白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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本因坊戦第1局感想

2016年05月10日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本因坊戦第1局は挑戦者高尾九段の白番中押し勝ちでした!
高尾九段の名局だったと思います。
2日目の名場面を振り返ってみましょう。



封じ手は予想通り左下隅の押さえでした。
その直後の黒△の置きから局面が大きく動きました。
この手は2間開きに対する常套手段です。




当然白1と遮ってきますが、黒2以下捨石で締め付けるのが狙いです。
白11となれば先手で左辺の黒一団を強化する事ができました。




その締め付けを嫌って、白1と打ちたくなる所です。
ただし黒2にも白3と悠々伸びていると黒4と逃げられて左上の白が危ないので・・・




このように3子を取っておくぐらいだと思いました。
やはり締め付けられてしまいますが、取れる石が1つ増えたので白としても我慢しておこうかという気になります。
この図に進む事が予想されました。




しかし、実戦は白5と締め付けを断固拒否!
これは驚愕の一手でした。
何故なら・・・




黒1~5と脱出されると、同時に白6子が取られてしまうからです。
何故そんな道を選んだのでしょうか?




続いて、このように進行しました。
ここに至って白の意図が明らかになりました。
中央に勢力を築いて左右の黒一団のどちらかを取ってしまおうというのです。
なんとも遠大な構想でした。




その後左下黒のシノギを巡って黒△まで進行しました。
白3子は取られたわけではなく、当然動き出す所ですが・・・




すぐに動き出すとどうなるでしょうか。
この部分に関しては一本道です。
当たり当たりとやって・・・




黒1の時に、△の眼を潰したいので白2の当てです。
黒もそれに反発して3と取りに行き、コウになります。




そして最終的にはこのような振り替わりになります。
6子が復活した上に黒を取っているので白良しと思われるかもしれませんが、これは黒良しです。
ポン抜き30目などと言いますが、中央で白石をポン抜いた黒の厚みは強大です。




実戦はコウを起こす前に白1と準備工作しました。
深い読みに支えられた手で、なんとも巧妙でした。




準備工作が効いて白1のコウ立てができました。
白3となって振り替わりです。
2つ前の図と何が違うかといえば、隅の黒地が消えました。
単純に数字としての得がありますし、それに加えて黒の大石に眼がなくなったことになります。
これが大きく、白はっきり優勢となりました。




黒としては地が無い、弱い石もあると絶望的とも思える状況ですが井山本因坊は諦めません。
黒1~11と必死の頑張りです。
黒△の一団が危ないのですが、左辺の白と刺し違えるぞと言っています。
流石の迫力でした。
実戦は高尾九段が決戦を避け、ヨセ勝負に。
正確なヨセで井山本因坊の追撃を振り切り、勝利を収めました。


本局、井山本因坊の悪手がはっきりしません。
高尾九段の打ち回しが見事だったと言うしかないでしょう。
大勝負にふさわしい名局だったと思います。
第2局以降がますます楽しみになりました!