【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[きょうの国会]名古屋議定書両院承認、特区法改正案は審議が長引き採決持ち越し

2017年05月10日 19時46分47秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

 名古屋議定書などの条約が両院承認されました。今村復興相辞任で、皮肉にも、採決が持ち越された福島復興特別措置法改正案は金曜日に成立するはこびとなりました。森友問題で、がぜん注目を集めている特区と利権の問題もあるようで特区法改正案は採決せず審議が続くことになりました。

【参議院本会議 平成29年2017年5月10日(水)】

●名古屋議定書が両院承認、特区法改正案は、審議が続く

 参議院本会議は、水曜日の午前10時と、金曜日の午前10時に開かれるのが、定例です。法案の趣旨説明がなければ、採決があり、多くの議案はそれをもって、国会両院の意思表明となります。きょうは午前10時頃から10時15分頃まで開かれました。

 4つの条約承認案は一括して外交防衛委員長が報告し、一括して押しボタン式投票システムで採決されました。

 「北太平洋漁業委員会NPAFCが東京に本部を置くことにともなうNPAFCと日本国の協定の承認案」(193条約5号)
 「違法漁業を防止するための、北太平洋漁業委員会NPAFCと日本国の間の協定の承認案」(193条約6号)
 「生物多様性のための遺伝資源に関する名古屋議定書の承認案」(193条約7号)
 「バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書の補足議定書の承認案」(193条約8号)

 は投票総数238、賛成238、反対0の全会一致で両院承認されました。すべて多国間条約ですから、批准の要件が整った後に、閣議決定され、天皇の名で公布されます。なお、193条約8号の国内実施法は、衆参環境委で審議され、成立し、4月21日に公布されています。

 この後、法律案の採決がありました。

 「原子力損害賠償・廃炉支援機構法を改正して積立金制度を設ける法律」(193閣法9号)は投票総数238、賛成216、反対22の賛成多数で可決し、成立しました。

【衆議院地方創生に関する特別委員会】

 「特区法改正案」(193閣法54号)の質疑が続きました。外国人農業人材特区の構想について、具体的な派遣会社の名前が出ているなどとする質疑がありました。採決はせず、次回の日程も決まらないまま散会。毎国会提出される特区法改正案について、安倍自民党のお友達既得権益者が得をする制度なのではないか、ということに、ようやく世論が気づいたといったところ。もう得をした人は、しめしめといったところでしょう。

【衆議院経済産業委員会】

 「企業立地促進法改正案」(193閣法30号)が「修正議決すべし」と決まりました。まず、共産党はこの法案について「地域版特区制度を設ける制度であり、地域経済けん引企業を潤すことになり、地方自治の観点からも反対。農地利用にも問題がある」という趣旨の主張をしました。採決前に、自民党や民進党などが共同で修正案を提出し、民進党の近藤洋介さんが「委員会での審議をふまえて、政府は、土地利用状況を勘案して、農地利用に考慮する条項を附則に入れる」としました。採決では、上記修正案が、共反対、自公民賛成多数で可決しました。特区制度と鑑みると、やはり、安倍内閣は、経産省主導で政策展開が続いているのではないかと、感じさせました。

【参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会】

 議員立法の「平成31年4月に選挙を迎える阪神・淡路大震災被災自治体の特例任期2か月放棄法案」(193衆法14号)が審議され、可決すべしと決まりました。金曜日に成立すると思います。衆院同様に、共産党は反対しました。討論こそしませんでしたが、共産党が反対する理由は分かりますが、国民全体に開かれた党と言えるのか、共産党は少し立ち止まって考えてみた方がいいのではないでしょうか。自公民維各党は賛成しました。

【衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会】

 新区割りについて、小早川光郎・区割り審会長が報告。各党の質疑項目を理事会でまとめて、竹本直一委員長が一括して質問しました。和やかな雰囲気で、公職選挙法改正案(未提出、193閣法 号)がスムーズに成立するきざし。

【参議院東日本大震災復興特別委員会】

 「福島復興再生特別措置法改正案」(193閣法19号)が、共希反対、自公民維賛成多数で可決しました。この委員会では、討論が始まってから採決して附帯決議を採択するまでの一連の流れが、実に、27分間前後の長時間がかかっていました。これは、震災から6年以上が経ち、原発・放射性物資の処理や復興に関する意見が被災格差などによって多様化してくる時期を迎えたことを意味している、と私は考えます。改正法律は公布日に施行します。長野県長野市出身の福島県知事という究極の落下傘の内堀雅雄さんは、究極の企画調整力で自信をもって長期間リーダーシップを発揮したらいいのではないかな、と感じました。落下傘でも内堀さん、ということで、佐藤雄平前知事のやさしさを引き継ぎながらも、内堀さんのするどさも併せ持ってやったら、いいのではないかな、と白河の関の向こう側から思っております。

【衆議院国土交通委員会】

 「通訳案内士法及び旅行業法を改正する法案」(193閣法59号)が趣旨説明されました。ランドオペレーター(ランオペ)を国交省への登録制にする改正条項。それと、通訳案内士について、大枠として、資格が要らなくなる方向性の改正条項が束ねられています。ですから、きょう現在、通訳案内士の資格取得の勉強をしている人は、授業料をいくら払ったか関係なく、もう止めた方がよいだろうと私は思います。

 なお、この委員会では前日の審議中に定足数割れが起きたことから、きょうの質疑はなく、散会しました。

【衆議院農林水産委員会】

 「農村地域工業導入促進法改正案」(193閣法29号)の趣旨説明がありました。商業サービス業に対象を広げる改正案。なお、減反政策から収入保険に抜本的に農政が変わる、「農業災害保険法案」(193閣法58号)はまだ審議入りせず、理事会での攻防が続いていると思われます。どのような力が働いているのか見えませんが、今国会で成立しない公算が高まっているように感じます。

