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ミステリ感想-『戦力外捜査官 姫デカ・海月千波』似鳥鶏

2013年09月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
警視庁捜査一課の火災犯捜査係に配属された、女子高生にしか見えない小柄で童顔な海月警部。
お守り役を命じられた設楽巡査はドジでのん気な彼女に振り回されながら、連続放火事件を追う。
だがヘマを連発した二人は戦力外を通告され、捜査から外されてしまい――。

~感想~
「これだけばらまけば!(CV速水奨)」という心の叫びが聞こえてくるように様々なジャンルで新作を飛ばす作者が、今度はドジっ娘デカで勝負を賭けた。でも眼鏡で童顔でドジといえばすでに大倉崇裕が福家警……いや、なんでもない。海月警部はキャリアだし、たぶん(年齢は明かされていない)20代半ばだし、ドジのレベルもF警部補をはるかに上回っているし。
それはともかく冒頭から少女殺害事件→容疑者自殺が描かれるように、あいかわらずドタバタした雰囲気にそぐわず事件も犯人もかなり過激。
一見関わりの無いように思える二つの事件が期待通りに重なり、海月&設楽コンビもバディ・ムービーさながらに活躍する展開も秀逸。
とさらりと言ったが、海月警部と設楽のキャラ造型、放火事件の謎とそれを紐解く論理から、意外な方向へ転がりスピード感あふれる物語、海月配属の裏に潜む真相、奇をてらいすぎな感もあるが予想の外から現れる真犯人と、ミステリとしても小説としても非常に完成度が高い。
だが設定的に続編は難しいか。短編集でもいいからまたこの迷コンビを見たいのだが。

有栖川有栖の江神さんシリーズくらいになって欲しいと願望を込めて、勝手に伊神さんシリーズと呼んでいる一連の作品以外は、少し質が落ちると危ぶんでいたが、これだけの佳作が描けるならもう心配はいらないだろう。「どれでもいいから当たりさえすれば!」と思っているのは作者だけではなく我々ファンも同じである。
……ところで刊行から1年ちょいで文庫落ちするとは早すぎはしまいか。先月に単行本で買っちゃったじゃないか!


13.9.27
評価:★★★☆ 7

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