【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

インターネット解禁年の瀬選挙、負けたのは中産階級者だ マネー資本主義に押し流された

2014年12月12日 21時18分40秒 | 第47回衆院選2014年12月アベノミクス解散

[画像]友愛会創立100周年記念切手の、シートの部分、2012年8月発行分、スキャニング。

 与党が勝った、野党が負けたというよりも、中産階級が負けた選挙という位置付けが、第47回衆院選(2014年12月14日)ということになるでしょう。

 それに先立ち、前回とほど同時期の年の瀬の選挙ながら、連合の地協のみなさんは、街頭演説会などで一生懸命にやっていらしたように思います。ハコの会合、遊説、電話掛けも同様だろうと考えられます。この時期は、民間の産別は、春闘の要求作りで忙しいのですが、地協のみなさんの活躍は2年前以上だったように、街頭で見受けました。

 さて、インターネット選挙運動が初めて解禁された衆議院選挙ですが、低調でした。

 過去2年間の前職議員の発言回数に関する集計表が東大教員から発表されると、2年間防災担当副大臣を務めた候補者から「質問できないのは当たり前」とのインターネット上の反応が出ました。

 「低投票率だと、自公が有利かもしれないから、投票に行こう」との呼びかけもインターネット上で盛り上がりました。ただ、無党派層の投票志向は、現時点で、自民党と民主党が拮抗しています。組織のある4党(自民党、民主党、公明党、日本共産党)が低投票率が有利なのは当然ですが、投票率と議席占有率の相関関係は分からない選挙です。

 今回の報道戦では、2年前と違い、「注目選挙区」の報道が増えました。これは2年前は不景気でテレビ局が経費節減をしていたのに対して、経費が使えるようになり、若手の訓練も含めてやったのでしょう。ただし、選挙区というのは、295分の1に過ぎず、総選挙後に出来上がる衆議院を占える1つの選挙区はありません。

 いきなり衆議院が解散されても、自分が何をすべきか分かっている、自民党地方議員と支援団体の職員(新規採用の終身雇用も多い)、民主党地方議員と地協の職員(ただし専従の入れ替わりはありうる)、創価学会員(世帯で入会)、日本共産党関係者(地区職員は終身雇用が多い)と、それ以外の違いが出たように感じます。

 お金があるけど、時間の自由と言論の自由がない。何をしていいかも分からない。高学歴中産階級者の敗北。

 私には、公示後に有権者同志が政策論争をしているなど、中産階級同士のつぶし合いにしか思えず、与党権力者の思いのまま。蜘蛛の糸にしか見えません。

 12日付朝日新聞天声人語のしめくくりは「未来をつくるのは若い世代なのだから。」となっているが、未来をつくるのは大人です。あるいは、互いに大学生のときから知っている友人が「なぜ亡命は高くつくのか」というネット記事を書いているが、だからどうしたとしか言いようがない。投票日は明後日だ。

  日本の労働運動の創始者は鈴木文治さんで、朝日新聞を辞めて、102年前に「友愛会」をつくりました。上の友愛会100周年記念パーティーのお土産にもらった切手セットにある通り、鈴木さんの活動を支えたのは、資本主義の父・渋沢栄一さん、民主主義の父・吉野作造さん、社会主義の父・安倍磯雄さん、国際協調主義の父・新渡戸稲造さん、女性社会運動の母(日本YWCA創始者)のマクドナルド女史ら、各界の第一人者が日本の中産階級である、大企業正社員の労働組合を支援しました。

 大正15年(男性だけの)普通選挙法が施行された選挙では、鈴木文治さんら、中・無産階級8名が衆議院議員に当選しました。すぐに暗殺された山本宣治代議士は、今でも「ヤマセン」と地元で尊敬され、ここは、前原誠司さんが連続して小選挙区で当選しています。京都2区は民主党公認の前原誠司さんのほかに、自民党の上中康司さん、日本共産党の原俊史さんも立候補しています。

 異次元の金融緩和に代表される、ITグローバルマネー資本主義に、知識階級であり民主主義に担い手である中産階級が丸ごと流される可能性があることは、先々週発売の解散後公示前の週刊金曜日にも書かせてもらいました。

 早大経済学で大学院を出て、中堅証券会社につとめ、取締役経済調査部長を経て、民主党政権の内閣官房内閣審議官をつとめ、下野後に日大教授になって水野和夫さんの著書「資本主義の終焉を歴史の危機」には次のような下りがあります。

 「グローバル資本主義は、社会の基盤である民主主義をも破壊しようとしています。」「市民革命以後、資本主義と民主主義が両輪となって主権国家システムを発展させてきました。民主主義の経済的な意味とは、適切な労働分配率を維持するということです。しかし第二章でも説明したように、1999年以降、企業の利益と所得とは分離していきます。政府はそれを食い止めるどころか、新自由主義的な政策を推し進めることで、中産階級の没落を加速させていきました。その結果、ライシュが言うように、「超資本主義の勝利は間接的に、そして無意識のうちに、民主主義の衰退を招くことになってしまったわけです。同様に、国家が資本の使用人になってしまっている状況は、国民国家の存在意義にも疑問符を突きつけています。詰まるところ、18世紀から築き上げてきた市民社会、民主主義、国民主権という理念までもが、グローバル資本主義に蹂躙されているのです」(200~201ページ)。

 私はこの水野さんの論には触発されました。11月中旬の解散風で21日解散、12月14日投開票の師走の総選挙では、大企業正社員は選挙でますます無力です。IT化とグローバリゼーションで暴走するマネー資本主義が、民主主義の担い手だった知識ある中産階級を根こそぎ流し去ってしまった選挙だといえるでしょう。

 小資本家として生まれ育ち現在がある私としても、大学入学後、多くの時間を過ごした中産階級が根こそぎ流されては困ります。

 上司に投票依頼してほしいと言っているわけではございません。とりあえず、土曜日ぐらい、20年前に、大学のサークルの合宿で、食事や宿泊をともにした旧友の電話番号でも探して、具体的に誰に投票してほしいと依頼していだきたい。どうせ、人生において、会うことがあるかどうか分からないような友達である。 



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