ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

泣きながら豆をまいた じいさまの話

2023-02-03 08:02:14 | 日記
節分。
今年も迎えることができて感謝です。
煎り豆を年の数だけ食べることは無理(噛むことができても胃の具合が悪くなりますから)ですが、日常での咀嚼には困ることの無い歯が健在しています。

以前所属していた「語りの会」は、全国ネットを含めて昨年すべて退会しました。
でも、「豆まき」の節になると、どうしても語りたい「民話」があるので、田んぼ道をブツブツと「語り」をしながら散歩した私です。
“オニは内 オニは内!”
と、泣きながら豆をまいた じいさまの話を。

“ざーっと むがし”
ある村に、じい様が一人で暮らしていました。
村は秋祭り、神社の太鼓や、笛の音は
「どんどこ ドンドコ」
「ぴーひゃら ピーヒャラ」
と、朝からの賑わいです。

でも、
じいさまを 祭りに誘ってくれる村人は、一人もいませんでした。
三年前に、長年連れ添った婆さまを亡くし、続いて一人息子まで流行り病で亡くしてしまったじい様には、祭りなど来ても来なくても良かったのです。
村人の親切さえ煩わしいだけでした。

じいさまは、暇さえあれば墓参りへ行くのです。
そして、
『俺らぁ独りで淋しくってなんねぇ、早く、おめえたちの所へ呼んでくれや』
そう言って掌を合わせるのでした。

秋祭りも終わり、白いモノが風に交じってチラホラと、
やがて、根雪に。

雪が深くて、じい様は墓参りへ行けなくなりました。

大晦日を迎え、お正月も過ぎて・・・、
待ちきれなくなった じい様は、雪を分けて墓参りへ行きました。
『お前ぇたち、夕べは冷えたんべぇ、これ飲んで あったまれや』
じい様は、冷めないようにと懐に入れて来た甘酒を供えます。

帰りは日暮れになってしまいました。
どこの家からも
〈福は内 オニは外〉
の声が聞こえてきます。
節分だったのです。
じい様は、息子が子どもの頃の「豆まき」の姿を思い出しました。
婆さまも、まだ若くて ニコニコと。

家に戻ったじい様は、
“俺のような不(ぶ)っ幸せものに、福など来るはずはねぇ”そう思って
〈オニは内!オニは内!〉
と豆をまきました。
泣きながら、
〈オニは内!オニは内!〉
涙をポロポロ ボロボロこぼしてまき続けました。

すると、やがて、
赤オニ・青オニが、ドヤドヤと、何匹も押しかけてきました。
「この家(え)は、オニを入れてくれるんか」
と、オニたちは大喜び、オニ達の宴会がはじまります。
「じい様、お前ぇも一緒に飲め!」
オニに言われて、じい様も、震えながら一杯飲みました。

オニたちは、歌ったり 踊ったり。
やがて、じい様まで、
『ヤンレー ヤンレー ヨーイトナ』と踊ります。
オニ達も大喜びで、
「ソーレ ソレソレ ヨーイトナ」と。

〈コケコッコー〉
一番鳥が鳴きました。
オニ達は、そそくさと帰り支度です。
「じい様、じい様、来年また、俺たち来てもいいんか?」
と、尋ねます。
『あぁ、えーとも えーとも、こんな賑やかなことは、三年ぶりじゃ』
「じい様、じゃぁ、約束だぞ」
と言って、オニは、お金や、酒を置いて戻って行きました。

やがて、お日さまも力をつけてきました。
ぽっかぽっかと ぬくい ある日、じい様は 墓参りへ。

オニがくれたお金で、お墓も、少ぅし立派にしました。
お花を供え、線香を立てて、じい様は掌を合わせて言ったのです。
『俺なぁ、まーだ そっちへ行くわけにはいかねぇ。
節分に、オニ達が来るんだ。
オニといえども約束は守んねばなんねぇからな』

じい様の背中にも、お墓にも、ぬくーい風が
「そゆるん そゆるん」
と吹いて来ました。
うめ・もも・さくら、が、もうじき咲くでしょう。

私の大好きな〈オニは内!〉のお話は、これで おしまい。
“ざっとむかしさけぇだ”
              (再話 筆者)
コメント (2)
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