の行政区あらため総合区の区長を公選にする」とした維新の三宅博理事が提出した修正案が採決。維新の修正案は維新のみの賛成にとどまり否決されました。この後、政府原案には、維新も賛成し、各党が賛成(共産党は反対)し可決しました。これにより、都道府県・政令指定都市調整会議が設けられ、行政区が総合区に名称変更されることになります。ただ、維新の求めた政令市改革は骨抜きにされたと言えます。

 第4次地方分権一括法案(186閣法66号)も、政府原案が維新を含む各党の賛成(共産党の反対)で可決されました。あすの本会議で可決し、連休明けに参議院で審議される見通し。

 ◇ 

 おととい、安倍晋三首相入り審議が行われましたが、きょう参考人質疑が行われました。総理入り審議の後に、参考人質疑があるのは異例。

 急に決まったようで、日本地方自治システムの権威である、第30次地方制度調査会会長を務めた西尾勝・東大教授、上田清司・全国知事会副会長(埼玉県知事)、そして橋下徹・大阪市長の3人。

 まず西尾さんが「政令指定都市に新設される総合区の区長の公選とすべきかどうかは、引き続き検討すべきである、とするのが第30次地制調の結論だ」と牽制しました。

 橋下さんは「総合区長公選制を、すべての政令指定都市に広げてほしいと言ってるのではなく、選択肢を増やしてほしい。法律上明らかに無理でないものは認めてほしい」として、大阪市単独での区長公選制に向けて、特別な措置を求めました。

 そのうえで、「人口が近い、広島県には23人の公選首長がいるのに、大阪市には公選首長は1人だけ。正直な話、仕事は私1人では回らない」と訴えました。

 この後、各議員からの質問。自民党の土屋正忠さんは東京都の歴史をひもときながら、「少し急ぎ過ぎだ」と釘をさすと、橋下さんは「国際的な都市間競争が激しくなる中、大阪市は市域が狭いので、(総合区に法人格を得て公選首長を置かないと)都市経営ができない」としました。

 公明党の浜村進さん(比例近畿ブロック選出)からは「ていねいな議論が必要だ」。橋下市長は「道州制は経済成長と都市自立のためにすぐにやらなければならない。地方交付税をゼロにするくらいの心構えが必要だ」としました。

 民主党の原口一博さんの質問に対して、橋下さんは「国会は今まで、いかに地方を助けるかを議論してきたが、いかに地方に責任を負わせるかを議論すべきだ」としました。さらに民主党政権が法案を閣議決定した国交省、経産省、環境省の出先機関の関西地域連合への移譲を、自民党政権も進めるよう求めました。

 この後、維新の会の井上英孝さん(大阪1区)の質問。維新の修正案は、「区長公選制にしても区議会はおかず、その区選出の市議会議員が属する区ごとの常任委員会を設ける」という案ですが、どうやら、これは、橋下さんの大阪市・大阪市議会で置かれた状況が厳しいことから出てきた窮余の策のような雰囲気が国会でも出てきました。橋下さんは「改正法案では、区ごとの常任委員会の設置が必置規制になっていないが、法人格の無い自治体には権限を渡せません。内閣法制局が、区長公選制は認められない、と言っているようだが、政治判断をお願いしたい」と語りました。

 長く国会を見ていますが、同じ党同士の質疑応答のやりとりで、論陣が崩れていくというパターン。新興勢力のしんどさ。

 次の質疑者。佐藤正夫さん(みんなの党)は「(大阪市以外の)政令市から、(維新修正案のように)こうやって欲しいという声は上がっていない。ちょっと拙速だ。大阪市には区長公選制ではなく、解体して関西州になるくらいの改革に向けてもっと吠えてほしい」と語りました。また、ここで、修正案の中で、市長が区長をリコールにかけられることが分かりました。首長のリコールは有権者の一定数以上の署名でかかることになりますが、なぜか、区長公選制では、大阪市長が区長のリコールを直接、有権者に問えるそうです。これはいくらなんでも独裁的。橋下さんもここをつかれるとしどろもどろになってしまいました。

 参考人質疑の後、短時間の締めくくり質疑を経て、採決。

 維新提出の修正案は維新のみの賛成少数で否決されました。

 これで、「区長公選制」はおそらく2016年の次期国政選挙前には実現せず、維新としては理論の再構築が必須となりました。そして、やはり国会では、過半数を取らなければ法律改正ができないという当たり前のような現実が突きつけられ、大阪維新の会・日本維新の会にとって存在意義を問われる局面になったと考えられます。

