皆様こんばんは。
本日は第1回神奈川県囲碁まつりに、指導棋士として参加しました。
新しく始まったクラス別の大会で、初級者から県代表クラスまで、棋力に関わらず参加できます。
川崎の京浜川崎クラブでは90名、横浜の宇宙棋院では120名参加と、大規模に開催されました。
私は宇宙棋院の方を担当、14人ぐらいの方々と対局しました。
対局が終わって喜ばれた方もいれば、無念の表情を浮かべられた方も・・・。
どちらの方々にも、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
さて、本日は第1回新奥杯が行われました。
皆さんには聞き覚えの無い棋戦だと思いますが・・・私も分かりません。
中国主催の国際棋戦のようです。
中国では国際棋戦の注目度が高く、次々に新しい棋戦が生まれます。
日本からは若手中心に4名の棋士が参加、その中で伊田篤史八段が見事白星を挙げました。
その対局をご紹介しましょう。
1図(実戦黒21)
黒が伊田八段、白がウ光亜六段です。
ウ六段は井山六冠と同世代の棋士で、かなりの強豪です。
さて、実戦の黒△までの布石は、あまり他の人は打っていない気がします。
伊田八段独特の布石感覚ではないでしょうか。
確か、以前にも同じような布石を打っていました。
2図(実戦白22~白26)
白1と、下辺を補強しながら、左下黒にプレッシャーをかけました。
黒が構わず左上に回ったため、白5と打ち込んで戦闘開始です。
この戦いでは、白の方が石数が多い事に、気を付けなければいけません。
3図(変化図)
黒1、3は、この打ち込みへの基本の対応です。
こう打っておけば間違いないと、私の本にも書いてあります。
しかし、白8までとなった結果は、どうでしょうか?
下辺から右下にかけての白石は、根拠ができて強い石になりました。
一方、黒はAの所に傷があり、厚みと呼べる石ではありません。
黒不満な結果であり、プロには工夫が求められる場面です。
4図(実戦黒27~白36)
実戦は黒1とおまじないをしてから、黒3とツケました。
そして白4に黒5と、切って行ったのがポイントです。
この打ち方は、黒△が切り離されるので、部分的には黒が良くないとされています。
では、伊田八段は何故この打ち方を選んだのでしょうか?
5図(実戦黒37~黒43)
序盤早々、黒1からのコウ仕掛け!
コウ立ては黒3で、黒7まで隅で治まりました。
この結果、白が良く見える方が多いのではないでしょうか?
実際、コウに負けた部分の形は、黒がかなり酷いのです。
しかし、ここは元々白が有利な戦場でした。
そこで苦労せずに治まったのだから、多少の犠牲は払っても構わないという事でしょう。
伊田八段の柔軟な発想でした。
6図(実戦黒57~黒63)
その後左上では、戦いの途中で黒が2回も手を抜き、白有利な戦いになっています。
黒がもがき苦しむようでは、形勢もあっという間に白有利になるでしょう。
そこで黒1~7までは、サバキのコウ仕掛けです。
コウに勝って生きられれば良し、負けてもコウ立てで2手打てれば良しとみています。
7図(実戦白74~白76)
結果は白が1とコウを譲り、黒2と生きる事になりました。
黒△が腐った事は痛いのですが、全体が苦しんで生きるよりは、遥かに良いでしょう。
そして白3と、狙いの切りが来ましたが・・・。
8図(実戦黒77~黒89)
ここは黒が有利な場所なので、緩まず取りに行きました。
黒13まで、攻め合い黒勝ちです。
9図(実戦白98)
その後、戦場は上辺へと移りました。
白△と詰め寄られ、黒△は明らかに弱い石になっています。
一方、左上一帯の白は強い石ですし、右上の白4子は生きています。
つまり、ここは白有利な戦場です。
10図(変化図)
黒1以下、相手の有利な戦場で、まともに戦ってしまった図です。
白10まで、明らかに白有利な戦いになっています。
こうならないよう、黒としては工夫が必要です。
11図(実戦黒99~黒101)
そこで伊田八段の選択は、黒1、3のツケ切り!
この手の狙いは、相手にも弱みを作っておき、サバキを楽にしようという事です。
危険な手のようですが、いざとなればどの石も捨てる用意があります。
12図(実戦黒119)
結果、黒△までの分かれとなりました。
この手で左側の黒石は繋がり、右側の黒石も、白△を取って強い石になっています。
伊田八段の鮮やかなサバキでした!
この後のヨセは調べていませんが、結果は伊田八段が際どく半目勝ちを収めました。
2回戦以降の活躍にも期待しています。
さて、明日からは第64期王座戦第2局が行われます。
敗戦明けの井山王座ですが、それで調子を落とすとは思えません。
勝負の行方は、余正麒七段の戦いぶり次第でしょう。
結果がどうなるにせよ、激しい戦いの碁の予感がします。
お楽しみに!
