漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「麻マ」<麻の皮から繊維を作る> と「摩マ」「磨マ」「魔マ」

2022年12月01日 | 漢字の音符
 マ・バ・メ・あさ  麻部

解字 「广(やね)+大麻草2本の皮をはぐ形」の会意。麻は、刈り取った大麻草を广(室内)で皮をはいで繊維にする作業を表す。はいだ皮は煮てから「麻挽(おび)き」といって小さな刃物でこするようにして皮の不純物を取り去る。麻は、植物のアサの意のほか、麻の花や葉から出る麻薬の成分に「しびれる」意をもつ。新字体は「广+林」に変化する。
 
麻畑(「すえドンのフォト日記」より)
意味 (1)あさ(麻)。クワ科の一年草。茎の皮から繊維をとり麻糸にする。「麻布マフ」(麻糸で織った布) (2)しびれる。しびれ。「麻酔マスイ」「麻痺マヒ」「麻薬マヤク」(3)地名。「麻植おえ」(麻を植える意。麻の栽培と関連ある地名)
麻緒の作り方
麻蒸し桶(「智頭麻まつりポスター」より)
①生育した麻を刈り取り、揃えて束にする。②麻蒸し桶にいれて蒸して皮をやわらくする。③皮をはぐ。はいだアラソを木灰汁(あく)で煮る。④アラソを「麻挽(おび)き」といって小さな刃物でこするようにして皮の不純物を取り去りコギソにする。⑤コギソを竹竿に掛けて陰干しして精麻(麻繊維)になる。

イメージ
 「あさ」(麻) 
 大麻草の成分に「しびれる」(痲・魔)
 はいだ皮を木灰汁(あく)で「煮る」(糜)
 大麻草の皮を麻挽(おび)きする作業の「こする」(摩・磨)
 精製した「麻の緒」(縻・靡)
 「形声字」(麿・嘛・麼) 
 「その他」(麾)
音の変化  マ:麻・痲・魔・摩・磨・嘛・麼  キ:麾  ビ:糜・縻・靡  まろ:麿

しびれる
 マ・しびれる  疒部
解字 「疒(やまい)+麻の略体(しびれる)」の会意形声。体がしびれる症状。
意味 しびれる(痲れる)。しびれ。(=麻)。「痲痺マヒ=麻痺」「痲酔マスイ=麻酔」
 マ  鬼部
解字 「鬼(おに)+麻(しびれる)」 の会意形声。人をしびれさす鬼。
意味 (1)まもの。悪い鬼。「悪魔アクマ」「魔王マオウ」「魔物マモノ」 (2)あやしいわざ。ふしぎな術。「魔法マホウ」「魔術マジュツ
煮る
 ビ・ミ・かゆ・ただれる  米部
解字 「米(こめ)+麻バ⇒ビ(煮る)」の会意形声。米を煮る意で、かゆの意。転じて、ただれる意となる。
意味 (1)かゆ(糜)。米をやわらかく煮たもの。「糜粥ビシュク」(糜も粥も、かゆの意)「糜沸ビフツ」(かゆが沸騰する。入り乱れる)「肉糜ニクビ」(ひき肉のはいったお粥) (2)ただれる(糜れる)。「糜爛ビラン」(ただれる)
こする
 マ・する・さする  手部 
 
