【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

鳩山首相が沖縄で「海兵隊知らず」と未熟さのディスクロージャー

2010年05月04日 21時55分29秒 | 第174常会(2010年1~6月)空転政治主導


 私が民主党をずっと支持しているのは「政権交代可能な二大政党政治を日本に根付かせたい」からです。これは4年に1回かそれ以上の時間軸で考える大目標です。

 では、その4年より小さい単位で目標にしているのは、「ディスクロージャー(情報の公開や共有)のある日本政治・社会の実現」です。

 野党時代から知っている民主党議員が政務三役になるとともに「政権成金」さながら、ディスクロージャーとは反対に、エンクロージャーというのでしょうか、情報や権限を囲い込む姿に、人間としての悲しい性を感じます。

 さて、鳩山政権の命運を左右しかねない「普天間問題」で、鳩山さんは5月4日、首相として初めて沖縄を訪問。午後6時過ぎに、報道陣に、答えました。

 その中で、

①「最低でも県外移設」とした総選挙当時は、なぜ米軍の海兵隊が沖縄に存在しなければいけない理由を知らなかった。

②その後に、沖縄に海兵隊が存在することで、日本とアジア太平洋地域の(平和を構築する)抑止力が生まれていることを知った。

③学べば学ぶほど、全体(陸海空軍と海兵隊の4軍という意味?)の中で連携しており、海兵隊だけを沖縄県外に移設しようという発想自体がおかしかった。

 と認めたと思われる発言をしました。(総理の発言原文は下に付けたニュースを参照してください)。

 そのうえで、

 「それを浅かったと言われれば、あるいは、その通りかもしれません
 
と、「未熟さのディスクロージャー」をしました。

 もっと早くしてほしかったですね。

 私は、4月21日の党首討論で、鳩山さんの発言に首をひねりました。次のようなヒジョーに不可解な答弁がありました。

 「私は、海兵隊を海兵隊のみでとらえるのではなくて、当然のことながら、これは航空の部隊もあるわけでございます。いわゆる空軍も存在をしております。いわゆる嘉手納、あるいは横須賀には今度は海軍がいるわけでありますが、すなわち、こういったトータルの中での抑止力の中で海兵隊の果たす役割というものは大きく存在をしているという意味で申し上げたつもりでございます。」

 この総理の発言は、
「海兵隊のみでなく」→「海兵隊の航空部隊」→「空軍」→「嘉手納の海軍」→「横須賀の海軍」

 の存在を考慮しています。まるで伝言ゲームのようです。そして、4軍の中で、「陸軍」の名前が出てこない。海軍については、沖縄県外から「横須賀(神奈川県)」の名前が出てくるけど、「佐世保(長崎県)」は出てこない。

 これは総理の太平洋全体における米軍、および、同盟国(日本・韓国・豪州など)の抑止力とその役割分担への理解不足をうかがわせるものでした。こういうのは知識を蓄えて、それから議論したりかみ砕いて、世界地図や地球儀をいろいろと見回してはじめて分かってくるものです。

 ここからは、私の意見です。
 
 一時的に、ワシントンの立場に立ってみて、アジア太平洋地域の安全保障を広く考えた場合、海兵隊の存在は沖縄しか、地政学的に考えられないと思います。沖縄県外の東シナ海(鹿児島・長崎県)となると、よく分かりませんが、沖縄県内でも、平野博文官房長官が空からみた与那国島などは、台湾に近すぎてNGだと思います。

 では、国外でグアム島やテニアン島など北マリアナ諸島へ全部移転するのは、これはユーラシア大陸、すなわち朝鮮半島や中国大陸などから遠すぎて、抑止力が少ない。

 そして、陸・海・空軍も含めた4軍全体での沖縄の未利用と思われる軍用地の返還交渉だとか、施設でなく兵員数ベースで、沖縄における米軍プレゼンスの負担解消の10年とか30年とか、そういう中長期的な時間軸での道筋を示したロードマップをつくるべきだと思います。

 また、私は個人的に辺野古に行ったことがありますが、その沖を埋め立てることは一人の日本国民として断乎、反対です。

 沖縄の声が一つになる、ということは実はありません。沖縄に基地があることで、軍用地主が潤っているという構造的な問題があります。

 沖縄の基地は、時間をかけて、徐々に徐々に縮小していくことが大事だと思います。もちろん、政府への信用・信頼が欠かせません。まずはその根っこ作りから始めないと、どうにもならないと、個人的には考えています。