本日は第1回神奈川県囲碁まつりに、指導棋士として参加しました。
新しく始まったクラス別の大会で、初級者から県代表クラスまで、棋力に関わらず参加できます。
川崎の京浜川崎クラブでは90名、横浜の宇宙棋院では120名参加と、大規模に開催されました。
私は宇宙棋院の方を担当、14人ぐらいの方々と対局しました。
対局が終わって喜ばれた方もいれば、無念の表情を浮かべられた方も・・・。
どちらの方々にも、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
さて、本日は第1回新奥杯が行われました。
皆さんには聞き覚えの無い棋戦だと思いますが・・・私も分かりません。
中国主催の国際棋戦のようです。
中国では国際棋戦の注目度が高く、次々に新しい棋戦が生まれます。
日本からは若手中心に4名の棋士が参加、その中で伊田篤史八段が見事白星を挙げました。
その対局をご紹介しましょう。
1図(実戦黒21)
黒が伊田八段、白がウ光亜六段です。
ウ六段は井山六冠と同世代の棋士で、かなりの強豪です。
さて、実戦の黒△までの布石は、あまり他の人は打っていない気がします。
伊田八段独特の布石感覚ではないでしょうか。
確か、以前にも同じような布石を打っていました。
2図(実戦白22~白26)
白1と、下辺を補強しながら、左下黒にプレッシャーをかけました。
黒が構わず左上に回ったため、白5と打ち込んで戦闘開始です。
この戦いでは、白の方が石数が多い事に、気を付けなければいけません。
3図(変化図)
黒1、3は、この打ち込みへの基本の対応です。
こう打っておけば間違いないと、私の本にも書いてあります。
しかし、白8までとなった結果は、どうでしょうか?
下辺から右下にかけての白石は、根拠ができて強い石になりました。
一方、黒はAの所に傷があり、厚みと呼べる石ではありません。
黒不満な結果であり、プロには工夫が求められる場面です。
4図(実戦黒27~白36)
実戦は黒1とおまじないをしてから、黒3とツケました。
そして白4に黒5と、切って行ったのがポイントです。
この打ち方は、黒△が切り離されるので、部分的には黒が良くないとされています。
では、伊田八段は何故この打ち方を選んだのでしょうか?
5図(実戦黒37~黒43)
序盤早々、黒1からのコウ仕掛け!
コウ立ては黒3で、黒7まで隅で治まりました。
この結果、白が良く見える方が多いのではないでしょうか?
実際、コウに負けた部分の形は、黒がかなり酷いのです。
しかし、ここは元々白が有利な戦場でした。
そこで苦労せずに治まったのだから、多少の犠牲は払っても構わないという事でしょう。
伊田八段の柔軟な発想でした。
6図(実戦黒57~黒63)
その後左上では、戦いの途中で黒が2回も手を抜き、白有利な戦いになっています。
黒がもがき苦しむようでは、形勢もあっという間に白有利になるでしょう。
そこで黒1~7までは、サバキのコウ仕掛けです。
コウに勝って生きられれば良し、負けてもコウ立てで2手打てれば良しとみています。
7図(実戦白74~白76)
結果は白が1とコウを譲り、黒2と生きる事になりました。
黒△が腐った事は痛いのですが、全体が苦しんで生きるよりは、遥かに良いでしょう。
そして白3と、狙いの切りが来ましたが・・・。
8図(実戦黒77~黒89)
ここは黒が有利な場所なので、緩まず取りに行きました。
黒13まで、攻め合い黒勝ちです。
9図(実戦白98)
その後、戦場は上辺へと移りました。
白△と詰め寄られ、黒△は明らかに弱い石になっています。
一方、左上一帯の白は強い石ですし、右上の白4子は生きています。
つまり、ここは白有利な戦場です。
10図(変化図)
黒1以下、相手の有利な戦場で、まともに戦ってしまった図です。
白10まで、明らかに白有利な戦いになっています。
こうならないよう、黒としては工夫が必要です。
11図(実戦黒99~黒101)
そこで伊田八段の選択は、黒1、3のツケ切り!
この手の狙いは、相手にも弱みを作っておき、サバキを楽にしようという事です。
危険な手のようですが、いざとなればどの石も捨てる用意があります。
12図(実戦黒119)
結果、黒△までの分かれとなりました。
この手で左側の黒石は繋がり、右側の黒石も、白△を取って強い石になっています。
伊田八段の鮮やかなサバキでした!
この後のヨセは調べていませんが、結果は伊田八段が際どく半目勝ちを収めました。
2回戦以降の活躍にも期待しています。
さて、明日からは第64期王座戦第2局が行われます。
敗戦明けの井山王座ですが、それで調子を落とすとは思えません。
勝負の行方は、余正麒七段の戦いぶり次第でしょう。
結果がどうなるにせよ、激しい戦いの碁の予感がします。
お楽しみに!