白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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伊田八段、世界一に挑戦!

2016年11月08日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は、第1回新奥杯の2回戦が行われました。
日本勢で唯一勝ち残った伊田篤史八段は中国の陳賢六段と対戦、見事勝利を収めました!
それでは、早速振り返っていきましょう。



1図(実戦黒23~黒25)
黒番の伊田八段、右辺への打ち込みから仕掛けて行きました。
黒1、3は、自ら「2目の頭」をハネられに行く筋悪な手ですが、白に2線を這わせる事ができるので許されています。
昔からある打ち方ですが、伊田八段らしくもありますね。





2図(実戦白44)
結果は、白△までの分かれとなりました。
黒△を取られましたが、上下の黒が固まったので、黒満足できるかと思いました。
この後黒Aと上辺を構え、白Bには黒Cと挟んで、新たな戦いが始まりました。





3図(実戦白72)
その後、白△とカケた場面です。
ここで普通のプロは、黒Aと左右を裂く手か、黒Bから出切る手しか考えません。





4図(実戦黒73~黒79)
実戦は、なんと黒7までどんどん押しました!
いわゆる「車の後押し」であり、白を強くするので良くないとされています。
黒AとBを見合いにして、どちらかの白に迫ろうということかな?と解釈しましたが・・・。





5図(実戦白80~黒89)
白1と左の白を守った時に、黒Aではなく、黒10と上辺を守りました!
今までの打ち方は何だったのかと思ってしまいますが・・・深い考えがあるのでしょうね。
この後、白Bと上辺に突入して・・・。





6図(実戦白130)
白△まで、ぴったり生きてしまいました。
このあたりでは、伊田八段が大失敗したかと思っていました。
見た目には、白地が随分多く見えます。





7図(実戦黒131~黒133)
ところが、黒1、3が意表の一撃!
中央の白が狙いです。





8図(実戦白134~黒139)
白1~5まで防戦に努めましたが、これだけ手をかけても、まだ黒Aを狙われて完全ではありません。
明らかに白が「よれた」形です。





9図(実戦黒171)
その後、黒△が鋭い!
これで白はしびれました。
黒Aが右側の白に対して先手になるため、白が渡りを止めようとするならBですが・・・。





10図(変化図)
白1には黒2が成立します。
白5と打った時に黒6で、黒AとBが見合いになり、白潰れです。





11図(実戦白172~黒181)
結局、白1と泣く泣く後退する事になりました。
そして右下では黒8、10が強烈!
黒AとBを見合いにしています。
実戦は白Aと2目助けましたが・・・。





12図(実戦白204)
その後、白△までとなりました。
黒△が中に入っていますが、これを取ると3目中手になるので、白は手を出せません。
「セキ」の形であり、白地が0になってしまいました。
こうなってみると、形勢は黒が大差で良くなっています。
井山マジックならぬ、伊田マジックという印象でした。

この後抽選が行われ、伊田八段の3回戦の相手は、なんと中国の柯潔九段!
柯潔九段はしばらく前から、世界ランキングで断トツのトップです。
伊田八段がどう挑むのか、注目です!
幽玄の間で中継されるでしょうが、ぜひ解説も欲しい所ですね。

<11/9追記>
11/10対局です。
宮川史彦八段の解説も付きます!



また、著書の方は、本日見本が届きました。
明日紹介記事を書く予定です。