医療裁判傍聴記

傍聴した観想など

船橋整形外科病院 関節鏡視下関節受動術

2022-10-14 21:52:15 | 傍聴記
午前11時から午後4時まで船橋整形外科に対する医療裁判の本人尋問、証人尋問が行われました。
出廷した医師はメディアでスーパードクターとして紹介されている菅谷啓之医師です。
現在は船橋整形外科を退職して都内で開業されているようです。

原告の患者さんは船橋整形外科で左肩関節治療のための手術を受けたところ肘や指に痛みや麻痺の後遺症が残存したのは治療に問題があったとして被告病院を訴えています。


本人尋問

肩関節が変形性関節症で痛みや可動域制限があり注射やリハビリの治療をしていたところ医師から手術を勧められました。
手術は関節鏡視下関節受動術と言って関節を拡げ剥離をする操作を行い関節可動域をよくする手術との説明を受けました。 医師の書いた症例の文献のメモも渡されました。

しかし全身麻酔の手術が終わると肘に痛みがありました。医師からはそのうち治ると言われましたが疼痛が収まらず肩を上げるリハビリをすることが出来なくなりました。

MRI検査を受けるとT2強調画像で白い高信号として靱帯が剥がれて水が溜まっている画像が検出されました。
内側側副靱帯損傷が疑われ靱帯再建のトミージョン手術(プロ野球の投手が行う再建手術)の提案をされました。 正常な肘だったのにおかしいと思ったのですが内側側副靱帯修復術を受けました。

しかし手術後は手の第4指と第5指が痺れて使いづらくなりました。肘もティネル徴候で痛みが続いていました。
医師は尺骨神経障害は改善する可能性が高いので様子を見ると言いました。

しかし治らないので関節鏡下尺骨神経剥離術を受けました。しかし改善は得られませんでした。

自分は受けなくてもよい治療をしているのに、医師からは診るかなどと冷たく言われて精神的にショックを受けました。悲劇のヒロインとまで言われました。

その後、右肩のリハビリ中に伏臥位の状態において理学療法士の腕を上げ肩関節を押す施術中に肩の関節包が破けてしまいました。

菅谷医師からは「PTから聞いてサイレントマニピュレーションになっちゃった、結果オーライだよと言っといたよ。いずれ修復されるから問題ないよ」

しかし結果オーライで良いのか、両肩が痛くて眠れませんでした。

手術が手術を呼んでいる、肘に関しては健常だったにもかかわらず将来は人工関節になる可能性もあり悲しいです。日常生活も出来なくなってきています。

被告病院には術後のリハビリ看護の連携も十分ではありませんでした、安全な医療を提供してほしいです。


医師尋問 

変形性肩関節症の痛みを注射でとっていました、可動域を広げるための手術をすることになりました。
手術は関節の中の瘢痕や滑膜を取り除き、変形した骨を削り、固くなった軟部組織を伸ばすものです。

受動術中に左肘の内側部にビシッと異常の感触がありました。マニピュレーションの最中にはかなり強い力を加えないと可動域は広がらない。そこでリスク管理でストップをしました。 
しかしマニピュレーションを愛護的にやっていたのでは全然する意味がない。マニピュレーションは暴力的ではありませんでした。

ビシッとあったのは、おそらく内側側副靭帯の一部の損傷です。
靱帯損傷は三段階あって1番軽い1度は軽い捻挫に近いものです。

肩関節の外旋可動域を広げるリハビリは肘を90度に上に曲げて外旋する動作をする。
肘に痛みがあってリハビリが進まないので、ジャガーノットという上腕骨と尺骨にアンカーを埋め込み糸同士で内側側副靱帯損傷を補強する手術をしました。

側副靱帯と尺骨神経は近いのですが原告が言うように尺骨神経を傷つけるような事はありませんでした。 自覚症状だけで筋委縮が見られていないので原因は分かりません。

こじれた事を口にしたのは感情的になっていました。

この症例についてはなぜこんな風になってしまったのか、医学的な病態として理解できなません。やればやるほど悪化していく35年医者をやって初めてです。治癒させられなかったことは申し訳ないと思います。


原告代理人
藤田裕弁護士(ウェール法律事務所)工藤杏平弁護士(東京グリーン法律事務所)

被告代理人
加島康宏弁護士(加島康宏法律事務所)
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