3月から「階段紀行シリーズ」を始めたが、階段は全世界至る所に存在する。それで、この企画はヨーロッパ編と日本編を交互に掲載することにする。今回からは日本編の第一シリーズ「東京」を。
JR東京駅は1914年辰野金吾の設計によって完成したが、この建物の一角に駅の美術館として1988年東京ステーションギャラリーが誕生した。当初は丸の内駅舎中央にあったが、近年の全面リニューアルに伴って駅舎北側に移動、2012年に再オープンしている。
美術館はレンガ造り駅舎の特徴を生かしたレンガ壁の展示室を持つ美術館としてもユニークな存在だが、1階から3階に続く階段もまた独自性を誇っている。
形式は螺旋階段。しかし、丸くアーチを描いて上下するのではなく、四角く縁どられた踊り場を経由して上下して行く。
天井から吊り下げられたシャンデリアと周囲のステンドグラスは、1988年の開業時から設置されていたものを旧館から移設復元されて、白壁に設置されている。
少し深みを帯びた空間、濃紺の奥行きを感じさせる色調が、これも展示作品か、と錯覚させるくらいの美しさを放っている。
下から見上げれば、綺羅星のごとき輝きの中に、階段の形が浮かび上がる。そして中央にシャンデリア。
2階からJR丸の内駅改札口広場が見下ろせる。普段は気付かないが、床に大きな円のデザインが施されているのがよくわかる。
有楽町ビル。名前の通り有楽町のJR有楽町駅すぐ近くにあるビルだ。この1階にある階段の手すりはちょっとエレガント。
決して豪華というわけではない。が、見ると波打つような曲線が幾重にも重なりあって連続し、上の階へと視線を導いてゆく。
通常誰も立ち止まって見る人などいないが、注意して観察すると、なかなか趣を感じさせる階段だ。