【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

安保法制で、首相・外相、自作自演が確定したトンキン湾事件の椎名答弁修正せず 18歳19歳法案が質疑

2015年05月28日 17時06分53秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[写真]「トンキン湾事件」を口実に始まった集団的自衛権の発動である「ベトナム戦争」による米軍の空爆跡地、手前は筆者(宮崎信行)、ベトナム中部の旧首都・フエ、1995年8月撮影。

【平成27年2015年5月28日(木)衆議院我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】


 「安保法制2法案」(189閣法72号・189閣法73号)の総括質疑2日目がありました。NHKテレビ・ラジオで合計14時間放送されたわけですが、視聴した人はさっぱり訳が分からなかったのではないでしょか。不誠実答弁で、与野党の溝は、まったく縮まらなかったと思います。

 興味深かったのは安倍晋三首相が横畠裕介内閣法制局長官(昭和49年司法修習生)の答弁を嫌がり、秋葉剛男外務省国際法局長(昭和57年外務省)に答弁させようとした場面です。午後2時40分ごろ、維新の党の江田憲司さんの個別的自衛権と集団的自衛権の違いについて、通常兵器の時代と違い、弾道ミサイルの時代では、北朝鮮から大砲で公海上の米艦が攻撃を受けながら、同時に「ノドン」弾道ミサイルで日本列島を狙えるので、違いが不明確になっているとの指摘です。

 横畠さんが答弁しようとするのを、安倍首相がひっしに嫌がり、浜田委員長に対して、ひっしに外務省国際法局長を指名するように迫りましたが、横畠さんが答弁。

 「自国に対する攻撃から始まるのが個別的自衛権であり、他国に対する攻撃から始まるのが集団的自衛権である。ただ、自国を守るために必要な他国防衛もある。我が国の防衛にあたる米艦を防護できる」としました。

 これに対して、外務省国際法局長は「国際法の有権解釈権はICJ(国際司法裁判所)ではなく、日本では外務省にある」と、省益を主張しました。安倍さんが内閣法制局が嫌いで、外務省国際法局長が好きなのはよく分かりました。

 民主党の後藤祐一さんは周辺事態法を重要影響事態法に改正する条項について、「周辺」の概念が変わるとして、武力攻撃事態法の改正条項に入っている存立危機事態との関係性をたずねました。

 辻元清美さんは、日本有事の武力攻撃事態のみならず、日本平時の「存立危機事態」も「急迫不正の侵害事実」(刑法36条の正当防衛の要件)ならば、法律が成立・施行すると、「専守防衛でなくなる」と指摘しました。

 そのうえで、辻元さんは、安倍さんに対して「総理落ち着いてください。どっしりしていた方がいいですよ」とアドバイス。

  ところが、質問時間の最後に、安倍首相が閣僚席から「早く質問しろよ!」と暴言。辻元さんが発言をとめ、長妻理事が抗議。この後の、緒方林太郎さんが冒頭に謝罪を求めたところ、安倍首相は謝罪しました。

 志位和夫さんは、国連憲章51条にもとづく集団的自衛権の行使として国連報告されている、アメリカのベトナム戦争を取り上げました。志位さんは「ベトナム戦争はアメリカによる侵略戦争だったことが動かしがたい歴史的事実だ。第2次世界大戦の2・5倍の弾薬と最大50万人の兵員が動員された。その発端となった、トンキン湾事件は、ベトナム北部のトンキン湾で、北ベトナムの魚雷艇が一方的にアメリカ軍に攻撃したとして、(ケネディ大統領の命令で)集団的自衛権を発動し、北ベトナム空爆、いわゆる北爆を始めたものだ」と語りました。

 そのうえ、当時の椎名外相がトンキン湾事件について答弁しているが、このトンキン湾事件はアメリカの自作自演だったことが後に明らかになり公文書(いわゆるペンタゴンペーパー)として保存されているとし、岸田外相に、当時の答弁の修正を迫りました。

 これについて、岸田外相は「トンキン湾事件について、日本外務省は有権解釈権を持たない」と答弁。安倍首相は「トンキン湾事件については、当時の外相が当時の立場で述べただけだ」とし、政府として椎名答弁を修正する必要がないと答弁しました。

●公明党が委員長を務める委員会だけ、法案採決


【同日 参議院総務委員会】

 公明党の谷合正明さんが委員長をつとめるなか、「通信・放送・郵便の海外輸出官民ファンド法案」(189閣法27号)が可決しました。

【同日 衆議院総務委員会】

 公明党の桝屋敬悟さんが委員長をつとめるなか、「郵便法および信書法改正案」(189閣法62号)。まず、維新の党が単独で修正案を提出。修正案と政府原案を審査したうえで、採決。維新の党の修正案は、維新の党のみの賛成少数で否決。政府原案は、民共の反対、自公などの賛成多数で可決しました。このように、衆参とも公明党の委員長のところだけ、法案が採決され、公明党が法案審査のスローペースに危機感を持っているように感じました。一方、維新の党も1期生の吉村洋文さんが修正案を出しており、松野体制のもと、のびのびとやっている雰囲気が浮き彫りになりました。

【同日 衆議院政治倫理の確立および公職選挙法改正に関する特別委員会】

 5法案趣旨説明されています。うち、共産党提案の「政治資金規正法改正」など2法案は同党の単独提案で趣旨説明されましたが、これは15年ぶりだと「しんぶん赤旗」が報じています。が、きょうは「18歳19歳に投票権を付与する公職選挙法改正案」(189衆法5号)が審議されました。

 共産党の塩川鉄也さんの質疑に対して、民主党の武正公一さんは「民主党は結党以来、党員の資格を18歳以上にしており、18歳19歳の政治に対する能力は実績で確認している」と答弁しました。 自民党の船田元さんや、公明党の北側一雄さんも答弁しました。

 あすも午前9時半からも質疑。

【同日 衆議院厚生労働委員会】

 「労働者派遣法改正案」(189閣法43号)と「同一労働同一賃金推進法案」(189衆法22号)のうち、前者について参考人質疑がありました。

 派遣ユニオン書記長の関根秀一郎さんのほか、経団連やリクルートが出席しました。きょうはこれのみで散会しました。ていねいな質疑が必要です。

【同日 参議院内閣委員会】

 「マイナンバー法と個人情報保護法の改正案」(189閣法34号)について、午前は参考人質疑、午後は法案審査がありました。この後、財政金融委員会との連合審査会を後日開くことが決まりました。 3党合意の要である「給付つき税額控除」の検討状況も議題になるでしょう。

【同日 参議院法務委員会】

 「裁判員裁判法改正案」(189閣法41号)の参考人質疑がありました。

【同日 参議院外交防衛委員会】

 「防衛省設置法改正案」(189閣法33号)の参考人質疑がありました。採決前に、中谷防衛相の出席のもとでの質疑が必要になります。

【同日 参議院財政金融委員会】

 国政調査案件(AIIBについて)の参考人質疑がありました。同委員会はすでに今国会提出予定の閣法の審査を終えています。

【同日 参議院経済産業委員会】

 一般質疑のみで散会しました。

【同日 衆議院原子力問題調査特別委員会】

 一般質疑がありました。

以上。



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