【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

子ども手当つなぎ法、野党の“共”力で成立へ 岡田幹事長の「あらゆる可能性」が結実

2011年03月09日 22時16分12秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[画像]左から、民主党の安住淳・国対委員長、藤村修・幹事長代理、岡田克也幹事長、日本共産党の市田忠義書記局長、穀田恵二・国対委員長、2011年1月18日、穀田さんのブログから

 菅直人首相は9日、「外国人献金問題による参院での予算審議への影響を避けるために辞任した前原誠司さんの後任の外相に、松本剛明さん(兵庫11区)を任命し、皇居で認証式を受けました。松本外相の後任となる、外務副大臣に参院議員(三重選挙区)で元経産政務官の高橋千秋さんを充て、同じく皇居で認証式を受けました。松本外相は、2005年ごろ、「前原ネクスト防衛相・松本ネクスト防衛副大臣」でコンビを組んでおり、アメリカ人脈も一生に培ってきた面があり、継続性に期待できます。なお、伊藤博文の「ひ孫」という表現がありますが、「玄孫(やしゃご)」つまり孫の孫です。まあ、「どうでもいいよ」と言われれば、私も「たしかにどうでもいいかな」という気もしますが。高橋千秋さんは、ちょっと前まで三重県知事選挙への出馬要請を受けて悩んでおられたようですが、「議会人」にこだわり、外務副大臣に就くということで、ホントウに政治は分からないものだと感じます。経産省政務三役の経験から、松本外相とともに、「インフラのパッケージ輸出」に期待できるほか、農協出身なのでTPPに関して高橋外務副大臣、篠原孝農水副大臣、平野達男内閣府副大臣との副大臣会議の横串にも期待できます。



[写真]松本剛明外相


[写真]岡田克也さん(左)と高橋千秋・新外務副大臣(2011年1月4日、高橋千秋さんのブログから、トリミング)

 ◇

 3月9日(水)は、衆院・文部科学委員会で、海外美術品などわが国における公開促進法案(176国会衆法12)が田中眞紀子・委員長起草で修正し、全会一致で本会議に送られることになりました。

 衆院農林水産委員会では、家畜伝染病予防法改正法案(177閣法30号)が審議入り。また、きょうも午後5時10分~午後7時半の「居残り授業」が衆院・財務金融委員会で行われました。あさっても同じく午後5時10分からの「居残り授業」で、赤字国債発行特例法案(177閣法1号)、所得税法などの改正法案(177閣法2号)をみっちり審議します。なお、民主党理事は、午前9時~午前10時、正午~午後1時の、参院予算委員会(午前10時~正午昼休み~午後5時前後まで)のすきまも使うよう申し入れているという情報も入ってきました。

 ◇

 さて。

 民主党は「平成22年度の子ども手当支給法」(第174国会閣法6号)を、半年間延長するつなぎ法案を、議員立法で提出する見通しとなりました。これに日本共産党が「前向きに検討」と社民党が「賛成」を表明しました。参議院本会議で、民主党、国民新党、日本共産党、社民党が賛成した場合は、過半数まであと「2」になります。無所属のうち、沖縄県選出で「革新共闘」で当選している糸数慶子さんは社民党などと行動をともにするとみられ、民主党と関係の深い無所属議員(例えば大江康弘さん)がもう1人賛成すれば、現行の子ども手当の6月、10月の支給にメドがつくことになります。仮に参議院で否決されても、日本共産党の「前向きに検討」により、衆院本会議での3分の2以上による再可決は確実な情勢になりました。

