民法債権編、いわゆる債権法を、120年ぶりに改正する法律案は、平成28年2016年11月16日(水)の衆議院法務委員会で審議が始まり、きょう、12月2日(金)までに5回審議されました。
金田勝年法相は、趣旨の説明で「120年ぶりの抜本改正であり、短期消滅時効の整理などを行う」と説明しました。
共産党の藤野保史さんは、不法行為による損害賠償について、「消滅時効と除斥期間」の違いを問いました。法務省民事局長ら答弁側は「今まで整理されていない面があった」として、判例を踏まえて条文を手直しする意図を示しました。
ただ、実際の審議では、国会議員の質問の半数以上が、新「465条の6」として挿入する改正条項「公正証書の作成と保証の効力」など、金銭の融資の保証、連帯保証などに集中しています。
トップバッターとして質問した、与党である自民党の菅家一郎さんは「事業用融資のための保証契約について、経営者以外の第三者が保証人となることを全面的に禁止するという選択もある」とし指摘し、公正証書化とは逆方向に、廃止すべきではないかとの考えを示唆しました。
新第465条の9第3号で、主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者は、個人保証の制限の対象から除外することは、自営業の経営者の配偶者は保証人となって当然であるという前近代的なメッセージを発することになるのではないか」との指摘もありました。
与党からの批判にも呼応したのか、その後も、「なぜ日本政策金融公庫は無担保無保証で貸せるのか」(日本維新の会の木下智彦さん)、「配偶者の保証に関する規定は、法制審議会でも1人しか賛成していなかったのに法案に入っている」など批判的な質問が続いています。
公正証書に関して、公証人は全国に497名いて、法務省と裁判所職員OBOG以外の出身者は3名しかおらず、過去に司法書士が合計4名なったことがあるものの、圧倒的に法務省・裁判所出身者が多いことが、質疑が明らかになっています。法務省は公証人の毎月の手数料収入は250万円が平均だ、と答弁しました。
これとは別に、約款については、現在の政府・消費者庁などが、約款に疑義がある場合は事業者に不利に解釈すべきだとしている行政が、民法改正案で変わるのではないかという視点も出されています。
野党議員は「このまま行くと修正しないと通すわけにはいかない」と語っています。
これは、債権をめぐる議論は、貸し手と借り手とで、立場がちょうど180度異なることに起因していると思われますが、今後も審議が続くことになりそうです。
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