見もの・読みもの日記

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魅力全開/皇室の名宝(東京国立博物館)

2009-10-10 23:55:23 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 特別展『皇室の名宝―日本美の華』(1期:2009年10月6日~11月3日)

 3連休の初日。たまたま、平日と同じ時間に目が覚めたので、これ幸い、布団を出て、上野に向かった。9時40分くらいに東博に到着。入口に行列はできていない。よかった。本展は、天皇即位20年を記念して、宮内庁所蔵の名品を紹介する展覧会。第1期の目玉は何と言っても伊藤若冲の『動植綵絵』30幅だろう。

 さて、その『動植綵絵』は、第1会場の2番目の展示ホールにあることを確認。開館から10分後とは思えない人の入りだが、30幅いずれも素晴らしくて、阿修羅展のように観客の注目が一点集中にならないので、なんとか見られそうだ。

 そこで、冒頭に戻って、ゆっくり見始める。伝狩野永徳筆『四季草花図屏風』は、極端な近接描写が面白い。遠近感が霍乱されて、庭の石組みが、遠くの山の尾根のように見える。伝狩野永徳筆『源氏物語図屏風』は、源氏と思しき人物に口髭が描き添えられているのに驚く。晩年はともかく、若紫の場面(源氏18歳)なのに…。近世初期の風俗の反映かな。あ、狩野永徳の『唐獅子図屏風』!と思ったら、左隻は曾孫の常信の筆だという。永徳描く2頭の獅子が王者の風格を漂わせるのに対して、常信の獅子は、どこかひょうきん(ウナギイヌに似ていないか?!)。

 『萬国絵図屏風』一双は、右隻に8人の騎馬王侯と28の都市の図、左隻に世界地図と様々な国の男女を描く。8人の騎馬王侯図は、記憶力テストみたいなところがあって、家に戻って確かめたところでは、右端から(1)番目と(2)番目は、サントリー美術館蔵『泰西王侯騎馬図屏風』(1)(2)と一致。(3)(4)は神戸市立博物館蔵の屏風(1)(2)とほぼ一致。(5)はサントリー(3)と一致。(6)を措いて、(7)は神戸(3)。(8)は不明、馬だけ神戸(4)に似ていなくもない。「皇室の名宝」には、明治期に献納されたものが少なくない。この屏風は、元来、誰が制作(を依頼)し、どこに伝来したものなのだろう? 図録を買えば分かるかと思ったが、「伝承は不詳であるが、明治天皇の御座所に常に置かれていたと伝えられている」とあっただけ。
 
 『動植綵絵』は何度見てもいい。妖しさ全開の『旭日鳳凰図』もお忘れなく! 若冲ブームを言われて久しいが、まだまだ幅広い世代に新しいファンが増えているようで、若冲さん、よかったね、としみじみ思う。しかし、この『動植綵絵』は、最近、公開しすぎではないのか? 劣化の心配はないのか?と、ちょっと気になる。

 これでもう、見るべきものは見尽くした、あとはサラリと行こう、と思ったのだが、次の部屋に、すごい人だかりの展示ケースが。岩佐又兵衛筆『小栗判官絵巻』である。これは並んでも、最前列で見たい。巨大な閻魔大王が、嬰児のように小さくはかなげな小栗の手を取って、再生に導こうとする場面、息を呑むような迫力だった。この絵巻は全15巻。今回は、巻1、11、13の公開。家に帰って、2004年の岩佐又兵衛展(千葉市美術館)の図録を見たら、巻1、2、8、10、15が公開されている。そうそう、巻2の龍が迫力だった。なんとか、全巻・全場面、公開してくれないかなあ。こういうときこそ、デジタルアーカイブだろう!

 あと、第1会場では、全く知らなかった長澤蘆雪の『唐子睡眠図』を、私のお気に入りに加えた。蘆雪は、こういう巧まざる小品が抜群にいいなあ。第2会場は、近代工芸中心なので、今度こそサラリと行くだろうと思ったが、足を止めてしまうものが多かった。並河靖之の『七宝四季花鳥図花瓶』は、彼にはめずらしい大作。濤川惣助の『七宝月夜深林図額』は、観客が「七宝?」と驚いていく(これ、三の丸尚蔵館でなく”用度課”所管なんだ)。川島甚兵衛の川島織物(壁掛け)とか、大連窯業(ガラス花瓶)とか、青磁会社、七宝会社など、共同体(企業)が保持していた技術力の高さも印象的である。

※公式サイト
http://www.bihana.jp/

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