 内政としては、政権交代後の早い段階で、重要課題(agenda)に設定すべきでなかったし、優先順位(priority)も高い話にすべきではなかったと振り返るしかありません。

 とりあえず、5月4日の時点で、鳩山さんが「未熟さのディスクロージャー」をしてくれたのはよかったと思います。政権の先行きに暗雲がたれ込めていますが、仮に倒れるにしても、「未熟さのディスクロージャー」をすれば、前に倒れることができると思います。

FNNニュース: 鳩山首相、海兵隊の役...


沖縄・名護市の稲嶺市長と会談した鳩山首相が会見を開いた。
鳩山首相は、4日午後6時すぎ、「その当時、海兵隊の存在というもの、そのものを取り上げれば、必ずしも抑止力として、沖縄に存在しなければならない理由にはならないと思っていました。ただ、このことを学べば学ぶにつけて、全体の中での海兵隊の役割というものを考えたときに、それがすべて連携をしていると、その中での抑止力というものが維持できるんだという思いに至ったところでございます。それを浅かったと言われれば、あるいは、その通りかもしれませんが」と述べた。
一方、会談を終えた稲嶺市長は、「はっきり県外と言ってほしかった。それがなかったことが残念で、とても心外です」と述べた。


 ◇

【第174回国会 国家基本政策委員会合同審査会 第3号】
平成22年4月21日(水曜日)

(前略)

○谷垣禎一君 総理の論法はいつもそうですね。やはりそういうことが国民に不安を与えていると、こういうことに思い至らないのかと私は不思議に思います。
 もう一回伺いたいんですが、総理は去年以来、先ほどの現行案に対する御批判の中でも、沖縄県民の気持ちということを随分おっしゃっています。最低でも県外、こうおっしゃった。これは今でも生きているんですね。

○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 私は、当時、そのように申し上げたことは事実でございます。今でも県外という思いを、少なくとも沖縄の……(発言する者あり)思いは思いでしょう。県外に当然移設先を求めていきたいという気持ちは変わっておりません。そして、当然のことながら、沖縄の県民の思い、思いを十分に理解をさせていただくならば、負担をできる限り軽減をさせていかなきゃならない、そのように感じております。

○谷垣禎一君 総理のこの問題に対するいろんな御認識、私、ちょっと根本的なことを問いたいんですが、普天間が果たしている抑止力、これを一体どういうふうに総理は理解しておられますか。

○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 私は、普天間と申しますか、海兵隊の皆さん方が果たしている抑止力、これは、沖縄全体あるいは日本全体として、当然のことながら日本を防衛するという意味での抑止力の役割というものはあると、しかも大きいと、そのように理解をしております。

○谷垣禎一君 沖縄海兵隊の持っている意味について、随分、今の御理解は偏った理解といいますか、中途半端な御理解だと私は考えます。
 沖縄の海兵隊、海兵隊の任務は、海外有事の際に真っ先に駆け付けて、そして非戦闘員の救出であるとか、あるいはその活動拠点を確保すると、こういう任務を負っている。ですから、普天間ヘリ部隊がその中核にこの極東においてはあるわけでございまして、極東、つまりフィリピン以北、それから朝鮮半島、それから台湾海峡、そういったところでの要するに抑止力の中心を担っているのがこの沖縄の普天間のヘリ部隊なんですよ。
 地政学的な、地政学的な位置がだから重要なんです。そのことを御理解かどうかということを私は問うたわけであります。

○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 私は、海兵隊を海兵隊のみでとらえるのではなくて、当然のことながら、これは航空の部隊もあるわけでございます。いわゆる空軍も存在をしております。いわゆる嘉手納、あるいは横須賀には今度は海軍がいるわけでありますが、すなわち、こういったトータルの中での抑止力の中で海兵隊の果たす役割というものは大きく存在をしているという意味で申し上げたつもりでございます。

○谷垣禎一君 もう一回申し上げますが、こういう沖縄の海兵隊の果たしている、極東の中で果たしている役割からいって、地政学的な位置付け、そういうものが極めて重要だと。したがって、抑止力を維持していくということをお考えになるならば選択肢は極めて限られている、このことを申し上げたいと思っているんです。例えばグアムに関しては、前も総理御自身がグアムは抑止力の観点から難しいということをおっしゃったことがありますね。
 私は、今いろいろな県外ということをおっしゃったけれども、総理に抑止力というものをきちっと維持していくというお考えがあるのかどうか、そこのところを疑問に思っているんです。

