新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

彫刻の森美術館③ 「神と人との関係」から、「トマトちゃん」が造った大円球まで。

2020-04-28 | 箱根・彫刻の森美術館

 少し歩くと空中に向かって叫んでいるような人のシルエットが現れる。

 一瞬空を飛んでいるのかと思ったら、実は人間が大きな手の平の上に載せられているのがわかる。タイトルは「神の手」。カール・ミレスはこんな形で神と人との関係を表現した。

 その手前の広場には複雑な形をした彫刻が横たわる。

 ジュリアーノ・ヴァンジ作「偉大な物語」。ミケランジェロも愛用したとされるイタリア・カッラーラ産の良質な大理石を25トンも使って完成した大作だ。

 4面すべてに様々な男の生き様が表現される。

 ちょっと哀れにも見える表情の男もしゃがみ込んでいた。

 こちらは「球体を持った球体」。ギザギザに割れ目を見せる黄金の球体。その内部にはもう1つの球体が存在する。確か、このような作品がバチカン美術館の中庭にもあったような・・・。

 作者の名前はアルナルド・ポモドーロ。ポモドーロとはトマトを意味するイタリア語。幼いころから彼は「トマトちゃん」などと呼ばれていたんだろうな。

 ここにもヘンリー・ムーアの作品が。「母と子」。丸みを帯びた人体は、見る者におおらかな温かみを感じさせる。

 

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彫刻の森美術館② ロダンの迫力、ヴァンジの哀しみ、デュビュッフェのざわめき・・・・

2020-04-25 | 箱根・彫刻の森美術館

 

 入口から右へ進む。ロダン作のバルザック像がどっかりと立つ。この像は創作当時かなりの問題が起きたものだ。注文を受けて制作したが「まるでジャガイモの袋をかぶせたよう」と嘲笑され、発注先の文芸協会が引き取りを拒否するというスキャンダルに見舞われた。結局自らが引き取り、後にパリのラスパイラス通りに展示された。

 私はパリでその街頭に展示された像と対面したが、早朝の薄暗闇の中だったためか、強烈な迫力で迫ってくる人のイメージが沸き上がったのを今でも覚えている。

 隣にはジュリアーノ・ヴァンジ作「追憶」。不安、あるいは哀しみを抱えた寄る辺なき人のような表情。

 それはイタリアの画家ポントルモの絵や、舟越圭の木彫にも共通するものを感じる。

 対照的に、デュビュッフェの「アルボレザンス」は、まるでフェスを楽しむ観衆のように明るさとざわめきに満ちているなあ。

 ヘンリー・ムーアの「横たわる像」。まさに大地にゆったりと腰を据えて、これから大きな背伸びでもしそうな悠々の時間を思わせる。

 「交差する空間構造」は後藤良二作。遠目で見れば鉄線が規則的に繋がっている鉄条網のようだが、近付くとそれは男性像(黒)と女性像(赤)がそれぞれ72体ずつ手足をつなぎ合った姿であることがわかってくる。

 その形はダイヤモンドの分子構造だとか。見えて来るものが二重三重に変化する意外性満点の作品だ。

 

 

 

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彫刻の森美術館① 早春の高原におおらかに展開する彫刻群。新鮮な空気を思いっきり吸えた一日

2020-04-21 | 箱根・彫刻の森美術館

 新型コロナウイルスが拡散する少し前、早春の箱根に行き、彫刻の森美術館を歩いてきた。ちょうど絶好の晴天となり、清々しい気分で高原に展開する彫刻群を堪能することが出来た。非常事態宣言後の今となっては、なんか懐かしいとさえ思える一日だった。

 美術館の敷地に一歩足を踏み入れると、まず出会うのが岡本太郎の作品「樹人」。タイトルからすると樹木をイメージしているのだろうが、私には炎のようなダイナミックな激しさを感じるものだった。

 やはり岡本太郎!青空に白がピッタリだ。

 前を見ると、弓を引く鉄人がその前方にある塔のような彫刻を狙っているかのようなシーンが。

 この鉄人はヘラクレスだ。フランスの代表的な彫刻家ブールデルの傑作。同じ作品が東京上野の国立西洋美術館前庭にもある。

 対して狙われているように見えたのは、カール・ミレスの「人とペガサス」。空を飛ぶ二人の前方にあった雲が、まるで一緒に合わせて飛んで行いるかのようだ。

 「樹人」の横にほっそりとした女性が立っている。奥の白い壁に映る木々の揺らぎ模様と女性のシルエットとが、うまい具合に調和していて楽しい。

 なのに、女性の表情はなぜかうつろ。ジャコモ・マンズー「衣を脱ぐ」。

 奥には緑色の髪をした大きな顔が、ごろりと横たわっている。「嘆きの天使」クロード・ラランヌ作。タイルにわずかに溜まった水に天使の横顔がうっすら映る。

 「天をのぞく穴」と題された作品があった。螺旋階段を下りて、地下にある小さい穴から空を見上げる仕掛けになっていたのだが、それに気づかず階段を上り下りするだけで通過してしまった。井上武吉作。

