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ミステリ感想-『前巷説百物語』京極夏彦

2007年06月08日 | ミステリ感想
~収録作品~
大損まる損困り損、泣き損死に損遣られ損。ありとあらゆる憂き世の損を、見合った銭で肩代わり。銭で埋まらぬ損を買い、仕掛けて補う妖怪からくり。寝肥、周防の大蟆、二口女、かみなり、山地乳、旧鼠―小股潜りの又市が、初めて見せる御行姿。明治へ続く巷説が、ここから始まる百物語―。


~感想~
御行になる前の又市を描くシリーズ第四弾。もうここまで続くと身もフタもない話、怪異が起こっても「又市がなんかやってこうなったんだろう」とは解るのだが、それをマンネリにせず新しい切り口で見せてくれるのが実に巧い。
今回は又市の成長物語でもあり、まだ仕掛けに不慣れな分(?)とんでもないバカトリックを連発し、それでも八方丸く収めるのだからたまらない。以降のシリーズへとつながる伏線、再三語られてきたあの事件の真相なども見どころであり、後半の重要人物がバタバタ死んでいく容赦のない展開は某『ネコソギラジカル』との対比を見るようである。
ファンは黙って買いの一冊。次回作の上方に舞台を移した『西巷説百物語』も今から待ち遠しい。こうなったらなんとかして百物語を達成して欲しいものだ。


07.6.7
評価:★★★★☆ 9

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