○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 当然のことながら、私は、沖縄の負担の軽減と、しかしながら一方で、日米安全保障の中でのこの海兵隊を含むアメリカの日本においての抑止力を果たしているという、この役割というものは大きいと思っています。
 したがいまして、だから私も、沖縄から余り距離的に申し上げて遠くのところまで海兵隊というものを移すということは物理的に必ずしも適当ではないという中で、選択肢を様々考えていることも事実でございます。

○谷垣禎一君 いずれにせよ、総理の御答弁を伺っておりまして、国民あるいは沖縄県民、鹿児島県民、これ以上愚弄してもてあそぶことはもう許されないんですね。
 それから、アメリカの信頼、アジアの信頼、つまり、今の総理の御答弁を我々の周辺諸国は見守っていますよ。朝鮮半島、韓国から御覧になれば、韓国有事の際に沖縄の海兵隊は何日間あれば駆け付けてくれるか、こういうことを考えているわけです。今の総理の御答弁からは、御答弁からはそういうアジア全体のインフラになっているという認識が全くうかがわれない。
 つまり、私が申し上げたいのは、総理のそういう御答弁自身が我々の周辺世界の、日本だけではなくアメリカも含めて、情勢を混迷させている、こういうことにお気付きにならなきゃいけません

○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 全くその御懸念は御不要でございます。
 私は、これは就任早々、東アジア共同体ということを構想しておりますが、その東アジア共同体を構想していく中でも、日米同盟、日米安保というものが大変重要だと。すなわち、日本とアメリカが安全保障でしっかりと結ばれているということが東アジアの国々に安定を与えているというのは、事実として、当然実態として認めているわけであります。そのような考え方の中で、私としても普天間の移設先というものを考えていかなければならないことは十分に理解をしているつもりでございますし、何も沖縄県民の皆さん方を愚弄するつもりはまるでありません。むしろ、沖縄県民の皆様方の今日までの大変大きな御負担を考えたときに、できる限りその御負担を減らすのが新政権の大きな責務ではないか、その思いで努力しているつもりでございます。

○谷垣禎一君 総理がどうおっしゃろうと、この問題をあなたは軽く見たんではないか。これは国民がみんな思っているんですよ。この間、総理は御自分の後援会で、四月十六日です、こういうあいさつをなさっています。普天間なんて皆さん知らなかったでしょう、それがもう国民の皆さんの一番の関心事となるということ自体がやはり何かメディアがいろいろと動き過ぎているなと私は思っておりますと、こうおっしゃっているんですね。この認識ですよ、極めて軽い認識。国民を愚弄し、この普天間の問題が持っている重み、理解しておられないということが如実に表れている。そういうことがこの問題の解決を遠ざけてきたんです。
 しかし、先ほどから、五月きちっとやるとおっしゃっている。今この場で、この場でですよ、今日はテレビでたくさん国民も見ておられる、職を賭して五月にはこの問題を解決すると国民に約束してください。

○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 当然のことながら、私は、一つ一つの政策を実現に向けて、自分自身の覚悟というものを国民の皆さんに示しながら行動してまいってきているつもりでございます。
 したがいまして、今回の普天間の問題に関しましても五月末までと、そのように期限を切って行動をしているところでございます。私も、必ず関係閣僚と協力をしながら最終的な結論というものを五月末までに出さしてもらう、その決意を改めて国民の皆さんに申し上げておきます。

○谷垣禎一君 今私が問うたことは、努力するとか根性を入れて頑張る、こういうことを伺おうとしたんじゃないんですよ。職を賭してやるんだと、こういうことをあなたに覚悟を示していただきたい、日本の政治的リーダーとしてその覚悟を示していただきたい、こういう思いで言ったんです。
 あなたは、我が国が大切にしなきゃならない三つのものを破壊してきたと私は申し上げます。
 まず第一に、今の議論でずっとあるところですが、日米同盟を始めとする我が国の国際社会における信頼、この基礎を完全に掘り崩したと、残念ながらそう申し上げざるを得ません。
(後略)

 ◇

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