見もの・読みもの日記

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雅楽公演・伝統音楽の美(国立劇場)

2012-10-02 23:20:28 | 行ったもの2(講演・公演)
国立劇場 平成24年度(第67回)文化庁芸術祭オープニング・国際音楽の日『伝統音楽の美-雅楽-』(2012年10月1日、19:00~)

 本当は『伝統音楽の美-日中伝統の音を聴く』と題して行われるはずの公演だった。当初、企画されていたプログラムをここに記録しておこう。

・福建南音「四時景」「四宝独奏」「梅花操」「走馬」(福建省泉州南音楽団)
・雅楽 管弦「平調音取」「老君子」「陪臚」(宮内庁式部職楽部)
・舞楽 「萬歳楽」「抜頭」(宮内庁式部職楽部)
・梨園戯「玉真行」「賞花」「大悶」(福建省梨園戯実験劇団)

 まさに夏の中国旅行に出かける当日が「あぜくら会」のチケット売り出し日で、自宅のパソコンからチケット予約をかけて、空港に向かった記憶がある。ところが、その後、日中関係がもつれにモツレて、先週、「諸般の事情により、出演を予定しておりました福建省泉州南音楽団及び福建省梨園戯実験劇団が来日を取りやめ」ることになってしまった。あーあ。予想はしてたけど、ガッカリ。

 チケット代は全額返金。しかし、日本側の管弦・舞楽公演は行うという(観覧無料)。ある意味、お得になったと言えなくもない。そもそも中国の楽団・劇団目当てで誘った友人たち(いつもの中国旅行仲間)も来てくれるというので、予定どおり、出かけた。

 はじめの管弦は「老君子」の次に「五常楽 急」がプラスされた。「老君子」「五常楽 急」「陪臚」いずれも唐楽である。というか、パンフレット(これも無料)によれば、管弦で高麗楽はほとんど演奏されないのだそうだ。「陪臚」がいちばん勇壮な感じがした。空気を震わす太鼓の音が耳に残る。これは林邑八楽(※天平8年、天竺僧の菩提僊那と林邑僧の仏哲が我が国に伝えた曲目)の一で、五破陣楽の一にも数えられる。

 天平年間の伝来というけど、どのくらい古体を残しているのか。実は江戸時代の「復興」要素が強いんじゃないかな―などと言い合いながら聴いた。

 休憩時間のあと、幕が上がると、舞台の奥に控える楽人たちは、キラキラの「舞楽」装束に着替えていた。さっきまでが地味な直垂姿だったので、その落差が眩しい。舞楽「萬歳楽」が始まる。唐楽、左方の四人舞。唐の賢王の世を寿いで飛来した鳳凰の姿を現す。めでたくて、優美で、いかにも雅楽らしい舞だと思う。イケメン男子の舞人だったら、もっとイイだろうな…。宮内庁式部の高い芸術性にケチをつけるわけではないが。

 続いて「抜頭」。唐楽、林邑八楽の一つ。どことなく西アジアふうな、エキゾチックで、勇壮だけど寂しげな曲調。眉をつりあげ、金色の目を剥き、天狗のような赤ら顔のお面を付けた舞人が、ずんずんと大股で登場する。たぶんかなり大柄な舞人で、大柄なほうが似合う曲目である。「唐の妃が嫉妬して鬼になり楼(たかどの)を破り出て舞う姿」とか「胡人の子が親の仇である猛獣を殺して喜ぶ姿」とか、諸説あるが、エキセントリックな情念の表現であることは確かだ。何度も両腕を高く差し伸べ、髪を振り乱して、懊悩するように天を仰ぐ。

 いや面白かった。余談だが、二階席の最前列に皇太子夫妻がお見えで、二階席は全て赤いリボンをつけた関係者らしかった。そういえば、開演前に外のベンチで友人を待っていたとき「お待ち合わせですか? お入りのときだけ(←誰が、と言わない)ちょっとお立ちいただいてもいいですか?」と、慇懃に声をかけられたのはそういうことであったのか。

※抜頭面(しろくま堂オンラインストア)…怖い。

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