白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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ゆうちょ杯

2016年08月02日 23時26分44秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日はゆうちょ杯の1、2回戦が行われました。
ゆうちょ杯は作家の中野孝次氏設立の中野杯を引き継いだ棋戦、若手の登竜門になっています。
幽玄の間で中継されたので、ぜひご覧ください。
本日ご紹介するのは呉柏毅二段(黒)対許家元四段戦です。
許四段は前回の優勝者です。



黒が左辺に打ち込み、戦いが始まりました。
白△のカケに対して、黒はどう打ったでしょうか?





黒が一歩一歩動いた図です。
生きる事は難しくありませんが、このように小さく生きて白に壁を作らせてはいけません。
白Aの攻め、白Bの打ち込みなどがより有効になるでしょう。





実戦は黒1と変化球を投げました。
白石の多い所で正面から戦うのは得策ではないと見た、サバキの打ち方です。





白1で黒△は動けませんが、捨てても構わないという判断です。
黒2を利かして黒4と引き上げ、苦労せず左辺の白模様を削減出来た事になります。





実戦はそれを嫌って白1と頑張りましたが、黒2とさらに仕掛けました。
黒△とセットの手筋です。





白1とまともに押さえると、黒2のハネ出しが後続手段です。
以下黒10まで進むと白は傷だらけで、どこかの石が取られます。





一例として白4子が取られる図を示しておきます。





そこで実戦は白1と外して受けました。
それを見て黒は2から左辺で生きを図ります。
支離滅裂の打ち方のようですが、黒△に石が残った事に意味があります。





その後このような分かれになりました。
黒△と白△の交換が絶妙に働いた格好で、白2子を取って隅で治まる事が出来ました。





白1のツケに対しては、黒2、4と引いていれば無難です。
白5と打たれて黒△は捨てる事になりますが、黒Aの切り取りを先手で打てます。





しかし黒はそこで満足しませんでした。
黒1と踏み込み、白2には黒3と上辺頑張りました。
さらに黒Aの逆襲まで狙っています。





白1と攻められますが、黒2以下で困らないと見ています。
さらに黒10、12と2子まで助けて目一杯の頑張りです。

その後も黒は一杯の頑張りで勝ちを決めました。
許四段相手に会心の一局だったのではないでしょうか。