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ミステリ感想-『漱石先生の事件簿』柳広司

2007年04月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
『吾輩は猫である』にはこんな真実が隠されていた!
奇矯な先生と奇矯な来客たち、そして名無しの猫と書生の私が織りなす、七転八倒抱腹絶倒の大騒ぎ。


~感想~
大著『吾輩は猫である』に描かれるエピソードの裏に潜む、意外な真実(?)を白日の下にさらす(?)稚気にあふれた佳作。
先生を筆頭に変人奇人たちのやりとりだけでも楽しいのに、スラップスティックにさりげなく伏線を張りめぐらせ、思いもしない真相を隠しているのだから一粒で何度もおいしい。
にぎやかで脳天気な表層の裏に忍び寄る戦争の足音、陰謀に暗闘……。重低音のように響く裏の物語に驚かされる。
白眉は最終話の「春風影裏に猫が家出する」。重くなりかけた雰囲気を一掃する最高の幕切れを見せてくれる。予備知識なしでも楽しめる作品集だが、こればかりは『吾輩は猫である』を読んでいればなおさら輝くことうけあい。
中高生をターゲットとしたレーベルながら、特に大人を満足させてくれるのでは。


07.4.19
評価:★★★★ 8

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