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見もの・読みもの日記

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メディアとしての絵葉書/ていぱーく

2005-11-02 08:21:56 | 行ったもの(美術館・見仏)
○ていぱーく(逓信総合博物館) 特別展『梨本宮妃殿下コレクション~日仏絵はがきの語る100年前』

http://www.teipark.jp/

 たまたま、先日読んだ新刊本、『漫画が語る明治』の「あとがき」で、この展覧会の存在を知った。梨本宮伊都子妃が収集した、明治大正期の絵葉書コレクションの展覧会である。写真を使用したものもあるが、多くは、言葉どおり、「絵(マンガ)」葉書だった。

 伊都子妃(1882-1976)は、旧佐賀藩主、鍋島公爵家の令嬢として生まれ(イタリアの都、ローマ生まれなので伊都子)、宮家のひとつ、梨本宮家に嫁いだ。朝鮮最後の皇太子妃・李方子の母親でもある。波乱の戦中・戦後を生き抜き、「最後の貴婦人」と呼ばれたそうだ。

 コレクションの中核は、伊都子妃が、1909年、欧州訪問の際に収集したフランスの絵葉書である。最初のセクションは、フランスの風俗絵葉書で、足元には細いハイヒール、頭上には特大の帽子をかぶって(または大きく髪を結って)意気揚々とした女性たちを、他愛ない揶揄をこめて描く。

 次のセクションは、日露戦争に関する風刺絵葉書。ロシアは白熊、日本は犬に見立てられている。どっちが勝っても、苦しむのはCoree(韓国)。貧乏国の日本が、大敵のロシアと戦えるのは、後ろで金を与えている英国がいるから――というのが、当時のフランス人の見た日露戦争だった、ということが分かる。

 関連して、逓信総合博物館所蔵の、日露戦争当時の野戦郵便局の写真が展示されており、これが興味深かった。「オオリョクコウ(鴨緑江)ダイ4ヤセンユウビンキョク」という貼り紙を出した田舎家で、無精ひげの男たちが、郵袋を開け、郵便物を選り分けている。戦争には、さまざまな仕事が付随するのだなあ、と感慨深く眺めた。

 日本を描いた漫画家として著名な、ビゴーのイラストもあった。日露戦争当時、既にフランスに帰国していたビゴーは、戦争特派員の依頼を断り、もっぱら日清戦争時代のスケッチをもとに、週刊誌等に寄稿していたという。三頭身のマンガもあれば、出征兵士を見送る家族や、戦場での埋葬(半纏を着た職人たちが墓を掘り、紋付姿の神主が葬式を執り行う)を写実的に描いたスケッチもあった。

 最後は、日本の風俗絵葉書で、ハイカラーと庇髪の男女、学生どうしのできちゃったカップル、新聞を読む女と炊事する男などを、戯画的に描いている。テレビもラジオもなく、電話も普及していなかった時代、絵葉書って、私信であると同時に、公共メディアだったんだなあということを、あらためて知る展示会である。
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