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ミステリ感想-『贋作『坊っちゃん』殺人事件』柳広司

2009年01月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
赤シャツと野だに鉄拳制裁を喰らわせ、「おれ」が松山を離れた直後、赤シャツは謎の自殺を遂げていた。
再会した山嵐とともに松山に戻ったおれは、事件の思いもよらない根深い真相を突きつけられる。
夏目漱石の名著『坊っちゃん』に秘められた真実とは?


~感想~
歴史上の人物や史実に秘められた(秘められていない)真実を本格ミステリとして掘り起こす労作を放つ作者の出世作。
今回、題材となったのは日本人なら義務教育で一度は読まされる『坊っちゃん』であり、原作に隠された(もちろん作者の夏目漱石はまったく意図していない)真相が明かされるが、事前に『坊っちゃん』をもう一度読み返す必要はなく、とおりいっぺんのあらすじさえ知っていれば存分に楽しめる。
その牽強付会というか、むりやりなこじつけぶりが楽しく、破天荒な青年の日常を描いた原作の裏に、どろどろとした陰謀や背景を潜ませ、当時の社会情勢までたくみに織り込みながら、しっかりと『坊っちゃん』の後日談としても成立させているのだから驚かされる。
しかもこれだけの労力をつぎ込みながら、分量は原作とほぼ同じくらいの薄さで手軽に読めてしまうのもいいところ。ミステリマニアに限らず普通の小説好きにもおすすめできるだろう。


08.12.8
評価:★★★ 6

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