真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「婚前乱交 花嫁は牝になる」(2007/制作:セメントマッチ/配給:新東宝映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/企画:福俵満/撮影・照明:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:中川大資/監督助手:江尻大/撮影助手:海津真也・関根悠太/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/スチール:津田一郎/挿入歌『にはか雨』・『夜を引き裂いて』 詞・曲・歌:桜井明弘/出演:日高ゆりあ・仲村もも・美咲礼・本多菊次朗・野村貴浩・山口慎次・ムーミン・吉原あんず・池島ゆたか・北川明弘・神戸顕一)。出演者中北川明弘と神戸顕一は、本篇クレジットのみ。
 判り易く訳アリな風情で東京の地に立つマリカ(日高)が、高級ホテルの一室に宿を取る。マリカは自室に、一年前まで不倫関係にあつた上司の宇田川(本多)を招き入れる。完全に主導権を握り、マリカは宇田川を貪る。日高ゆりあといふ人は俗にいふところの下つきなのか、宇田川に跨りパイパン設定の観音様を口唇愛撫させるシーンに際しては、かなり際どいラインまで無修正で見せる。宇田川に続き、今度はマリカは三年前に付き合つてゐたミュージシャンの尚也(野村)をホテルに招く。
 ミステリアスな狙ひの割には、どういふつもりなのだかタイトルが全てを割つてしまつてもゐる、要はさういふ物語である。中身の薄さはこの上ないが、進境著しい日高ゆりあの映画と思へば、まあ観てゐられなくもない。
 配役残り、登場順に美咲礼は宇田川の妻・ゆりえ。少し痩せたやうだがこれ三上夕希だよな?と思ひながら観てゐたところ、改名したとのこと。ただでさへ閉鎖された、情報の頗る得難いフィールドにあつて、この改名といふ奴がまた厄介である。仲村ももは、尚也の現在の彼女・エミ。ロングの黒髪、背丈もマリカと似通つてゐる。幼児体型の日高ゆりあよりは少し細いが、もう少し、タイプの全く異なつたキャスティングは出来なかつたものか。ムーミンは尚也に続いてマリカが喰ふ、花屋の洋介クン。池島ゆたかと吉原あんずが、式を直前に控へ不意に姿を消した娘に気を揉むマリカの父母。山口慎次はマリカの婚約者・和彦。いはずもがなな北川明弘が、大阪で大ブレイク(苦笑)といふ設定の尚也先輩・桜井。尚也が部屋でDVD(かビデオ)を見るカットに加へ、対洋介戦を控へマリカがウィッグを選ぶところからゲーセンでプリクラを撮る件にかけて、延々曲が流れる。どういふ訳なのだか知らないが、池島ゆたかが自作の連続出演記録に固執してゐる神戸顕一(ただ本人は現在実家に帰つてゐて、現場には参加出来ないらしい)は、マリカ父が読む雑誌『AERA』ならぬ『AHERA』誌の表紙に登場、わざわざ作つたのか。この『AHERA』誌の出来はよく、登場の仕方もわざとらしくもないゆゑ、アイデアとしては悪くないと思ふ。
 桜井明弘といふ人は、昨今池島ゆたかが大のお気に入りのインディーズのミュージシャン。音楽的には、判り易くもいい加減な説明をすると歌謡フォークな頭脳警察のエピゴーネンか。完全に浮いてゐるこの人の曲使用、徒に固執する神戸顕一の自作連続出演。池島ゆたかには、娯楽ピンクの王道を志向してゐる割には、そして当人は恐らくはそれを果たせてゐると思つてゐるであらうにしては、どうにも商業作家として徹し切れてゐない隙のやうな部分が散見される。加へて五代暁子以外の脚本で撮らない、あるいは撮れない点も個人的には最終的にこの人の大成を阻んでゐる所以、とみるものではある。さういふ隙が憎めない、といふ諸兄に対しては、敢て異を唱へるつもりはない。
 ただ一応伏線は張つてあり、なほかつ不可避な大人の事情もあるとはいへ、ラストの和彦とゆりえの濡れ場は。あるいは三番手の濡れ場で映画を締めてのける構成は、日高ゆりあの映画と思つて観るほかない今作を、壊してしまつてゐると難じざるを得まい。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 熟女・人妻狩り 性欲診察 白... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。