【衆議院外務委員会】

 「日印原子力協定の承認案」(193条約3号)が質疑され、次回以降に採決を持ち越しました。

【衆議院財務金融委員会】

 きのうに続き、金融に関して一般質疑がありました。

【衆議院決算行政監視委員会】

 「平成26年度決算」「平成27年度決算」「昭和19年度朝鮮総督府特別会計」「昭和20年度朝鮮総督府特別会計」の全般的審査がありました。

【参議院議院運営委員会】

 委員会のうち、現人事院総裁と、原子力規制委員長候補者の2人から所信を聞きました。

 2007年夏のねじれ国会で、江田五月議長・西岡武夫議院運営委員長の時代から、参議院では国会同意人事を審議する議運委がインターネット生中継されています。参では、特定秘密保護法を落とし込む国会法改正案も生中継されました。一方、衆側の委員会は、民主党政権時代に、国会同意人事の審議が、遅れてネット配信されたこともありますが、現在は基本的に中継されていません。このように、ネット中継されるかどうかの理事会での話し合いも、各党間のかけひきであり、インターネット中継されるのが当たり前、ということではありません。

【参議院政府開発援助等に関する特別委員会】

 参ODA特は、参側だけにありますが、1期生も含めて派遣された、ODA調査団4班の報告や意見交換がありました。このなかで、報告の中で、自民党の山下雄平さんが「日程で、各国の要人との会見が先に設定されているため、その後、現地でODAに携わる日本人と話した結果を、その国の要人に伝えることができなかった」とし、参議院事務局の日程の組み方を強く抗議する場面がありました。ややこしそうな話なので、深入りしたくありませんが、引き続き、海外派遣を続けて、なんらかの形で、日本の国益に反映されればいいと思います。

【参議院北朝鮮にによる拉致問題等に関する特別委員会】

 拉致問題被害者のご家族らへの参考人質疑がありました。それにしても、衆参のこの特別委で、横田早紀江さんの姿を見るのは何度目でしょうか。今回は、委員長が、山谷えり子元拉致相という分かりやすい人物ですが、だれが委員だろうが、いつまで同じことやってんだ、いいかげんにしろといったところです。せめて、1970年代当時の、警察庁・新潟県警・福井県警・京都府警の公安・外事課担当者を呼び出して質疑すればいいのではないかと言ったところです。1990年代の産経新聞のスクープは特筆されるべき出来事でしたが、1970年代にだんまりを決め込んだ関係者と、2000年代に世論誘導された国民は、なにか言うことはないのでしょうか。

【参議院国際経済・外交に関する調査会】
【参議院国民生活・経済に関する調査会】
【参議院資源エネルギーに関する調査会】

 各々、中間報告書とりまとめに向けた自由討議がありました。第23・24期参議院では、3つの調査会は、大臣辞任のあおりで流会したことはありますが、スムーズに進行しています。

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

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Miyazaki Nobuyuki


おつかれさまです!衆議院新区割り、小早川光郎会長が委員会で説明、今も生きる平成6年政治改革法、「2015年465議席」第48回衆院選で施行

2017年05月10日 18時53分18秒 | 政権交代ある二大政党政治の完成をめざして

 第48回衆院選(2018年12月までに施行)から使われる、「2015年国勢調査にもとづく、289小選挙区(比例代表とあわせて定数465=過半数233)」の新区割りについて、小早川光郎・区割り審会長(衆議院選挙区画定審議会会長)が、国会の衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正特別委員会で説明しました。きょう、平成29年5月10日(水)の審議は、和やかに行われました。

 政府は、来週、平成29年2016年5月16日(火)の定例閣議で「公職選挙法改正案」を決定し、同日中に、国会に提出。今国会で速やかに成立し、第48回衆院選から使われます。仮に政局に使うような議員がいれば、そんな議員はすぐに辞職すればいいのです。

 国会審議では、竹本直一委員長が、理事会で協議済みの各党の質問事項を一括して質問しました。ちなみに、小早川光郎会長の名前は「こばやかわ・みつお」のようです。久保信保(くぼ・のぶやす)会長代理も答弁しました。小早川会長は、市区町村の分割が多いことについて、とくに東京23区などでは、一票の格差2倍以内に収めるのがたいへんだったことを、ていねいに答弁。質疑に前後して、竹本委員長が「小早川会長をはじめとする委員のみなさんには大変なご尽力をいただき、重ね重ね、感謝する」と繰り返しました。

 羽田孜総理(や、小沢一郎先生、もちろん細川護熙総理ら)が主導した、第40回衆院選最大の争点だった「政治改革」。それを法律化した、平成6年政治改革4法が、23年経った今も通用しており、その改革の正しさが改めて確認できたといえます。

 平成6年政治改革4法は、「一人別枠方式」が最高裁判所大法廷が2011年3月25日に憲法違反だと断じられましたが、2020年国勢調査(勧告期限は2022年春か)からアダムズ方式(小数点以下切り上げ方式)を採用することになりました。アダムズ方式の是非については、再び、憲法判断になるかもしれませんが、当面は問題無さそう。また、平成6年政治改革4法での、国民への約束だった、企業・団体献金の廃止は、平成12年改正法以降、骨抜き(総支部なら可能)となっていましたが、再改正の議員立法(筆頭発議者・岡田克也さん)が提出され、今国会の議題となっています。

 新区割りについては、総務省のホームページに全部載っています。

このエントリーの本文記事は以上です。

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