「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

男性は女性よりなぜ早死に?

2018年06月01日 | 復刻シリーズ

アルファベットの「Y」という文字を見るとミステリーファンの一人として、ついエラリー・クィーンの「Yの悲劇」を連想する。

最後になって「ありえない犯人」の実像が示され、誰もが納得せざるをえないその緻密な論理構成はまことにミステリーの金字塔にふさわしい。

それはそれとして、今回は同じYでも
「Yの哀しみ」という遺伝子の話。

ご承知のとおり男性はXYの染色体(女性はXXの染色体)を持っているが残念なことにそれは基本仕様ではなく、生まれたときに片方にそのY遺伝子という貧乏くじを引いたばかりに女性よりも短命になっているという話である。

    「本が好き」〔光文社月刊誌)    

本誌に「できそこないの男たち~Yの哀しみ~」(36頁)というのがある。著者の福岡伸一氏は青山学院大学理工学部(化学・生命科学科)教授。

2016年の時点で日本人男性の平均寿命(生まれたばかりの男子の平均余命)は80.98歳であり、対して女性の平均寿命は87.14歳。ゼロ歳の時点ですでにおよそ6年もの差がある。

「女性の方が長生きできる」
この結果はすでに人口比に表れている。現在、日本では女性の方が300万人多いが、今から50年たつとその差は460万人にまで拡大する。

男女数の差は年齢を経るほどに拡大する。80歳を超えると男性の数は女性の半分になる。100歳を超える男性の数は女性の5分の1以下にすぎない。中年以降、世界は女性のものになるのである。

どうして男性の方が短命であり、女性のほうが長生きできるのだろうか。諸説ある。

☆ 
男の方が重労働をしているから
☆ 
危険な仕事に就くことが多いから
☆ 
虐げられているから
☆ 
男の人生の方がストレスが大きいから

いずれももっともらしい理由だが、6年もの平均寿命の差を生み出す理由としては薄弱である。

著者が着目したのは上記の理由がいずれも環境的要因に限られていることで、むしろ
生物学的な要因
に原因があるのではと焦点を当てて検証が進められていく。

その結果、世界中のありとあらゆる国で、ありとあらゆる民族や部族の中で、男性は女性よりも常に平均寿命が短い。そして、いつの時代でもどんな地域でも、あらゆる年齢層でも男の方が女よりも死にやすいというデータが示される。

結局、生物学的にみて男の方が弱い、それは無理に男を男たらしめたことの副作用
とでもいうべきものなのだという結論が示される。

その証として、取り上げられるのが日本人の死因のトップであるガン。

ガンは結構ポピュラーな病だがそれほど簡単にできるものではない。細胞がガン化し、際限ない増殖を開始し、そして転移し多数の場所で固体の秩序を破壊していくためには何段階もの「障壁」を乗り越える必要がある。

つまり多段階のステップとその都度障壁を乗り越えるような偶然が積み重なる必要があって、稀なことが複数回、連鎖的に発生しないとガンはガンにはなりえない。

それゆえに、確率という視点からみて
ガンの最大の支援者は時間
であり、年齢とともにガンの発症率が増加するのは周知のとおり。

もうひとつ、ガンに至るまでに大きな障壁が横たわっている。それが個体に備わっている
高度な防禦システム、免疫系
である。

人間が持つ白血球のうちナチュラルキラー細胞が、がん細胞を排除する役割を担っているが、何らかの理由でこの防禦能力が低下するとガンが暴走し始める。

近年、明らかになってきた免疫系の注目すべき知見のひとつに、性ホルモンと免疫システムの密接な関係がある。

つまり、主要な男性ホルモンである
テストステロンが免疫システムに抑制的に働く
という。

テストステロンの体内濃度が上昇すると、免疫細胞が抗体を産生する能力も、さらにはナチュラルキラー細胞など細胞性免疫の能力も低下する。これはガンのみならず感染症にも影響を及ぼす。

しかし、テストステロンこそは筋肉、骨格、体毛、あるいは脳に男性特有の男らしさをもたらすホルモンなのだ。

男性はその生涯のほとんどにわたってその全身を高濃度のテストステロンにさらされ続けている。これが男らしさの魅力の源だが、一方ではテストステロンが免疫系を傷つけ続けている可能性が大いにある。

何という両刃の剣の上を男は歩かされているのだろうか。

以上が「Yの哀しみ」の概略。

結局、「男性がなぜ女性よりも早死に?」の理由は「男性に生まれたばかりにYというありがたくない染色体を無理やり持たされ、男らしさを発揮した挙句に早死に」というのが結論だった。

ただし、同じ男性でも当然のごとくテストストロンの量に濃淡の差があるような気がする。

たとえば濃いタイプは筋骨隆々として野性味あふれた男らしい人物、その一方淡いタイプは「柳に風」のような細身の神経質そうな人物に色分けされ、前述した論調によると前者は「太くて短い」人生に、後者は「細くて長~い」人生とに分けられそうだ。

そして、クラシック音楽ファンともなるとことの性質上どうも後者に分類されるような気がするが、人生は「太くて長~い」が一番いいにきまっているので、どうもままならないのが残念(笑)。


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