麻挽きの作業(「すえドンのフォト日記」より)
解字 「手(て)+麻(こする)」 の会意形声。手でこすること。
意味 (1)する(摩る)。さする(摩る)。こする。「摩擦マサツ」「按摩アンマ」(按はもむ摩はさする)「摩滅マメツ」(すりへる=磨滅) (2)せまる。とどく。「摩天楼マテンロウ」(天にとどくような建物) (3)梵語の音訳語。「摩耶マヤ」(釈尊の母)
 マ・みがく  石部  
解字 「石(いし)+麻(こする)」 の会意形声。石でこすること。
意味 (1)みがく(磨く)。とぐ。「研磨ケンマ」 (2)する(磨る)。すりへる。「磨耗マモウ」 (3)ひきうす。いしうす。「磨石マセキ」(いしうす)「磨磑マガイ」(いしうす。ひきうす。=磨子マシ) (4)つとめる。はげむ。「錬磨レンマ」「琢磨タクマ」(玉をすり磨く意。学問・技芸にはげむ)「切磋琢磨セッサタクマ」 (4)梵語の音訳語。「達磨ダルマ
麻の緒(麻繊維)
 ビ・ミ・きずな・つなぐ  糸部
解字 「糸(ひも)+麻の旧字バ⇒ビ(麻の緒)」の会意形声。麻の緒のひも。[説文解字]は「牛の轡(くつわ)なり」と牛の鼻綱とする。つなぎとめるひもをいう。
意味 (1)きずな(縻)。つなぎとめるつな。「縻切ビセツ」(切りはなつ) (2)つなぐ(縻ぐ)。「羇縻キビ」(①つなぎとめること。羇は馬の手綱、縻は牛の引綱、②中国歴代の異民族対策。自治を許して武力によらず間接的に治める。=羇縻の策)
 ビ・なびく  非部
解字 「非(左右にならぶ)+麻の旧字バ⇒ビ(麻の緒)」の会意形声。精製した麻繊維を竹竿にかけならべて干すこと。微風になびく意となる。なびく意から、軽やかで美しい意となる。
意味 (1)なびく(靡く)。「靡然ビゼン」(なびくさま)「靡靡ビビ」(なびきしたがう)(2)うつくしい。「靡曼ビマン」(しなやかでうつくしい)「靡麗ビレイ」(華美) 
形声字
麿 <国字> まろ  麻部
解字 麻(マ)と呂(ロ)を合わせて一字にした国字。
意味 (1)われ。おのれ。自分の代名詞。「麿まろが父」 (2)人の名に添える語。「人麿ひとまろ」(=人麻呂)「田村麿たむらまろ」(=田村麻呂)
 マ  口部
解字 「口(くち)+麻の旧字(マの音)」の形声。マという発音を口から出すこと。
意味 マの発音を表す音訳漢字。チベット語のLama(ラマ)のマの音を表す。「喇嘛教ラマキョウ」(チベット仏教の俗称)
 マ・モ  幺部
解字 「幺(ちいさい)+麻の旧字(マ・モ)」の形声。マ・モの音で、ちいさい・ほそい意をあらわす。また、疑問の助詞や話題にする事柄を指す語に用いる。モは唐音。
意味 (1)ちいさい。ほそい。かすか。「細麼サイマ」(こまかい)「麼虫マチュウ」(微細な虫) (2)疑問の助詞。「什麼ジュウモ」(なんの。どんな)「作麼生ソモサン」(いかが。いかに。さあどうじゃ。中国宋代の俗語) (3)話題にする事柄を指す指示語。「恁麼二ンモ」(このような。そのような)

その他
 キ・さしずばた  麻部  
解字 「麻の旧字(=靡(なびく)の略体)+毛(手の書き誤り)」の会意。後漢の[説文解字]は、「手+靡」から成り、指揮する旗としている。靡はなびく意があり手とあわせて、靡(なび)くもの(旗)を手でとり指揮する意。とすると、現在の字体は麾なので、麻は靡の略体、毛は手の書き誤りということになる。書体がこうも変化するものかと驚く。
意味 (1)さしずばた(麾)。合図の旗。指図をしたり目印に立てる旗。「麾下キカ」(①大将の旗もと。②将軍直属の兵士)「麾鉞キエツ」(さしずばたとまさかり。ともに大将が用いるもの) (2)さしまねく(麾く)。指示する。手招きする。「麾呼キコ」(さしまねき呼ぶ)
<紫色は常用漢字>

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