読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

「北の国から」で読む日本社会 藤波匠2017

2018年01月04日 | 社会

「北の国から」は、昔、家族が見るテレビを通りすがりに見ただけ。
 この本を読むと、主人公の黒板五郎は、経済学でいう合理的な人間と逆の生き方を自ら選択している。商品経済、分業を否定し、都市化の流れに逆らっている。
 そのために自ら苦労し(死にかけたこともあった)、さらに子どもたちを巻き込み、苦労させている。
 まず、都市化が進んだ80年代に子ども2人を連れて富良野に帰り、電器もない廃屋に住もうとする。家を建てるのも井戸を掘るのも自分でやり、物を買わず廃品を修理して使う生活をむしろ好む。小学生のころは塾に通い勉強もできた息子・純を、中卒後東京で働きながら夜学に通わせる。
 このドラマのもう一つの特徴は、不倫、中絶、略奪や駆け落が頻繁に登場すること。借金や事故死もよくでてくる。そりゃ皆堅実で品行方正じゃドラマにならないから、と言えばそれまでだが、倉本聰はどういう意図でそのような設定にしたのだろうか。ふつうのドラマの設定では田舎では人々は地道につましく生きて行くものだ。北海道はそういう舞台にふさわしいのか。でも不思議なことにこの本のおかげで富良野は一大観光地になっている。
 この本の終章には、「『北の国から』は、多くの悲しみやつらい出来事、仲間の死を乗り越え、生きるとはどういうことか、幸せとは何か、を問いかけるドラマであった。」とある。それはそうかも知れないが、家族そろって明らかに非合理的で苦労が多く、悲しみやつらい出来事が起きそうな方向に進んでしまうのは、つらすぎる。


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