今日紹介する『私の運送史-日本運送30年』の巻頭につぎのような一文が掲げられています。
「昭和八年、大橋實次という三十歳を越えたばかりの青年が、兵庫県の播州地帯の東部中央にある加東郡社町(やしろちょう)の町長に就任した。青年町長はただちに三つの目標をたてた。すなわち、膿瘍を守るための灌漑(かんがい)用水の確保、産業開発のための道路の建設、そして地方産業の振興の実践である。この三つの構想のうち、道路建設と地方産業の振興が結びあって東播運輸が生まれ、今日の日本運送へ発展していったのである。」
「大橋實次」、「日本運送」という名を小さい頃から耳にして育ってきました。身近かに日本運送関係の人が多くおられましたし、大橋實次さんは郷土社町が生んだ立志伝中の人であり、郷土が誇るリーダーとして、その名は誰もが知っていました。また、この歴史ブログでも昭和8年代の社町(旧)の諸文書を紹介してきましたが、そこには「社町長 大橋實次」の名前がありました。青年町長として、昭和池の築造、東播産業道路(旧175号)の建設、そして、日本運送の前身である社自動車、さらに東播運輸の運送会社の設立を手がけ、その後の社町はもちろん、東播磨地方、日本のトラック運送業の発展の基礎をつくるという大きな仕事をされています。父(藤本豊治)からも大橋さんの話はよく聞かされました。また、青年期に大橋社長のもとで社市場で仕事をした当時のことも日記に書かれています。
この一冊は、昭和初期から戦後、昭和40年代はじめまでの郷土の発展、交通、運送業などの産業の発展のようすを大橋實次、日本運送を通して知ることができる貴重な本です。父母や親戚、近所の人を通じて大橋さんと日本運送は身近な存在であり、その生き方に多くを学ぶことができます。
トラック運送の歴史に残る重要な会社の歴史を後世にきちんと残してほしい気持ちです。