 民主党幹事長の岡田克也さんは9日、日本共産党の市田忠義書記局長と会談し、協力を取り付けました。

 実は岡田さんと市田さんは、秋の第176臨時国会中の与野党幹事長・書記局長会談で、大げんかになった経緯があります。2010年11月30日の会談で、「小沢一郎氏の国会招致」を求める市田さんが「党首が一兵卒の元代表に『国会に出なさい』と言い『分かりました』と言わせられないのは、近代政党として情けない。共産党ならあり得ない」と発言した際、岡田さんが「うちは共産党とは違いますから」と答えたところ、市田さんが激高し、発言の撤回と謝罪を要求したようです。この後、岡田さんが市田さんをとりなすつもりもあったのでしょうが、自民党の石原伸晃幹事長に「自民党は審議拒否をすべきでない。共産党さんを見習って欲しい」と話したところ、今度は石原さんが激怒。さらに岡田さんが公明党の井上義久幹事長に「公明党は本会議に出席してくれますか」とたずねると、井上さんが「それは、そちらがその環境をつくるべきだ」と口論になり、陰険な雰囲気の幹事長・書記局長会談となってしまったようです。

 これを受けて、岡田さんは市田さんとのわだかまりを年を越させないと考えたようで、12月、ホテル内のレストランで、市田さんと夕食をともにして、大人として「次の第177通常国会では、きっちり審議拒否なしの国会を作っていこう」と意気投合したようです。

 そして、迎えた第177通常国会ですが、「名古屋・愛知ショック」で、民主党だけでなく、共産党も「既成政党」として、共通の危機感が抱いていると考えられます。岡田さんは、まず、「児童手当法の改正」というボールを公明党に投げたのですが、よい返事がなく、また児童手当法の所得制限840万円の「拡充」の意図がうまく伝わらずに党内外の反発が出ました。

 そこで、岡田さんは児童手当法改正という公明党に投げたボールを(いったん)あきらめ、「平成22年度の子ども手当法」を半年間延長するつなぎ法案(ブリッジ法案)を議員立法する方針に展開しました。これにより、ことし6月と10月の子ども手当は、これまでと同様の金額が払われることになると思われます。仮に半年延長なら、9月分までは確定しますので、自治体の窓口により違いがあるかもしれませんが、10月の支給はある、と私は現行法も読み返しながら考えております。まだ確定ではありませんし、利害関係者は引き続き報道などでご確認下さい、子育てで忙しく、また心もせわしないのに申し訳ありませんが。

 なお、きょう(3月9日)の衆院厚労委員会で、厚労大臣の細川律夫さんが「平成23年度の子ども手当支給法案」(177閣法9)の提案理由説明に踏みきりました。ただ、これで、与野党の理事・委員による「修正協議の機運」が出てくると思います。とくに衆院厚労委は、日本共産党、社民党、公明党の委員が以前から固定していますので、話がスムーズに行くと期待しています。

 さて、ここのところ忙しくて、岡田幹事長の記者会見に行けていないのですが、私は2月7日の定例会見で、参院では自民党・公明党・みんなの党の野党共闘でも過半数には足らないので、法案によっては、予算関連法案で、日本共産党が賛成してくれるのではないかという趣旨の質問をしました。これについて、岡田さんは「案件によりけりだと思いますが、基本的に(日本共産党が)予算関連法案(で賛成するの)はなかなか難しい問題があるのではないかと思います」としながらも、「あらゆる可能性を追求したいと思います」と答えていました

 そのときのやりとりについて、以下に引用します。朝日新聞の南記者、昨年参院選前後の「島根と青木幹雄さん」のルポルタージュは実に読みごたえのあるものでしたが、その南記者の質問の部分から引用します。

[引用はじめ]

岡田克也幹事長/記者会見要旨
2011年2月7日(月)16時17分~17時12分
編集・発行/民主党幹事長室

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
http://asx.pod.tv/dpj/free/2011/20110207okada.asx
http://www.ustream.tv/channel/dpj-channel

(略)

