見もの・読みもの日記

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古筆と絵巻を中心に/皇室の名宝2期

2009-11-15 23:46:35 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 特別展『皇室の名宝―日本美の華』(2期:2009年11月12日~11月29日)

 第1期と同様、土曜の朝、開館と同時くらいに到着した。すると、1期にはなかった長い列が、平成館の前に伸びているではないか。ええー!!「入場待ちはありません。まもなくお入りいただけます」とアナウンスはしているものの、私は『動植綵絵』の出る1期のほうが混むだろうと思っていたので、予想外だった。正倉院効果だろうか?

 会場内は既に激混み。第1会場は飛ばすか、と思って、先に進みかけたとき、ハッと目に飛び込んできたのは王羲之の『喪乱帖』。いいな~。王羲之の書を全部いいと思うわけではないが、これは好きだ。墨の濃淡、字の崩し方が一定ではなくて、変幻自在のスピード感が感じられる。あとで図録の解説を読んだら、聖武天皇の遺愛品で、梁の武帝の勅命を受けた鑑定者の署名が小さく記されているのだそうだ。しかし、当時、極東の小国が、こんな書の至宝をよく手に入れたものだなあ。あと、聖武天皇が、唐の太宗みたいに自分の墓に埋めさせたりしなくて、本当によかった。

 王羲之を眺めているうち、そうだ、この展覧会には、藤原佐理の書が出ているんだった、と気づく。そこで、第2章「古筆と絵巻の競演」に進んで、佐理の書を探す。あった!『恩命帖』だ。まるで万年筆で書きなぐったような字で、可笑しくて仕方ない。でも、何とも知らず、魅力的なのだ。自由奔放な中に、惚れ惚れするような気骨を感じる。どういう人だったのかなあ。

 あとは落ち着いて、順序だてて見ていくことにする。まずは名家総出演の古筆から。橘逸勢の書は初めて見たが、あまり感銘を受けない(『伊都内親王願文』)。小野道風は、どんな書体でもこなしそうだ。『玉泉帖』『屏風土代』は、悠揚迫らず、しかも変化に富んでいて好き。佐理・道風に比べると、行成筆の『和漢朗詠集』は、きれいだけど生真面目だなーと思ってしまう。

 絵巻では久しぶりの『春日権現験記絵』を楽しみにしていた。1999年、平成館の開館記念特別展で見たんじゃなかったかな? 全20巻という長大な絵巻で、どの場面も細部に遊びがあって面白いのだが、今回は、いちばん見たかった巻19の冬景色(アイシングしたように霜?の降りた紅葉の山)が公開されていて嬉しかった。でも、この美しい情景に続いて、血しぶきの飛ぶ殺戮シーンが描かれていることは、初めて認識した。実は、この絵巻のストーリー、よく知らないのである。

 近世美術では、俵屋宗達の『扇面散屏風』。本物は初めてかもしれない。八曲一双(めずらしい?)の金屏風に計48枚の扇面が散らされていて、平治物語や伊勢物語、時には草花図などが描かれている。一見、華やかだが、血なまぐさい物語や恐ろしい光景が紛れ込んでいて、そのミスマッチ感に引き付けられる。

 最後に先頭に戻り、正倉院宝物を重点的にチェック。だいたい、近年の正倉院展に出品されたことがあるものが多かったように思う。正倉院展だと、必ず見どころの細部写真をパネルで掲示してくれているんだけれど、そういうサービスが無かったことが、やや不満。図録を見ながら、じっくり復習中である。

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