若林鉱物標本の最も特徴的な標本は、やはり、荒川鉱山産の黄銅鉱だろうと思います。それは若林彌一郎が荒川鉱山の鉱山長をやっていたからで、様々なタイプの黄銅鉱の結晶を質・量共に特権的に集められたからだろうと思います。
実は、「石の華」コレクションの黄銅鉱の結晶で、産地不明のものがあったのですが、今回の2回目の見学で、それに似たものをみつけました。
まず、「石の華」コレクションの黄銅鉱の写真です。
この荒々しい姿が気に入っておりました。
次は、若林鉱物標本の黄銅鉱の中のひとつです。荒川鉱山産です。
どうでしょうか?若林鉱物標本の方が古く黒ずんでいますが、結晶形態は非常によく似ていると思います。
このような特殊な晶癖は、同じような地質環境下で生成されると考えられますので、両者の産地は同じ可能性があると思われます。
それにしても、両者のこの形態や質感は、どういう結晶成長を物語っているのでしょうか?
もしかすると、方解石とか何か別の鉱物が成長干渉したのでしょうか?それとも別の要因が関係したのでしょうか?
また、謎は深まるばかりです。
先週土曜日の2回目の若林鉱物標本展見学では、初回に見た時よりも、何か余裕を持って見る事が出来たような気がしております。
まず、誰かが国宝級と言ったらしい例の荒川鉱山産三角式黄銅鉱の軍配型双晶に関しても、じっくりと拡大率を上げて写真を撮る事ができました。
すると、どう見ても一つの双晶ではなく、軍配部分と枝(棒)の部分は接触している別の結晶で、二つが絶妙に接合しているように見えます。
もしそうだとしても、この標本の価値は、変わらないのですが・・・
そして、もう一つ、この三角式黄銅鉱の双晶も非常に気になってしまいました。
上の写真がそれです。
これは、何と言うか?三角式黄銅鉱の双晶が板状に開いているように見えます。その開いている角度には何か?秩序のようなものが感じられます。
これは何なのでしょうか?私は初めて見たもの(気づいたもの)なので、困惑しております。
三角式黄銅鉱は日本の東北地方の日本海沿岸でのみ産出すると言われておりますが、それがどうしてなのか?その地質的特徴とは何なのか?疑問は深まり広がるばかりです。
それから、ミネラフロントの方の展示物では、耳付双晶と共に、厚みを持った三角式黄銅鉱の双晶らしき標本がありました。写真はNGだったので無いのですが、こちらも気になってしまいました。
先週の土曜日は、日帰りで東京に行って参りました。(今年も同時期に開催中の名古屋ミネラルショーの方はパスしました。)
その目的は二つ、一つ目は特別講演会「若林鉱物標本:その概要と歴史、そして、特別展示の企画・実現」を聴講する事で、もう一つは以前から気になっていたミネラフロント見学でした。
東京大学総合研究博物館にはお昼過ぎに到着し、講演会が始まるまで、若林鉱物標本展を見ました。4月に来た時には、石川県産のものを探しながら写真撮影に専念しておりましたので、見逃しが多かったのですが、今回も新たな発見が相次ぎました。その辺の話題は後日改めて書きたいと思います。
現地では、あらかじめ合流の話をしていたKさんにお会いしました。kさんからお借りしていた「Wakabayashi Mineral Collection」をお返し、お土産を渡しました。すると、今回も、また、とんでもないものを頂きました。
上の写真がそれですが、それは何と!尾小屋鉄道の線路の枕木の釘でした。Kさん曰く「二つ持っているので、お一つどうぞ!」非常に貴重なものを頂き感激しました。
講演会が始まるまで、Kさんと様々な鉱物・鉱山関連の情報交換をしました。
時間ちょうどに三河内 岳教授の講演が始まり、若林鉱物標本のタイトル通りの説明がありました。
講演の最後の方で、皆さんが非常に気にしている今回の展示会の図録の話がありました。
上の写真は、図録に関する部分のパワーポイントの画面です。発刊するようで安心しました。待ち遠しいですが、発刊日まで待ちます。
特別講演会が終わって、Kさんと二人で、次のミネラフロント(鉱物資源フロンティアミュージアム)がある工学部3号館まで移動しました。
東京大学のキャンパスは広く、たどり着くまでに多少迷いましたが、そのSite2が終了する時間前に辿り着きました。
そこでの写真撮影はNGだったので、写真はありませんが、その展示物のレベルの高さに感動しました。そこには尾去沢鉱山や足尾鉱山などの鉱夫から寄贈された一級品の標本が並んでおり、非常に興奮しました。
展示解説の方もいらっしゃって、Kさんと二人で、テンション高く見学させていただきました。
その後、Site1に移りました。こちらの方は写真撮影OKでした。
数点だけ写真紹介します。
こちらでは、私が特に気になったのは、海底の泥の中にあったという微細な十字沸石の結晶でした。それらが深海の海底に堆積している、という事自体に、何か不思議な感動を覚えます。
東京大学の工学部は上野駅に比較的近い距離だったので、不忍池の方から上野駅まで歩いて行きました。そこから北陸新幹線かがやきで帰途に就きました。
今日の恐竜を思わせる鉱物は、スペイン産の虹の石です。
上の写真がそれです。
これを最初にミネラルショーで見つけたのは約25年前です。その近辺に、恐竜化石のレプリカやコプロライト(恐竜の糞化石)などもあったことから、てっきり、それもコプロライトではないかと勘違いしました。
それも美しく虹色に輝いており、とんでもない珍品に違いないと思いました。
実際は、恐竜の生痕化石などではなく、酸化した針鉄鉱の膜の薄膜干渉で構造色として虹色になっていた純粋な鉱物でした。
その当時から、私の興味は、化石よりも鉱物の方にあったので、化石の知識はそれほどでもありませんでした。
ただ、見た目に美しいものに関しては、鉱物や化石の違いを問わず、もっぱら美の視点でコレクションしておりましたので、蒐集品の仲間入りになったのです。
今回の「恐竜を思わせる鉱物」の中に入れても良いような気がしましたので、紹介することにしました。
昨日、「恐竜を思わせる鉱物2」を書いた後、玄能石の仲間のイカ石で、芸術的な標本があった事を思い出しました。
今朝は、店内のバックヤードでそれを探し出す作業をやっておりました。
つい先ほど、ようやくそれが出てきましたので、今日は「恐竜を思わせる鉱物2.5」としてブログアップさせることにします。
上の写真がそれです。
これはロシアのカレリア地方オレニッサ産のイカ石です。
どうでしょうか?恐竜の表皮を思わせるイガイガ部分と球状コンクリーションの部分が絶妙に共存しております。
このような鉱物的要素と化石的要素を兼ね備えた標本には、自然の造った芸術と言った表現が当てはまるような気がしております。
「恐竜を思わせる鉱物」は、まだ続きます。