○予算関連法案に対する他党の対応について

【朝日新聞・南記者】予算関連法案の関係で伺いたいが、子ども手当法案に対しては、週末の討論番組でも公明党の幹部がかなり厳しい反応というか、このままでは賛成できないという意見を表明されていた。また愛知県知事選などとも関連するが、直近の民意を民主党がなかなか得られていないことに対して、協力できないという姿勢が公明党で強まっている。この現状をどのように受け止められているか。

【幹事長】いろいろな議論があると思いますけれども、あまり固定的に考える必要はないと思います。公明党のご意見、確かに厳しいものがありますが、しかし、子ども手当というのは公明党が推進してこられた児童手当の充実の延長線上にあるとも言えるわけで、大きな方向性としては、私は違っていないのではないかと思います。いろいろな議論があれば、手直しをすることも含めてやぶさかではありませんし、何よりもこの法律が通らないことになれば、子ども手当も児童手当も支給できない事態になりかねませんので、そこは子を持つ若いお父さんお母さんの立場、あるいは子どもの立場に立って、ぜひこれは公明党だけではなくて、他の野党も含めて、ご協力いただきたいと思っております

【フリーランス・宮崎記者】参議院は過半数が121と考えると、自民党と公明党とみんなの党は最近よく共闘しているが、これで113、副議長を入れて114。実は野党側も過半数のめどは立っていない。社民党、国民新党、たちあがれ日本と改革の統一会派があるが、共産党の6議席が法案によっては賛成に回るのではとないかと思うが、いかが思われるか。

【幹事長】それはわかりません。案件によりけりだと思いますが、基本的に予算関連法案はなかなか難しい問題があるのではないかと思います。先々のことをあまり固定的に言わないほうがいいと思いますので、あらゆる可能性を追求したいと思いますが、客観的にはなかなか大変なことだなとは思います。

 これで例えば仮に総選挙をやって政権が代わったとしても、やはりねじれは続くわけで、今の自公が衆議院で過半数を仮に取ったとしても、参議院においては厳しい状況に陥ることは事実で、やはりここはどの党が政権を取ったとしても、衆院と参院で多数派が違うという事態で国の政治が動かなくなることは当然予想されることなので、私の提案いたしました両院協議会のあり方とか、そういったことも含めて、しっかりとした国民の立場に立った議論が、今求められていると思っています。

 そういう議論をしないと、どんどん有権者の皆さん、国民の皆さんが、この国会における議論、あるいは政党に対して関心をなくすというか信頼感をなくしてしまう、今そういう状況が起こりつつあるのではないかと思っています。名古屋の選挙の結果というのは、これは民主党だけではなくて自民党にとっても深刻な事態で、お互いそういったことについては共通の認識を持って対応していかなければいけないと思っています。

[引用おわり]

 きのう(3月8日)の衆・財金委でも、日本共産党の佐々木憲昭(ささき・けんしょう)さんが「自公政権時代の基礎年金の国庫負担の2分の1への引き上げは、民主党と日本共産党は反対していた」と発言がありました。また、参院総務委員の日本共産党の山下芳生(やました・よしき)さんが、前日NHK会長を退任したばかりの福地茂雄さんが議員会館に訪れたことを驚いた筆致でブログで紹介しています。これを読んで、福地茂雄さんが社長を務めた「アサヒビール」が、キリンビールの販売量を抜いたり、ビール業界ではサントリーすらも凌駕している「強さ」の秘けつを感じ、敬服しました。

 さあ、公明党さん、元祖・地域政党なのか、はたまた、既存政党なのか分かりませんが、真価が問われる4月を前に、国会議員団も現実を見すえなければいけません。

 前へ。

 2011年3月9日の国会はこう見えても、前に進みました。

 苦しいときこそ、前へ。立ち止まると病気になりますよ、ホント。

 前に進みましょう。

 なお、あす3月10日は東京都平和の日です。東京大空襲から66年目となります。私も時間的余裕はあまりありませんが、午後1時の黙祷にご協力ください。あの東京がイチバン熱かった夜の11万人のためにも、前へ。前へ。前へ。



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