【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[追記あり]菅さん“3月危機説”消える?民主党と公明党が共同修正で閣法が可決 衆院・財務金融委員会

2010年11月02日 15時40分04秒 | 第176臨時国会(2010年10月)熟議
[画像]衆院財務金融委員会で質問する公明党の竹内譲さん(衆議院インターネット審議中継からキャプチャ)

[このエントリーの初投稿日時は2010-11-01 22:01:30]

 補正予算案は、11月2日(火)午後1時からの衆議院本会議、続いて、午後1時半からの参議院本会議で野田佳彦財務大臣が財政演説をして、審議入りできる見通しが高くなりました。補正には、参議院で民主党・国民新党のほかに、(一部の)野党の賛成が必要です。具体的に、かつ単純に言えば、「公明党が賛成に回れば可決・成立」します。実にカンタンな話です。公明党が欠席した状態で衆議院で審議入りを急いでいたら、かえって、成立が遅れることになると考えます。こんどの補正は「円高&デフレからの速やかに脱却する緊急の経済対策」なのですから、30日ルールは使えない“工具”といえるでしょう。

 また、公明党議員のツイッターで分かったばかりですが、11月2日(火)の衆議院本会議終了後の午後2時から、衆・財務金融委員会で、第174通常国会からの積み残しになっていた内閣提出法案「保険業法改正案(174国会閣64)」が審議入りし、質疑もすることになりました。 衆議院では厚生労働委員会の「雇用・能力開発機構法廃止法案(176国会閣9)」と、国土交通委員会の「土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(174国会閣37)」の2法案について、大臣が委員会で趣旨説明しましたが、さらに法案の質疑にまで入るのは、保険業法改正案が176国会の衆院ではトップバッターになると思います。

 衆・財金委員会の理事をみるとやり手がそろっているので、衆院議員が全員集合する本会議が終わり、野田大臣と自見庄三郎金融担当大臣(参院議員)の体が空く、午後2時以降の3時間の“空白の時間”を有効活用したのだと、推察しています。ちなみに財金委員長は衆参とも民主党です。ただ、公明党が修正案を提出する方針だと、竹内譲議員がツイートしていますので、ようです。ということは審議には一定の時間を要することになりそうです。熟議のねばり強さ、辛抱強さが求められます。

 このように考えていくと、予算委員会も午前9時~午後5時半まで設定しないで、午前10時~午後3時にして、各大臣がバラバラに各常任委員会に出席できるような時間帯を作り出せば、法案成立率を高めることができるのではないでしょうか。熟議のねじれ国会は、まずはルール作りから。あくまでも臨時国会ですし、与党国対は口が裂けても言ってはいけないことになっていますが、12月になれば「会期延長」という工具を取り出すことができます。

 それと、民主党議員からは、「法案を法律にすることへの執念や気迫がほとんど感じられないなあ」、という感想を持っています。

 与党時代の自民党だったら、看護師・助産師出身の元法相、南野知恵子さんが衆院本会議場の参議院議員傍聴席で、自分が手がけた法案の採決を見守る姿を見かけました。臓器移植法改正案では、ともに医者である自民党の古川俊治、国民新党の森田高両参院議員が傍聴に来ていて、成立すると古川さんが立ち上がって衆議院議員に手を振りながら「アリガトー!!」と何度も叫んでいました。それを一般傍聴席でやるとつまみ出されますし、おそらく参議院議員傍聴席といえでも同じでしょうが、ドクター古川の姿を見て、とがめようとする人はいなかったと思います。医療関係者の参院議員は、命を守る法案への執着心が高いようです。

 国会議員の英訳の一つに、"Lawmaker"があります。国会は法律工場であり、国会議員は法律工場の工員です。2010年1月、「命を守りたい、命を守りたいと思うのです」という施政方針演説でこぎ出した以上は、その執念を年末までみせつけてほしいと、せつに願います。

[追記 2010-11-2 9:00]

 衆院財金委理事は2日朝、きょうの衆・財金委(委員長=民主党の石田勝之さん)では、質疑にとどまらず、保険業法改正案の採決まで行けるのではないか、との見通しを明かしました。上述の、竹内議員のツイートの通り、公明党が修正案を提出。公明党が民主党に事前に示した修正案は、民主党理事も賛同できる内容だったようで、保険業法改正案は「修正可決」される見通しです。今国会で、衆院側での法案の委員会通過は第1号になる見込みとなりました。また、公明党の修正を反映した法案が参院に送られることになるので、参院財政金融委員会(委員長=民主党の藤田幸久さん)での審議・可決がスムーズに行くことになり、ねじれ国会のお手本となりそうです。なんとか会期中に成立させて、来年の通常国会に希望を持ちたいものです。菅さんも元気をもらえるんじゃないでしょうか。

 理事によると、古本伸一郎・筆頭理事のねばり腰が財金委運営をスムーズにしているようです。ベトナムの原発受注に成功した前経産相の直嶋正行さんと同様、トヨタ自動車(全トヨタ労連)出身のトヨタマンのイケイケドンドン体質が荒波の中、民主党丸を強く前に進めています。民主党政調の税制改革チームでは、民社協会の先輩である中野寛成座長を事務局長として支えており、中野さんは古本さんをとても頼りにしている、と周囲は評しています。つくづく政治とは、口達者なだけではダメだなあと思います。昨年末のNHKスペシャルで、「いやー実際にやってみて、自民党はこれまでこんなに大変なことをやっていたのかと思いました」と弱音ともとれそうな本音を漏らした古本財務政務官(当時)ですが、その言葉は、政権の重みを担って感じたことをオープンに国民に示す政治家としての強さの裏返しだったようです。保険業法改正案の衆・財金委での可決はきょうの午後4時半ごろになりそうです。財政金融委員会は、総務委員会と同様に、所得税法改正案など予算関連法案を審議する委員会ですので、来年の通常国会に向けて、菅政権の「3月危機説」への希望の薄日となりそうです。[追記おわり]

[追記 2010-11-2 3:35]

 保険業法改正案は、民主党の大串博志さん、公明党の竹内譲さんら合計3人(残り1人の党派は不明)が共同で修正案を提出し、竹内さんが趣旨説明をしました。討論の申し出はなく、石田勝之委員長がただちに採決に入り、起立総員の全会一致で可決しました。通常国会では、赤字国債臨時特例法案、所得税法改正案といった予算関連法案・歳入関連法案の主戦場となる財務金融委員会で、民・公が共同で修正した実績は大きいです。これに先立つ質疑では、公的な名称と紛らわしい小規模共済の規制などが議題となりました。[追記終わり]


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