読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか 村上敦 2017

2017年08月02日 | 国土・都市(国土政策局・都市局)
第1章
 青森市とドイツのフライブルクを比べると、人口規模や人口密度はほぼ同じだが、青森市は戸建て、持ち家が60~70%とドイツの農村レベル、フライブルグは15~20%。ドイツでは住宅の供給量を需要に対応させているから空き家はかろうじて引っ越しができる程度しか存在しない。青森市ではマイカーなしでは暮らせないが、フライブルグでは路面電車とバスでほとんどの居住地がカバーされている。
第2章
 例えばの計算だが、マイカー利用を公共交通、タクシー、レンタカー、カーシェアリングに変えると、支出は同じだが域内循環により地域の雇用は大きく増える。
第3章
フライブルクに限らず、世界中で路面電車や電鉄など公共交通と電力事業はセットで運営が始められた。フライブルクの公共交通は赤字であり、赤字分は電力ガス上水道サービスを提供する三セク会社の利益から補填されている。
 ドイツでは1955~65年に郊外住宅建設、マイカー普及が進んだ。フライブルクは他の都市と異なり、1969年総合交通計画で路面電車の拡張・充実を決め、続いて中心市街地の歩行者天国と石畳・水路の復活、さらには自転車レーン総合計画を決めた。郊外への大型小売店の進出に対しては、1991年に非日用品のみを扱う店舗しか進出できないように規制した。

第4章 マイカーを不便にするコミュニティのデザイン

第5章 費用対効果の高いまちづくりのツール、自転車

 この本では、2011年2月に国土交通省がまとめた「国土の長期展望」の先進性を高く評価している。
・2030年までに人口は1200万人減り、2050年には人口9515万人、高齢化率39.5%になる。
・2050年までに国土の7割近くの地域(66.4%)で人口が半数以下。既に過疎が始まっている地域、とりわけ人口規模が1万人以下の地域であればあるほど顕著に見られるようになる。
・今後一切国土基盤インフラを新設しないとしても、その維持管理コストが増大し続ける。
 一方、政権交代後、「長期展望」の解決策を見出そうとして策定された「国土のグランドデザイン」(2014年7月)については、「内容はもって貧弱」、「生々しい地方の現実と将来を変革することは期待できない」と酷評。

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