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ミステリ感想-『絞首商會』夕木春央

2019年11月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
大正の東京。秘密結社「絞首商會」との関わりが囁かれる村山博士が刺殺された。
同居する遺族は、かつて村山邸に盗みに入った元泥棒の蓮野へ探偵を依頼。
蓮野は4人の容疑者が不自然なほど推理に熱心なことに目を付ける。

2019年メフィスト賞


~感想~
終わってみれば非常に面白かったのだが、終わるまでが非常に退屈。
無数の小事件が起こり、最後には一点に収斂して行き意外な真相を導き出すミステリのお手本のような決着だが、大仰な文体と比喩、回りくどい展開が著しくリーダビリティを損なっている。
場面場面では面白いのだが、そうでないパートとの落差が激しく、読んでいて非常にだれてしまうのだ。
しかしさりげない伏線の張り方や、一言で説明できる事件の構図、やりたいことの志の高さとそれをやり切ったことは大いに称賛できる。見せ方一つ、文章一つで改善できるはずなので、この作者はいずれ大化けするかも知れない、と思わせるだけの力はある。

近年、悪目立ちしている(コンビニ…NO!NO!…異世界…クッ…頭が痛い…)メフィスト賞とは思えないほど地味で、乱歩賞から出すべきだった気がしないでもないが、将来性を加味して新人賞を与えるにふさわしい作品だろう。
この質を保てば数年後にはトリックに針の振れた下村敦史みたいになるかも知れない。


19.11.25
評価:★★★☆ 7
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