 この後、地方自治法改正案、第4次地方分権一括法案とも、政府原案が維新を含む各党の賛成(共産党の反対)で可決されました。あすの本会議で可決し、連休明けに参議院で審議される見通し。 


[画像]参考人として議員の質問に答える、西尾勝・東大教授(第30次地方制度調査会会長)。

 なお、改正法案のうち、連携協約について、西尾先生は「広域連合や一部事務組合と比べて脱退しやすい」としたうえで「課税権など自治の根幹は、連携協約になじまない」としました。

 共産党の塩川鉄也議員から「平成の大合併について総括してほしい」と質問され、西尾先生は「私がトップを務めた研究所の若い研究員たちがまとめたところ、合併に参加しなかった基礎自治体の財政が好転している事例もみられる。ただ、評価は時期尚早だ」としたうえで、「幕引きをしたものとして、両面の評価があるのは承知している」と率直に語りました。

 塩川議員は、中核市と特例市の「統合」について、「保健所の運営ができないと苦情を訴えている特例市もある」と指摘しました。

 新藤義孝・総務大臣は「人口減少の中で、人口を集め、定住するための現状を改善する改正地方自治法だ」との考えを示しました。第186通常国会では、総務省、国交省、経産省提出の法案は、コンパクトシティー作りに徹している感じがあります。

 かなり急に決まったと思われる参考人質疑なのに、原口一博さんと上田清司さんの新生党・民主党コンビの復活はうれしかったです。日本のために、衆議院本会議場の同じ会派の席で、我ら羽田ファミリーが日本のために貢献できるように、席を並べてほしいものです。

 委員会は、行政不服審査法抜本改正3法案(186閣法70~72号)について、新藤義孝総務大臣から趣旨説明を聞いて、次回は連休明けの2014年5月8日(木)午後1時から委員会を開くことにして、散会しました。

関連エントリー

維新の三宅博さんが「政令市の区長公選制」の修正案提出も否決の公算高まる 地方自治法改正案 衆・総務委
国会で、地方自治法改正案、地方公務員法改正案の審査進む きらり光る、原口一博ネクスト総務大臣
もはや合併ではない 「連携協約」で自治体相互補完 地方自治法改正法案、第186通常国会に提出へ

中核市・特例市一本化の地方自治法改正法案、第186通常国会に提出、川端答弁実現へ


[お知らせ1 はじめ]
この無料ブログの姉妹版として、有料版の「今後の政治日程by下町の太陽・宮崎信行」を発行しています。

2009年からのロングランの有料会員制ブログに加えて、
2014年4月、メルマガ版(メールマガジン版)を創刊しました!

購読料は、どちらも、月800円(税込864円)となります。
内容は同じですが、ソーシャルネットワークのスタイルにあわせて、会員制ブログ版、メルマガ版、あるいは両方のご購読お願いします。
自動継続のため、安定した収入源として、こちらの無料ブログを6年以上続けられる原動力となっております。 

今後の政治日程by下町の太陽(会員制ブログ版)

購読方法はシステムを提供している「レジまぐ」(メディア・インデックス社)へお問い合わせください。

[おわり]

[お知らせ2 はじめ]

「国会傍聴取材支援基金」を設けています。交通費、資料代、傍聴券をとってもらっている議員事務所への些少な茶菓代に充てたく存じます。日本唯一の国会傍聴ブログの継続にご協力ください。半年に1回、会計報告もしております。

「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

どうぞよろしくお願いします。

[おわり]

[お知らせ3 はじめ]

このブログは次の各ウェブサイトを活用して、エントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

民主党ニュース(民主党ウェブサイト)

goo 政治ニュース

インターネット版官報

[おわり]

tags 宮崎信行
http://tvtopic.goo.ne.jp/search/search.php?MT=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E4%BF%A1%E8%A1%8Chttp://p-search.kantei.go.jp/ja_kantei/search.x?q=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E4%BF%A1%E8%A1%8C&ie=UTF-8&page=1&submit.x=-1110&submit.y=-52&submit=%E6%A4%9C%E7%B4%A2

http://nsearch.cao.go.jp/cao/search.x?q=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E4%BF%A1%E8%A1%8C
http://p-search.kantei.go.jp/ja_all/search.x?q=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E4%BF%A1%E8%A1%8C&ie=UTF-8&page=1&submit.x=0&submit.y=0&submit=%E6%A4%9C%E7%B4%A2
http://regimag.jp/b/sample/list/?blog=65&category=127
http://regimag.jp/sys/tag/contents_list/?tag_id=1215



最新の画像もっと見る

コメントを投稿