【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「戦場でワルツを」:西日暮里駅前バス停付近の会話

2009-12-02 | ★草63系統(池袋駅~浅草雷門)

こんなところに、カラオケスタジオが・・・。
俺も一曲歌うかな。
何の歌?
千昌夫の「星影のワルツ」とか。
あなた、ひょっとして戦前の生まれ?
イスラエルのレバノン侵攻以前の生まれではある。
1982年、キリスト教徒軍によるパレスチナ難民の大虐殺を招いた戦いね。
その悲劇の真相を伝えるドキュメンタリーがアリ・フォルマン監督の「星影のワルツ」。
じゃなくて、「戦場でワルツを」でしょ。全然違うじゃない。
いや、アニメーションで描かれる夜のシーンが印象的なんで、うっかりタイトルの記憶違いをした。
そうなのよね、この映画、ドキュメンタリーをアニメーションで描いている。
ドキュメンタリーをアニメーションで再現するなんて、それはもうドキュメンタリーとは呼ばないだろうと思うんだけど、回想、というか、リアルと幻想の間の記憶をたどる物語だから、実写よりアニメーションで描くほうが感覚的には実相に近い。
なんだか錯倒しているけど、このアニメーションがとてもグラフィカルでアートしてる。
強烈な単色をいくつか組み合わせただけで、カラフルというより沈んだ印象なんだけど、それがこの悲劇を語るには絶大な効果を上げている。
いちばん驚いたのは、記憶はつくることも消すこともできるってことかしら。
難民の大虐殺なんて、強烈なできごとなのに、立ち会った男の記憶からはきれいさっぱり消えている。いっぽうで、ありえなかった記憶が、頭の中に現れる。
あまりに悲惨な記憶なんで、頭のほうが自己防衛して記憶を変えてしまったらしいっていうんだから、凄いわよね。
そんな、「エターナル・サンシャイン」じゃあるまいし、と思うんだけど、昔の記憶が消えているなんて、日常生活でも思い当たるところがあるしな。昨日の夜、何食べたっけとか。
それは、忘れっぽいだけでしょ。この映画の記憶とはレベルが違うわよ。
そして、失われた記憶をたどる旅が始まるんだけど、それは事件の衝撃を掘り起こす旅でもある。
中東情勢には詳しくないから、何が原因でどういう事件が起き、結果どうなったのか、よくわからないんだけど、目が離せない力がある。
ここで出てくる「ワルツ」も、優雅なんて代物じゃない。もっと残酷でやりきれない意味合いになっている。
そうよ、千昌夫の歌と間違えるなんて、ありえないことよ。
ありえないことが起きているっていうことだよ、我々が住むこの世界では。





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ふたりが乗ったのは、都バス<草63系統>
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