 

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ジローナ 川沿いの絵のような街並みを過ぎて、赤ちゃんの階段上り挑戦を観戦

2020-04-18 | スペイン北部

フィゲラスのダリ美術館からバルセロナへの帰り道、ジローナという街に寄った。次の電車までの2時間の待ち合わせ時間で駆け足散策。あわただしかったが、結構味のある街だった。そもそもこの地はイベリア半島の語源ともなった先住民族イベロ人が築いたもので、紀元前5世紀からの古い歴史を誇っている。

 駅を出てリベルタット通りを進んでいくと、オニャール川沿いに見事な街並みが見えてくる。向かって右側が旧市街、左側が新市街だ。

 通り中ほどまで行くとオニャール側が左に曲がり、街並みもそれに沿って湾曲する。

 右奥の高い建物はカテドラル。この付近から眺める風景はまさに絶景。

 川を横断する赤い鉄橋が見える。実はこれ、パリのエッフェル塔を設計したエッフェルの手になるものだという。

 名称は日本語にすると「古い魚屋の橋」。橋のたもとに魚屋があったのだろうか?

 リベルタット通りの終わりころから道は複雑に入り組んできた。この辺りは旧ユダヤ人街だったところ。12~15世紀にかけて、ユダヤ人追放令が出る前まではユダヤ人たちで栄えた地区だ。

 かつてはナポレオンの侵攻から街を守ったという城壁や門、石のトンネルをくぐりながら、長い石畳の細い道がどこまでも続く。

 またもや石畳の迷路。

 やっと開けた場所に出た。カテドラルだ。正面はバロック様式だが、鐘楼はロマネスク、内部はゴシック様式だという。

 90段の高い階段。まだ歩き始めたばかり位の赤ちゃんが、ハイハイしながら上り始めた。母親もそれを励ますように見守る。

 すごいすごい。赤ちゃんはしっかりと上って行く!

 ああ、もう電車の時間が迫ってきた。赤ちゃんの結末を見届けられずに駅への道を引き返すことになった。

 帰りがけ、ある店の壁面に賑やかな浮き彫りを見つけた。1枚だけシャッターを押して駅に駆け込んだ。

 これでバルセロナを中心にしたスペイン北部の旅シリーズを終了しますが、以前のシリーズで詳しく紹介したために今回掲載しなかった2つの著名な建築の写真だけは、載せておきましょう。

 サグラダファミリア。ずっと建設が続いていたが、あと数年後には完成するめどがついたそう。
 カサ・バトリョ。ガウディの建築の中でも個人的には一番好きな建物です。

 

 

 

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ダリ美術館下 最愛の妻ガラの輝く姿。そして仕掛けと企みのファンタジックワールド

2020-04-14 | スペイン北部

 ダリ美術館を歩いている。ここにはだまし絵や企みに満ちた作品がゴロゴロしている。

これは、ミケランジェロがローマで制作した「モーゼ像」。

しかし、なぜか頭上にはタコが足をくねらせている。

 こちらは明らかにバチカン大聖堂の宝でもあるミケランジェロのピエタ像をモチーフにしている。

 そして、この顔もミケランジェロの彫刻「ダビデ像」そのものだ。ダリがミケランジェロに対して大きなリスペクトの心を持っていた証拠なのだろうか。

 また、ラファエロの「アテネの学堂」をモチーフにした作品もあった。

 この絵は一見すると髭を生やした中年の男性像。だが、よく見ると中央には手紙を読む女性の立ち姿が浮かび上がってくる。しかも、それはフェルメールの「手紙を読む女」を連想させる。

 この祈る姿は明らかにミレーの「晩鐘」そのもの。

 偉大な芸術家の作品をモチーフにしながらも、そこにダリ独得の加工を施して自らの世界に引き寄せている。

 この美術館で最も注目すべき作品があった。「レダアトミク」。ギリシャ神話の「レダと白鳥」。スパルタ王の妻で絶世の美女レダに、全能の神ゼウスが恋してしまった。ゼウスは白鳥に姿を変えてレダに近づき思いを遂げてしまう、というストーリー。

 その美女レダを、ダリは自らの妻ガラの姿で描いてしまった。ガラはダリより10歳も年上の人妻だった。しかしガラに惚れたダリは最終的にはガラを妻とし、死ぬまで永遠の女性(ミューズ)として愛し抜いた。その女神の姿を見事に描き切った作品だ。

 ガラの顔だけの肖像画もあった。

 また、別室には見上げる天井に、足裏から立ち上がる2人の人物の姿が豪快に描かれていた。

 そこここに仕掛けられたダリの多彩な才能にふらふらになりながら会場を後にした。

 

  

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