見もの・読みもの日記

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近代の名所絵いろいろ/名所絵から風景画(三の丸尚蔵館)

2017-06-15 00:46:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
三の丸尚蔵館 『名所絵から風景画へ-情景との対話』(2017年3月25日~6月25日)

 出光美術館を見た帰りに、ふらりと寄った展覧会だが、面白かった。いろいろ知らなかった作品に出会うことができた。逸名(雲谷派)の『唐土名勝図屏風』(江戸中期)は八曲一双の大画面。絹本墨画、小さな人物のみ胡粉(?)で彩色して際立たせている。右隻は西湖周辺、左隻は金山寺周辺の風景を描くというが、展示は右隻だけだった。「霊隠寺」「銭塘門」などの地名が書き付けてあった。唐俊筆『太崋山図』(清代)も巨幅で、舶来もの。やはり中国の風景は大画面がよろしい。

 『青緑耶馬渓真景図』(斎藤畸庵、明治13年)は緑したたる耶馬渓、『耶馬渓図』(塩崎林浄、大正4年)は紅葉の耶馬渓を描いたもの。どちらも横長の図巻様式で、次第に山奥に入っていく様子が描かれる。羅漢寺の洞窟らしきものも。かつて耶馬渓を訪ねたときの記憶がよみがえって楽しかった。当時、人気沸騰の行楽地だったのだろうな。『金剛秋色図巻』(福田眉仙、大正11年)は、朝鮮半島の金剛山を描く。これも「九龍淵」「彩雲峯」などの地名が書き入れられており、「字が書いてある」と不思議がっているお客さんがいた。自然の美しさの捉え方は、西洋近代の「風景画」ふうであるけれど、まだ地図や観光案内の要素を含んだ「名所絵」なんだなと気づく。

 『石脳油産地之真景』(児島果亭、明治43年)三幅対は、一見、よくある墨画の山水画だが、日本の石油産業の祖である石坂周造が献納したもので、石油の採掘地を描いている。1枚目はよく分からなかったが、2枚目と3枚目には、柱を組んだ逆三角形の石油汲み上げ櫓が小さく描かれ、淡い朱を差した旗が立っている。ただし、それ以外は、人の姿もなく、のどかな(むしろ荒涼とした?)山間の風景である。

 『北海道忍路高島真景』(野村文挙、明治43年)は、皇太子(大正天皇)の北海道行啓を記念して、小樽区から献納されたもの。青い海に面した夏の忍路、月に照らされた雪景色の高島岬が描かれている。札幌から小樽あるいは余市へ鉄道で日帰り旅をしたときの車窓の記憶がよみがえって懐かしかった。近代になっても日本画の「風景画」は、どこか「名所画」の要素があって、「地名」の情報とセットで味わうものだと思う。

 その点、洋画は「地名」に頓着しない。山本森之助『夾竹桃』は、葉山あたりの海を思い浮かべていたが、あとで図録を立ち読みしたら、瀬戸内の風景らしかった。しかし、そんなことはどうでもよいと思えるのが近代の風景画である。
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